2025.09.16

角田裕毅とローソンの接触に対する私見。フェルスタッペン勝利の起点となった空力変更【中野信治のF1分析/第16戦】


2025年F1第16戦イタリアGP 角田裕毅(レッドブル)&リアム・ローソン(レーシングブルズ)
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 モンツァ・サーキットを舞台に開催された2025年F1第16戦イタリアGPはマックス・フェルスタッペン(レッドブル)がポール・トゥ・ウインを飾りました。予選から大きくタイムを上げたフェルスタッペンの優勝を支えた決断、そして角田裕毅(レッドブル)とリアム・ローソン(レーシングブルズ)の接触などについて、元F1ドライバーでホンダの若手ドライバー育成を担当する中野信治氏が独自の視点で綴ります。

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 フェルスタッペンの走りは本当に見事でした。前回のコラムで『レッドブルが再びトップを争える位置に戻る可能性がある』とお話ししたとおりの展開となりましたね。レッドブルの2025年シーズンのクルマ『RB21』は、低速コーナーでアンダーステアが出てしまうクルマです。

 モンツァはシケインはありますが、レッドブルが苦手とする長く回り込むような低速コーナーは少ないコースレイアウトです。低速コーナーとシケインでは、サスペンションなどクルマの空力以外の部分の使い方が大きく異なるため、アンダーステアの出方がまったく違います。そのため、前回のコラムの段階からレッドブルの優勝争いを予想していましたが、マクラーレンに19秒差をつけてのポール・トゥ・ウインは想像を越える結果でした。

 対するマクラーレンはコーナリング重視のクルマのため、レッドブルとはストレートスピードで10km/h近い差がありました。ダウンフォースがある分コーナーでタイムを稼がなければいけませんが、モンツァでは『コーナーが速い』というマクラーレンの優位性が生かされませんでした。

 マクラーレンはダウンフォースが多めなので、タイヤは温存できるかとも思いましたが、実際にはストレートが遅い分コーナリングでタイムを削る必要があり、結果としてタイヤを使うことに。タイヤのデグラデーション(性能劣化)という部分だけを見ても、ローダウンフォース仕様のフェルスタッペンのマシンとの差があまりなかったのかなと感じましたね。

 マクラーレンのコーナリング性能は他を圧倒していました。特にレズモ(ターン6〜7)やクルバ・アルボレート(最終ターン11)はブレーキングから安定していたので、フリー走行の段階では『たとえストレートが遅くても、コーナリングでのゲインが大きいからマクラーレンは優位性を保てるかもしれない』と思っていました。

2025年F1第16戦イタリアGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)とランド・ノリス(マクラーレン)

 ただ、予選を迎えると状況は一変します。特にQ2ではフェルスタッペンが急に大きなタイムアップを見せました。現場取材の記事を拝見したところ、マクラーレンに対してスピードが足りないと悟ったレッドブルとフェルスタッペンが、リヤウイングを削る決断を下し、スタッフが現場で削った超ローダウンフォース仕様のリヤウイングを削ったとのことでした。この決断が、予選・決勝の展開を大きく変えた一因かもしれません。ちなみに、同じ記事によれば裕毅は削られていないリヤウイングを使用したとのことです。

 フェルスタッペンと担当エンジニアが、リヤのダウンフォースを減らしてコントロールが難しくなってでもストレートスピードを手にいれるという判断をなぜできたのか。そして、裕毅と裕毅の担当エンジニアが同じ判断・選択をできなかったのかのはなぜなのかが、レッドブルの内情を見ることができない我々にとっては気になる部分ですね。

 金曜の2回のフリー走行で大まかなセットアップが決まり、土曜日のFP3は予選直前ですので大きな変更を行わないのが通常の流れです。そんなFP3でクルマに大きな変化を加えるという判断はなかなかできるものではなく、そのような判断ができるチームは素直にすごいなと感じます。このような判断をフェルスタッペンチームにはできて、裕毅のチームにはできなかったということが、このイタリアGPを見ていて、私が気になったポイントでした。

■角田裕毅とローソンの接触に対する私見



(Shinji Nakano まとめ:autosport web)

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