2025.09.17

マドリードでのF1開催に対する抗議運動が発生。騒音問題や、バレンシアでの開催時に抱えた多額の負債を懸念


スペインのマドリードにあるIFEMAコンベンションセンター
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 2026年の9月に、正式にF1カレンダー上で予定されているマドリードでの初めてのグランプリについて、開催をめぐる同市の計画に不満の声が高まっている。地元の活動家たちは、「F1マドリードを阻止せよ」というスローガンの下、舞台となる市街地コース“マドリング”の建設に反対するために結集し、このイベントは地域の福祉よりも見せ物を優先していると主張している。

 夏の猛暑のなか、マドリードでF1開催に向けた開発が進んでいるが、抗議活動家らはスペインのモータースポーツの歴史における過去の財政的失策を例に挙げながら、プロジェクトを阻止しようとする動きを強めている。初のレースまであとわずか1年となった今、この草の根運動は勢いを増し、経済的な野心と環境面における現実との間の緊張を浮き彫りにしている。

■「私たちの地域はレース場ではない」

 マドリードのF1プロジェクトは、地元当局の支持を受けており、イベントのアンバサダーを務めるマドリード生まれのカルロス・サインツ(ウイリアムズ)の関わりにより、さらに盛り上がっている。バラハス地区のIFEMA展示センターを中心とする5.47kmのサーキットは、市街地の道路と専用区間が組み合わされており、22のコーナー、この市の闘牛の伝統にヒントを得た目立つバンクコーナー、そして時速340kmの予想トップスピードを特徴としている。建設工事は2025年4月に開始され、サインツやマドリード州知事のイサベル・ディアス・アユソなど著名人が出席した起工式が行われた。

F1新サーキット『マドリング』のコース図
F1新サーキット『マドリング』のコース図(2025年4月25日発表バージョン)

 当初は熱狂的な反応があったものの、マドリードの住民の多くは納得していない。日曜日には抗議団体『ストップ・フォーミュラ1・マドリード』が、「私たちの地域はレース場ではない」というスローガンを掲げてデモを行った。この運動によって提起された懸念には、環境破壊、騒音公害の増加、大規模な街頭イベントの開催によって引き起こされる混乱などが含まれている。ある抗議者はこの感情を要約して、「利益を得るのは少数で、損失はあらゆる人々が負わなければならない」と抗議した。

 活動家らはまた、スペインが前回都市部でF1レースを開催しようとした際の多難な経緯について指摘している。バレンシアは2008年から2012年までヨーロッパGPを開催していたが、予定されていた7レースを開催する前に計画は頓挫し、市は推定2億5500万ポンド(約510億8200万円)の負債を抱えることとなった。

 今のところ、建設工事は滞りなく続いており、主催者はグランプリがもたらす可能性のある経済的利益と、国際的な露出を強調することに熱心だ。サインツも、特にオーバーテイクのチャンスなどによって強力なレースが実現できるよう、コースの設計に影響を与えたいと語っている。

 しかし、組織的な反対運動の出現は、世界の舞台でマドリードにスポットライトを当てたいと熱望する主催者と、長期的なコストを懸念する住民との間の亀裂が拡大していることを浮き彫りにしている。市内で初めて開催されるF1レースが刻々と近づくなか、マドリードでのグランプリが大成功となるか過ちとなるかについての議論は、決着には程遠い状態だ。

カルロス・サインツ(ウイリアムズ)
F1新サーキット『マドリング』の着工記念式典に登場したカルロス・サインツ(ウイリアムズ)


(Text : autosport web / Translation:AKARAG)

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