ハミルトン「F1にはまだ多くの変化が必要」自身の立場を駆使して多様性や経済など社会問題への取り組みを継続
7度のF1世界チャンピオンであるルイス・ハミルトン(フェラーリ)は、レガシーという概念を中心に自分のキャリアを形作ることには興味がないと語り、自身の本当の焦点はスポーツ内外で具体的な変化を生み出すことにあると主張した。
通常はスピード、記録、個人の栄光によって定義されるスポーツにおいて、ハミルトンは物語を変えつつある。40歳になったこのイギリス人ドライバーは、歴史が自身をどう記憶するかということにもはや関心がない。ハミルトンは、自身の原動力としてのレガシーという概念を否定し、代わりに彼が20年近く支配してきたスポーツを、多様性と持続可能性の点で再構築するという決意を強調している。
ハミルトンのキャリアは、103回の優勝、7回の世界タイトル、そして他に並ぶ者がほとんどいない世界的なプラットフォームなどよって織りなされている。しかし、自身が残したいと願うレガシーについて尋ねられると、ハミルトンは会話の方向を変えた。
「いや、それは僕の目標ではない。僕が集中しているのはそこではない」と、ハミルトンはベルギーの放送局『RTBF』に語った。
「僕はレガシーについて話すことはないし、それは僕のやるようなことではない」
ハミルトンは、常にこのようなスタンスでいたわけではなく、若い頃はより従来寄りの考え方を持っていたことを認めた。ハミルトンは、「若い頃は、『最高のF1ドライバーのひとりとして記憶されたい』とよく言っていた」というが、時間と経験によって彼の優先順位は変化した。
「今は違う考え方をしている。僕が重視するのは、具体的に何に貢献できるかということだ」
ハミルトンにとって、こうした貢献はレーストラックをはるかに超えた範囲に及んでいる。フェラーリで苦戦している状況にあっても、彼のコース上での実力は疑いようがない。しかし現在の彼の野望は、経済格差から環境への影響まで、F1自体の体系的な問題に取り組むことに集中している。
ハミルトンは、F1が世界的なコングロマリットへと進化していることを痛感している。
「F1は大きく成長し、収益は7億ポンド(約1392億円)から30億ポンド(約5968億円)以上に急上昇した」
「この成長はすべての従業員の給与に反映されていない。給与は事業の成長に追いついていない」
彼の批判は、スポーツ界の労働力における不平等という、より広範な問題を浮き彫りにしている。この世界では利益の急騰により、トップ層が不釣り合いに恩恵を得ることがよくある。しかし経済面以外にも、ハミルトンはF1における包括性の永続的な欠如について声高に訴えている。
「パドックには依然として多様性が著しく欠けている。僕たちのスポーツにはまだ多くの変化が必要だ」
多様性に対するハミルトンの主張は新しいものではなく、彼は『ハミルトン・コミッション』などの取り組みを通じて、モータースポーツ界で過小評価されているグループのための道作りに尽力してきた。ハミルトンは、パドックがピットレーンの向こう側の世界をより反映したものとなるように、構造的な変化を推進することが自身の役割であり続けると考えている。
ハミルトンの変化に対するビジョンは、F1の環境と社会への影響にも及んでいる。F1は世界中に広まっており、地元のコミュニティや生態系に与える影響は否定できない。
「これらの国々を訪問する際、混乱を残さないようにしなければならない」とハミルトンは訴えた。
「アップサイクルと適切なリサイクルシステムが必要だ。毎週末、食べ物が無駄になっている。その一方で、人々は飢えて死んでいる。フードバンクと協力して再分配することもできるだろう。ここで僕たちができるポジティブなことは、たくさんある」
「まだすべてのことが行われたわけではないし、それは普通のことだ。完璧になることではなく、毎年進歩していくことが大切だ」
漸進的な進歩に重点を置くハミルトンの姿勢は、世界的なスポーツの変革の複雑さを認めつつも説明責任を主張し、改革に対する実際的なアプローチを強調している。しかし、ハミルトンの影響力は政策提案だけにとどまらず、彼は自身が最高レベルで変革を推進できる特別な立場にいると自負している。
「それが僕の役割だと思っている。僕は適切な部屋に入ることができる」
「時々、『黙ってドライブしろ』と言われることがある。でもそれでは僕じゃない。確かに僕はドライブするが、それだけではない。必要ならイギリスの首相や、ある大統領とさえ会うことができるし、重要な部屋に入って難しい話し合いをすることもできる」
ドライバーはパフォーマンスのみに集中することが求められることが多いF1において、厳しい議論を受け入れる姿勢こそがハミルトンを際立たせている。彼は、1970年代に安全改革を推進したニキ・ラウダのような過去のドライバーからインスピレーションを得ている。
「過去にはニキ・ラウダのようなドライバーがさらなる安全性を追求していた」
「今日、僕たちはより多くのアクセスとより多くの機会を創出する必要がある」
ハミルトンがレガシーを築くことよりも変化を推進することにこだわったのは、彼の世界観の成熟した進化を反映している。
「それが僕のあり方で、これからもそうあり続ける」
彼の焦点は、歴史が彼をどう評価するかではなく、より公平な賃金、より包括的なパドック、より環境に優しいスポーツなど、彼が触発することができる具体的な進歩にある。