ハミルトンの苦戦の根本的な原因は“グラウンドエフェクトカー”か「自然な感覚を失った」と元F1ドライバーが指摘
ルイス・ハミルトンのフェラーリでの難しいデビューシーズンについては、F1パドック内で長々と議論されてきた。元F1ドライバーで『Sky F1』のアナリストを務めるアンソニー・デビッドソンは、7度の世界チャンピオンであるハミルトンの現在の苦境は、F1のグラウンドエフェクト時代の幕開けにまで遡ることができると考えている。
2025年にハミルトンがスクーデリアに移籍するという大きな注目を浴びた出来事は、彼のキャリアにおける大胆な新しい章として歓迎されたが、今シーズンの最初の14レースは、勝利には程遠いものだった。ハミルトンは、第2戦中国GPのスプリントレースで勝利を飾ったものの、フェラーリのマシンでグランプリの表彰台に立つことはできず、SF-25はドライブが難しいマシンであることが判明した。
ハミルトンの苦戦は、ハンガリーで明確になった。チームメイトのシャルル・ルクレールがポールポジションを獲得した一方、ハミルトンはQ2で敗退し、自分自身を「役立たず」と評した。
デビッドソンはハミルトンの苦悩を振り返り、オランダのウェブサイト『Formule1』に対し、ハミルトンの経歴と彼の現在のパフォーマンスを合致させることは難しいと語った。
「ここでルイス・ハミルトンの名前を挙げなければならないのは辛い。分析のなかでこんなことを言わなければならないなんて、本当に信じられないことだ」
「しかし、我々はブダペストで彼が自身について語ったことをすべて聞いた。素晴らしい実績を持つスポーツ選手が、自分自身をこれほど疑っているのを聞くと悲しくなる」
またデビッドソンは、フェラーリに対するより広範な影響について、次のように述べた。
「これはチームにとっても大きな懸念事項だ。今起こっていることは、多くの人たちが起こると思っていたことだ。これは、バレンティーノ・ロッシのドゥカティへの移籍と少し似ているかもしれない」
「しかし、ここからは重要な教訓を得ることができる。それは、何事も当然のこととして捉えてはならないということだ。誰もスーパーマンではない。誰もが傷つきやすく脆い存在だ。永遠に続くものはない。ドライバーにとって新しいマシンに慣れるのはとても難しいことなのかもしれない」
デビッドソンが、ハミルトンとMotoGPの伝説的ライダーであるロッシを比較したことは、ハミルトンの挑戦の大きさを強調している。ロッシは、他メーカーで何年も圧倒的な強さを見せたあと、ドゥカティで実りのない時期を過ごしたことで有名だ。
ハミルトンにとって、フェラーリの2025年型マシンとチームの力学への適応はハードルとなってきたが、彼の苦戦の根源は、F1が現行世代のグラウンドエフェクトカーを導入した2022年シーズンにまで遡るとデビッドソンは考えている。これらのレギュレーションは、アンダーボディの空力ダウンフォースを増加させることで、性能を向上させるために策定されており、ドライビングダイナミクスを大きく変えた。デビッドソンは、ここ数シーズンにわたり、メルセデスの開発およびシムドライバーとして、それを直接経験してきた。
「私が思うに、2022年に新しいレギュレーションが導入されて以降、ルイスは以前と同じではなくなった。ただ、レースでは昔のルイスが戻ってくるのを見かけるときがある」とデビッドソンは説明した。
「彼はもう、あの自然な感覚と、マシンを完全にコントロールする能力を失ってしまった」
ハミルトンがこれらのマシンに戸惑いを覚えていることは明らかで、彼のかつての輝きは一部のレースで垣間見えるのみだ。しかし、デビッドソンは慎重ながらも楽観的な姿勢を崩さず、2026年に導入される新しい技術規則によってリセットが行われる可能性を示唆している。
「彼が残留し、水面上に頭を出して立ち直ることができれば、来年に新しいマシンでレースに戻ってくるかもしれない。彼が出てくることを願っている」