ペナルティは不当と憤るサインツ。ザントフォールトではインシデント調査のためのシステムが不十分か
F1オランダGPで、FIAはドライバー同士の接触後にスチュワードが正しい判断を下すために必要な技術や映像を、ザントフォールトにおいては十分に備えていないのではないかと思わせる出来事があった。ウイリアムズのカルロス・サインツは、レーシングブルズのリアム・ローソンとの接触で10秒のタイムペナルティを受けたが、それは適切な裁定ではないと怒りを示している。
ザントフォールト・サーキットは狭く曲がりくねった性質を持つ影響で、レーススチュワードに提供できるカメラアングルは限られている。さらに各マシンのオンボード映像にアクセスできる状況であっても、レース中にFIAの審査委員会がドライバーの動きを明確に確認できなかった事例が2件あった。
まず、32周目、VSC明け直後に起きたジョージ・ラッセルとシャルル・ルクレールの接触がそのひとつだった。残り40周もあったため、スチュワードがすぐに裁定を下さず、レース後に当事者ドライバーたちの意見を聞いて判断を下すと決めたことに、驚きを示す関係者も少なからずいた。
だが、スチュワードがそう決めた理由が後になって分かった。彼らはインシデントについて明確に把握できなかったため、追加情報を待つことを選んだのだ。
スチュワードは、両者にペナルティなしと発表する声明のなかで、マシンの一部をコース外にはみ出させるような形でラッセルを追い抜いたルクレールについて、「16号車がターン12でコース上に留まっていたか、それともコースを外れたかを調査した」と記した。
スチュワードは、「入手可能な証拠では決定的とはいえない」と述べ、「両チーム代表は違反の明確な証拠がないことで一致している」と付け加えた。
ローソンとサインツの接触については、スチュワードは「55号車のフロントアクスルは、ターン1のエイペックスにおいて30号車のフロントアクスルの前にはなかった」ため「30号車がコーナーの権利を持っていたと考えた」と述べた。そうして彼らは「55号車が全面的あるいは主として衝突の責任を負う」と結論付けた。
レース中にこの裁定についてチームから伝えられたサインツは「このペナルティは冗談か」と言い、ペナルティはレース中に科されていたため召喚はされなかったものの、レース後にスチュワードのもとを訪れた。
サインツは、ローソンが接触を引き起こしたと確信していたため、憤慨していた。
「このペナルティは非常に憂慮すべきものだ」とサインツはメディアに対してコメントした。
「僕はできるだけ冷静に、丁寧に言葉を選んで、誰に対しても悪意のある言葉を使わずに話している。しかし今日僕が見たこと、今日僕が経験したことは、僕自身だけでなく、他のドライバー、そしてモータースポーツ全般にとっても憂慮すべきことだ」
「もし彼らが本当に、アウト側にいたドライバーにこのようなペナルティを適用するのが正しいと思っているのなら、僕にはそれは理解できない。だからこそ彼らから説明を受ける必要があるし、それを期待している。正直なところ、彼らが何を言うつもりなのかは分からないが」
しかし、その時点では、サインツとウイリアムズは、ローソンに責任があるという明確な映像証拠が存在しないと知った。そして後になって、ローソンのマシンがターン1立ち上がりでスナップオーバーステアに見舞われている映像が出てきた。そのオーバーステアがサインツとの接触を引き起こしたのであり、サインツがペナルティが不当であると訴えるのはもっともだと感じられる。
この件はまた、FIAが小規模サーキットに導入できる映像システムのあり方にも疑問を投げかけている。ザントフォールトのシステムはすべての角度をカバーできず、そのためスチュワードがインシデントを精査する際に本来あるべき有用性を発揮できていないとみられるからだ。