ペダルマップ問題でトルクは通常の半分に。走行中の対処が入賞に繋がる「レース後は感情が込み上げた」【角田裕毅F1第15戦分析】
F1第15戦オランダGPで、5月中旬の第7戦エミリア・ロマーニャGP以来、8戦ぶりのポイントを獲得した角田裕毅(レッドブル)。今回の入賞はレッドブルに移籍後、第4戦バーレーンGP、第6戦マイアミGP、エミリア・ロマーニャGPに続いて4度目だが、今回の入賞は過去3回以上に過酷な状況だった。
まず、1回目のセーフティカー(SC)のタイミングが角田にとって不利に働いた。スタート直後の1周目にアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)をオーバーテイクして12番手からひとつポジションを上げた角田。周囲のドライバーがミディアムタイヤを履くなか、角田がスタート時に履いていたタイヤはソフトだ。
チームはできるかぎりピットストップのタイミングを遅らせたかった。しかし、アントネッリの後ろ13番手を走行していたフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)がアンダーカットを狙って18周目にピットインしたため、チームはアロンソのアンダーカットを阻止すべく翌周角田をピットインさせる。
だが、ピットアウトすると、角田はアロンソに先行を許してしまう。さらに23周目にルイス・ハミルトン(フェラーリ)がクラッシュし、SCが導入され、まだピットストップしていなかったドライバーたちが一気にピットインする。ザントフォールト・サーキットのピットストップ・ロスタイムは約23秒だが、SCおよびバーチャルセーフティカー(VSC)時にはロスタイムは約18秒に減少するためだ。
SC前にピットインしていた角田は、SC時にピットインしたドライバーに対して、約5秒のタイムを失うとともに、ピットインせずにコースにとどまったドライバーにも先を行かれ、15番手までポジションを落としてしまった。
さらにレース後半の53周目にシャルル・ルクレール(フェラーリ)とアントネッリが接触してSCが出たタイミングで入った2度目のピットストップ時にトラブルに見舞われる。13番手でピットアウトした角田だったが、ペダルマップが正しい設定になっておらず、アクセルペダルを目一杯踏んでも通常の40〜50%のトルクしか出ない状況に陥ってしまっていた。
「トドメを刺されたかと思いました。でも、絶対にポイントを獲らなければならなかった」と言う角田は、レースエンジニアのリチャード・ウッドと無線を交信しながら、その状況に対応した。
再スタート後にガブリエル・ボルトレート(キック・ザウバー)とピエール・ガスリー(アルピーヌ)をオーバーテイクした角田は、レース終盤に2番手を走行していたランド・ノリス(マクラーレン)がマシントラブルでレースを終えたため、69周目にトップ10内に突入することに成功。さらにルクレールとの接触などで15秒のペナルティを科せられていたアントネッリが6番手でフィニッシュした後に16位に降格したため、角田の順位は最終的に9位となった。
レース後、ミックスゾーンにやってきた角田は、過酷な状況のなかでレースをするという緊張状態から解放されて安堵したのか、笑顔を何度も見せていた。
「すごく大変なレースでしたが、集中力を保ち、トラブルに適応しながらポイント圏内を目指しました。チェッカーフラッグの後、感情が込み上げるものがありました」
この9位は、後半戦に向けて2点以上の価値がある大きな結果となることだろう。