開幕戦のクラッシュから「そんなこともある」と立ち直ったハジャー。好位置から優勝経験者を抑えて表彰台【ルーキー・フォーカス】
「アイザック(・ハジャー/レーシングブルズ)に、おめでとうと言いたい。表彰台に立つ彼の姿を見ることができて、こっちもうれしくなった」
FIA F2時代の昨年、チャンピオンシップをハジャーと争い、今回のF1第15戦オランダGPを15位で完走したガブリエル・ボルトレート(キック・ザウバー)が、そう言ってハジャーのF1初表彰台を祝福したように、今回のオランダGPで最も輝いていたドライバーは、間違いなくハジャーだった。
レース終盤にランド・ノリス(マクラーレン)がリタイアするまで、ハジャーと表彰台争いをしていたマックス・フェルスタッペン(レッドブル)も、今回のハジャーのパフォーマンスを次のように賞賛した。
「正直、いまのF1マシンはルーキーにとって容易ではない。そんななかでアイザックは素晴らしいレースをした。もちろんチームが、シーズンを通していい状態のマシンをアイザックに準備したことも忘れてはならない。ただ、アイザックがそのマシンに乗って、ミスなく、完璧な仕事をした。だから、今日彼が表彰台に立つのは当然の結果だと思う」
今回、ハジャーが表彰台を獲得した要因はふたつある。まず、土曜日の予選で4番手を獲得したことだった。オランダGPの舞台であるザントフォールト・サーキットは、ストレート区間が短く、オーバーテイクが難しいコースのため、予選順位がほかのサーキットよりも重要になる。
ふたつ目の理由は、4番手からのスタートにもかかわらず、ミスなく、終始冷静な走りを行っていたことだ。序盤はシャルル・ルクレール(フェラーリ)、中盤からはジョージ・ラッセル(メルセデス)が背後に迫っていたものの、ふたりのグランプリ・ウイナーにオーバーテイクを許さなかった。
「幸いスタートはまずまずで4番手をキープできたけど、その後が厄介だった。序盤はシャルルが攻めてきた。でも、今日の僕のマシンはブレーキが本当に安定していて、しっかりと防御することができた。しばらく、彼を抑え続けるうちに、今日は多くのポイントを狙えるペースがあることに気づいたんだ。だから、もし前方に何か起きれば、表彰台圏内も夢ではないと思い、このチャンスを逃すまいと思いながら走っていたよ」
そうレースを振り返るハジャーに、こんな質問が飛んだ。
「アイザック、初表彰台おめでとうございます。質問がふたつあります。まず、フォーメーションラップでレースを終えるという残念な結果に終わってしまったF1デビュー戦となった開幕戦オーストラリアGPの後、今日このような結果を得ると想像していましたか? もうひとつは、あなたがいま手にしているキャンディをひとつもらえますか?」
今回のオランダGPのレース後の会見には、主催者が会見場に袋に詰めたキャンディを用意していた。会見中、ドライバーたちはそれを美味しそうに口にしていた。ハジャーは「もちろん、みなさんにお分けしてもいいよ」と笑って答えた後、最初の質問にこう答えた。
「オーストラリアでクラッシュしたときのことはいまでも覚えている。クラッシュした瞬間、コクピットのなかで『もう終わりだ』と思ったほど、悔しかった。でも、時間が経つにつれて、『そういうこともあるさ』と思うようになり、立ち直ることができた。でも、1年目のシーズン中盤に表彰台に上がるとは予想していなかった。純粋なペースで4位フィニッシュでも素晴らしいのに、3位だなんて、本当に最高の気持ちだ」
オランダGPには、その悔しい結果に終わった開幕戦だけでなく、それ以降も何度かグランプリを訪れ、激励していた両親の姿があった。
「最近ではスパには行ったが、ハンガロリンクには行かなかった。次のモンツァにも行かないから、今回ザントフォールトに来てよかったよ」
そう語る父ヤシーヌさんと母ランダさんを、ハジャーはチームの記念撮影の後に呼んで、3人だけの特別な写真撮影に快く応じてくれた。