リカルド「自分はドライバー以外の何者なのかを考えてきた」自己探究の1年を過ごす。意欲を持ちつつ“利他的”に
元F1ドライバーのダニエル・リカルドは、F1から離れたことで、パドックの容赦ないペースから遠く離れた、自己発見の新たな章が始まったことを明かした。
36歳のオーストラリア人のリカルドは、RB(現在のレーシングブルズ)に所属していた昨シーズン後半にグリッドを離れた。シンガポールGP終了後に、リアム・ローソンと交代させられたのだ。F1でのリカルドの最後の数年間は、マクラーレンでのフラストレーションのたまる日々、2023年にレッドブルのサードドライバーに就任して控えとして過ごした1年間、そして、かつて称賛された輝きを完全には取り戻せなかった不安定な復帰など、波乱に満ち精彩を欠いたものだった。
現在、リカルドは『DR3 Wines』や自身の衣料品ブランド『Enchante』などの事業に時間を注いでいる。さらに重要なのは、彼が“F1ドライバー”というレッテルを貼られことなく人生を模索していることだ。
「そう、ひげを剃っていないんだ。今は顎ひげがあることが心地よくなっている」とリカルドは、母国オーストラリアのゴールドコーストで開催された『Ray White Connect』カンファレンスで聴衆に語った。
「今年は自己探求のような年だった。僕は長い間、あのクレイジーでハイスピードな生活を送ってきたが、今年はもう少し静かに過ごせている」
「時間はたっぷりあったので、ハイキングもした。数週間前にアラスカに行ったんだけど、グリズリーには襲われなかったよ。幸運だった」
「僕は、自分はレーシングドライバー以外の何者なのかということを考えてきた。小さなことに感謝するようになり、家族や友人の大切さの意味も理解するようになった」
「僕はいつも意欲にあふれているが、それがときには利己的になることにつながるので、もう少し利他的になり、よりよい聞き手になれるよう学ぼうとしている」
メディアでは、キャデラックが計画している2026年のF1参戦にリカルドが関わっているとの憶測が飛び交っているものの、リカルドは復帰することに関心を持っていない。キャデラックF1のチーム代表グレアム・ロードンは、最近の『High Performance Podcast』でそのことを明確にした。
「実際のところ、彼はF1には興味がないと公に言っていたと思う」とロードンは語った。
「もし私が誰かを説得する必要があるとしたら、それは間違った人物だ」
「F1ドライバーに、マシンに飛び乗るよう説得する必要などない。何も問題はない。誰もが自分で判断すればいいのだ」
リカルドは今、自身の判断をラップタイムも予選セッションも表彰台もない別の道に向けている。むしろ、それはスピードが静寂に置き換わっている道であり、ライバルを追い抜くことではなく、自分自身を再発見することが課題となる道だ。