厳しすぎるF1夏休み規定。ホンダ/HRCのF1セクションはシャットダウンで国内活動への影響はどこまで?
先日の第15戦オランダGPからF1の後半戦がスタートしたが、このF1の夏休みの影響が意外なところで話題になった。8月23、24日に行われたスーパーGT第5戦鈴鹿サーキットの現場で、『HRC(ホンダ・レーシング)Sakuraの施設がF1の夏休み規定でシャットダウンされており、連絡がつかない」という情報がメディアに駆け巡ったのだ。実際、8月11日から24日までの2週間、HRC SakuraのF1関連施設は閉鎖されていたのだった。具体的にはどのような作業が禁止されていたのだろうか。HRCに取材を行うとともに、FIAが公表している休止期間の一部をここで紹介したい。
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夏休み規定と呼ばれる条文は、2025年F1競技規則(スポーティングレギュレーション)の第24条『競技者工場の停止期間』と、第25条『PUメーカーの工場休止期間』、そして2026年F1PU競技規則の中で定められている。
対象となるのは競技者(F1チーム)、パワーユニット(PU)メーカー、PUメーカーの関連会社などで、それぞれに『2回のシャットダウン期間を遵守しなければならない』と明記されている。
1回目のシャットダウン期間は『7月または8月の間に連続14日』。2回目の期間は『12月24日から連続9日』。1回目の期間がシーズン中ということもあって、通称『夏休み規則』としてお馴染みだ。このシャットダウン期間中は、それぞれ下記の活動が制限される。
第24.4条では規約違反とみなされない活動について明記されている。『シャットダウン期間直前の競技中に深刻なダメージを負った車両に対するFIAの同意を得た上での修理作業』、『ショーカーの組み立てと整備』、『F1と直接関係ないプロジェクトのための風洞やCFDシミュレーションのためのコンピューターの操作・使用』など、工場内の実務に加え、海上貨物の積み込み、荷降ろしといったレース転戦の準備に関連するすべての活動についても明記されている。
なお『スタッフの福利厚生または娯楽を唯一の目的とする活動』についてもシャットダウン規則違反とはならないと明記されている点は興味深い。
続けてPUメーカー向けの制限事項を見てみよう。なおHRCは、2022〜2025年仕様と、2026〜2030年仕様という、ふたつのパワーユニットプログラムを並行しているが、2026年F1PU競技規則第2.2.2条で両プログラムのシャットダウン期間は同時である必要があるとも明記されている。
PUメーカーのシャットダウン規約違反とみなされない活動については、『ショーカー用のPUの組み立て(製造除く)』や『工場の設備保守』、『F1に無関係なプロジェクトを支援することのみを目的とした活動』、『福利厚生を目的とする活動』など、大まかには競技者(F1チーム)と大きくは変わらない。
ただFIAの同意のもと、ESセルを含むエナジーストア(エネルギー貯蔵装置)の充電とバランス調整が行うことができると明記されている。とはいえ、作業人員は2名まで、指定されたテストベンチ内では作業できず、ESセル充電時は直流5Aで、バランス調整時のCレート(充電・放電速度)は最大0.1Cまでと細かく制限されていることには変わりはない。
HRCの広報によると、HRC内でF1セクションとスーパーGTセクションが分かれており、スーパーGTに関する業務は2025年F1競技規則第25.4条&2026年F1PU競技規則第2.2.6条に記された『F1に無関係なプロジェクトを支援することのみを目的とした活動』にあたり、FIAに書面で申請書を提出して、承認の許可を得ているという。
HRC内では一部、F1とスーパーGTの両セクションに跨って業務を担当しているスタッフにはメールサーバーなどの点で少々の制約があったというが、それでもスーパーGTの開発や第5戦鈴鹿に向けての準備などは「影響はなかったです」と、佐伯昌浩SGTプロジェクトリーダー。まさに、F1に参戦しているホンダ/HRCならではのファクトリー事情と言えるが、このF1の夏休み規定、ぜひ、カテゴリーの枠を越えて国内のレースチームや参戦メーカーにも導入を検討してもらいたいところだ。