2025.09.05

「人生で最もばかげた知らせだ」ペナルティに不満のサインツ。スチュワードとの話し合いを要求【F1第15戦無線レビュー(2)】


2025年F1第15戦オランダGP ポジションを争うカルロス・サインツ(ウイリアムズ)&リアム・ローソン(レーシングブルズ)
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 2025年F1第15戦オランダGP。ルイス・ハミルトン、シャルル・ルクレールとフェラーリの2台がクラッシュにより姿を消し、波乱の展開となったレース中盤。しかしこれでレースは終わらず、優勝やドライバーズ選手権を争うランド・ノリス(マクラーレン)にはトラブルが発生し、まさかのリタイアとなった。オランダGP後半を無線とともに振り返る。

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 ルイス・ハミルトン(フェラーリ)のクラッシュによるセーフティカー導入から、レースは27周目に再開された。カルロス・サインツ(ウイリアムズ)が7番手のリアム・ローソン(レーシングブルズ)に仕掛けるが、接触してしまう。

サインツ:あいつ、ほんとにバカだよ。いつもあいつだ。
ガエタン・イエゴ:前輪のパンクだ。

ローソン:パンクチャーだ。
エルネスト・デジデリオ:ああ、視認できる。戻ってこい。

カルロス・サインツ(ウイリアムズ)
2025年F1第15戦オランダGP リアム・ローソン(レーシングブルズ)との接触により、カルロス・サインツ(ウイリアムズ)の右フロントタイヤがパンクした

 しかし接触の責任はサインツにあると判断され、10秒ペナルティを科された。

イエゴ:10秒ペナルティを受けたので、次のピットインで消化する。
サインツ:え、誰? 誰がペナルティだって? 僕かい?
イエゴ:そうだ。
サインツ:冗談だろう。僕の人生で最もばかげた知らせだよ。レース後、スチュワードと話そう。言いたいことは山ほどある。

デジデリオ:サインツに10秒ペナルティが下された。
ローソン:当然だ。でもあいつは僕の責任だとばかり、指を突き立てた。僕が先にコーナーに入ってたのに。

 31周目、アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)が7番手のアレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)のインを刺すが、抜ききれなかった。

アントネッリ:ああ、ごめんね、ボノ。
ピーター・ボニントン:気にするな。大丈夫だ。まだチャンスはある。

 32周目、5番手のジョージ・ラッセル(メルセデス)をシャルル・ルクレール(フェラーリ)が激しく攻め立て、左の前後のタイヤをグラベルに出しながら抜いて行った。

ラッセル:コース外から抜いていった。

ルクレール:ターン11でスペース残してくれなかった。彼が文句を言う筋合いはない。

ジョージ・ラッセル(メルセデス)&シャルル・ルクレール(フェラーリ)
2025年F1第15戦オランダGP ポジションを争うジョージ・ラッセル(メルセデス)とシャルル・ルクレール(フェラーリ)

 34周目、アントネッリは再びアルボンに仕掛け、今度は成功して7番手に上がった。

ボニントン(→アントネッリ):ナイスワークだ。次はジョージ(ラッセル)だぞ。1秒6前方だ。

35周目
クリス・クローニン:ターン13に破片が転がっている。
フェルナンド・アロンソ:それより戦略のことを考えてくれ。レース前半の君たちは、僕がレースをしていること忘れていただろ? 後半は、しっかり頼むよ。

38周目
クローニン:バランスはどうだ?
アロンソ:わからないよ。君たちいつも、僕をトラフィックのなかに入れるから。

 思うように順位を上げられないアロンソは、明らかにイラついていた。

41周目
ダドリー:クルマにダメージがあるから、アントネッリと順位交代だ。
ラッセル:え、そうなの? DRSに入ってきたらね。

51周目
ボニントン(→アントネッリ):ルクレールに対抗してボックスだ。

 アントネッリはソフトタイヤに変更した。

ボッツィ:アントネッリがピットインした。
ルクレール:僕らはこのままだ。
ボッツィ:ステイアウトということか?
ルクレール:そうしよう。

 しかしチーム側は、すぐに意見を翻した。

ボッツィ(→ルクレール):チャールズ、ボックスだ。アントネッリをカバーする。

ボニントン(→アントネッリ):ルクレールがピットだ。かなり接近戦になる。

 ルクレールがわずかに先行してコース復帰。アントネッリが激しく追い、ターン3でインに入るが両車接触。ルクレールはアウト側に弾き出され、クラッシュ。ハミルトンと同じ場所で、リタイアとなった。

ルクレール:必要ないアタックだったね。タイヤのフィーリングはよかった。すごくいい感じだったんだ。

シャルル・ルクレール(フェラーリ)&アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)
2025年F1第15戦オランダGP シャルル・ルクレール(フェラーリ)とアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)が接触

 これで2度目のセーフティカー導入。キック・ザウバー陣営はガブリエル・ボルトレートをピットインさせるか検討中だった。

ヨルン・ベッカー:ガビー、今ピットインしたら、6つ順位を落としてしまう。でも後ろのベアマンとストロールはニュータイヤだ。
ボルトレート:どうしたいの?
ベッカー:ステイアウトして、最後まで行こう。

 セーフティカー導入前に15番手に沈んでいたボルトレートだが、ステイアウトで10番手にジャンプアップした。しかしレース再開後、ずるずると抜かれていった。

ベッカー:ニュータイヤに交換したかったら、いつでも準備できてるぞ。
ボルトレート:頼む! 今のタイヤだと、おばあちゃんみたいな運転しかできない。

 これで最下位に転落。結局16位完走に終わった。

 一方、久々の入賞を狙う角田裕毅(レッドブル)は、エンジンマップのトラブルに見舞われていた。

57周目
角田:パワーがない。
リチャード・ウッド:コース上では直せない。慣れるしかない。

角田裕毅(レッドブル)
2025年F1第15戦オランダGP 角田裕毅(レッドブル)

 そしてレース終盤、大波乱が待っていた。

65周目
ノリス:コクピットから煙が出ている。変な匂いがしている。火でも出ているのかな。
ジョゼフ:チェックする。

ノリス:オイル漏れだ。終わりだ。
ジョゼフ:戻ってこれるか?
ノリス:そんなの無理だよ。
ジョゼフ:残念だ。

 65周目、ノリスはコース脇にマシンを止め、痛恨のノーポイントとなった。

ジョゼフ:君はずっと速かった。本当に速かったよ。
ノリス:もう、どうでもいいよ。

 68周目にレース再開。13番手のニコ・ヒュルケンベルグ(キック・ザウバー)がターン3のバンク上で、フランコ・コラピント(アルピーヌ)に内側から抜かれ15番手に後退する。

ヒュルケンベルグ:幅寄せしやがった。押し出された!
スティーブン・ぺトリック:了解した。

 10番手のピエール・ガスリー(アルピーヌ)も角田に抜かれる。

ガスリー:押し出して行った!

 このバトルは記録されたが、お咎めなしとなった。ハードタイヤを限界まで引っ張り続けたガスリーは次々に抜かれ、17位完走に終わった。

 一方ノリスのリタイアで、3番手にはアイザック・ハジャー(レーシングブルズ)が上がっていた。

アジャ:おお〜、最終周だ。
ピエール・アムラン:そうだ。あと1周だぞ。

 まずはピアストリがポール・トゥ・フィニッシュを果たす。

ピアストリ:みんな、よくやってくれた。(ノリスに)起きたことは残念だけど、みんな最高の仕事だった。

 相変わらず冷静なコメントに終始するピアストリ。対照的に初表彰台のハジャーは、喜び爆発だ。

ハジャー:オーマイゴッド……P3だぞ!
アムラン:マジックドライブだった。今夜は特大のパンケーキを注文したらいい!
ハジャー:僕らは何を成し遂げたんだ!? とにかくペースが素晴らしかった。ありがとう。これが僕の初めての表彰台なんだね!

 初々しさ全開のハジャーだった。



(Text : Kunio Shibata)

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