2025.08.20

フェルスタッペンはエンジン交換でセンサー問題に対処。想像以上に厳しい前半戦でも新メンバーが成長:ホンダ/HRC密着


2025年F1第13戦ベルギーGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)
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 2022年のF1第17戦シンガポールGP以来、ホンダ・レーシング(HRC)のパワーユニット(PU)勢4台がQ3に進出した2025年F1第13戦ベルギーGP。しかし、2020年の第10戦ロシアGP以来となるレースでの4台入賞はならなかった。

 このベルギーGPでは日曜日の朝に、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)のパワーユニットにデータ上で水圧が落ちるというトラブルが発生し、すでに使用したパワーユニットに交換するという作業を行って、レースに臨んでいた。

 HRCの折原伸太郎(トラックサイドゼネラルマネージャー)は次のように語る。

ホンダ/HRC密着
HRCの折原伸太郎トラックサイドゼネラルマネージャー

「ベルギーGPの週末に、マックスのパワーユニットだけ冷却水の圧が微妙に落ちるという問題が起きていて、いろいろと部品を交換して対応していたのですが、部品を変えても原因が特定できなかったので、最終的にエンジンを交換するという決断をしました。水圧が落ちたといっても長い時間をかけて徐々に下がっているようなもので、レースに使用しても走り切れるレベルなのですが、その原因が特定できず、レース中に突然落ちることも考えられたので、すべて交換したほうがいいという判断となりました」

 冷却水が漏れる原因として考えられるのは、エンジン(ICE)内部の冷却水回路、ラジエター、それをつなぐパイプ、それぞれの接合部分だ。だが、エンジン以外を交換してもデータが改善しなかったので、エンジン本体を交換した。

マックス・フェルスタッペン(レッドブル)
2025年F1第13戦ベルギーGPスプリント マックス・フェルスタッペン(レッドブル)

 ただ、折原GMによれば、水が漏れているのを直接目視で確認しているわけではなく、データ上で水圧が落ちているだけだ。折原GMによれば、水漏れしていないのに水圧が落ちる原因としては、以下のようなことが考えられるという。

「水圧というのは水が漏れたら当然落ちますが、それ以外にも外気温の変化によっても上下します。だから、その変化を考慮して補正しないといけない。またセンサーに風が変な当たり方をして、温度を正確に測れていない可能性もあります」

 ベルギーGPは交換したエンジンで問題なく完走したフェルスタッペン。HRCとレッドブルはハンガリーGPに向けて、対策を協議した。

「ベルギーGP後、チーム側は車体を、我々はエンジンをチェックしたのですが、どちらにも問題が確認できませんでした。そうなると考えられることは、我々が見ているセンサーが騙されている可能性です」

 ハンガリーGPではパワーユニット交換を一切行っていなかったことを考えると、ベルギーGPで発生したフェルスタッペンの水圧低下は、センサーの誤反応の可能性が高い。

 じつはそのベルギーGPでは、センサーの誤反応がもうひとつ発生していた。レーシングブルズのアイザック・ハジャーは、レース序盤にポイント圏内を走行していたものの、レースを通して抱えていたある不具合によりペースを失い、最終的に最下位の20位でチェッカーフラッグを受けた。

アイザック・ハジャー(レーシングブルズ)
2025年F1第13戦ベルギーGP アイザック・ハジャー(レーシングブルズ)

「レースのほぼ全体を通してある問題を抱えていて、ペースが上がらなかった。完全にドライコンディションになったレースは途中からは、ただただ抜かれるだけだった」

 そうハジャーは振り返る。いったい、何があったのか? 折原GMが次のように説明した。

「レース中にエンジン側のあるセンサーに不具合が出て、フェイルセーフモードに入れて走っていました。そのモードで走ったことでエンジンは守れたのですが、パフォーマンスは落ちてしまいました」

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ベルギーGPでレーシングブルズのマティア・スピニとミーティングを行う折原GM

 フェイルセーフモードとは、エンジンやシステムに故障や誤作動が発生した場合に、エンジンの被害を最小限に抑え、最悪の状態に陥らないようにするためにあらかじめ組み込まれたプログラムだ。折原GMによれば、フェイルセーフモードに入った直接の原因はセンサーの不具合だが、その不具合を発生させた原因は別にあり、該当する部品を全部交換してハンガリーGPに臨んでいた。こちらもハンガリーGPでは同じ問題は起こさなかった。

 夏休み前の時点で、レッドブルのコンストラクターズ選手権の順位は昨年の3位より、さらにひとつ下がって4位となっている。

「昨年の後半から厳しい戦いが続いていて、今年もそれが続くと覚悟していたのですが、想像していた以上に厳しい戦いとなっていて、思っていたような結果がここまで残せないまま、前半戦が終了しました」(折原GM)

 ただ、折原GMは「オペレーションに関しては、2026年を見据えて新しいメンバーを入れてきましたが、前半戦では順調に成長してくれたことは収穫です」とポジティブな面もあったとも語る。

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グリッドで作業を見守る折原GM

 そして、後半戦に向けて、次のように抱負を語った。

「チャンピオンシップは厳しい状況ですが、最後まで1戦1戦ベストを尽くしたい。そのために、しっかりと準備して夏休み明け初戦のオランダGPに臨みたいです」

 レッドブル・ファミリーとともに戦う最後の後半戦。悔いのないシーズンを送ってほしい。



(Text:Masahiro Owari)

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