ドライバーとの協力関係は、ヒュルケンベルグと築いた“基準”のおかげと小松代表が明かす。オコン&ベアマンにも好影響
ハースF1チームは、2025年に臨むにあたりドライバーラインアップを一新したが、小松礼雄代表は、現在のチームの結束力はその多くが2024年まで所属していたニコ・ヒュルケンベルグの影響によるものだと述べた。
ヒュルケンベルグは、しばらくF1から離れていた期間を経て2023年にハースF1チームに加入し、今年ザウバーに移籍するまでハースで2シーズンを過ごした。小松代表は、その間に経験豊富なヒュルケンベルグが信頼と協力による基盤を築く上で重要な役割を果たし、それが現在もチームに利益をもたらし続けていると考えている。
今シーズン、ハースはルーキーのオリバー・ベアマンと並び、ベテランのエステバン・オコンを起用した。ふたりはシーズン前半の14戦で35ポイントを獲得し、チームはコンストラクターズランキングで9位につけている。
オコンとチームメイトの関係は、これまで時折緊張をはらむことがあったが、小松代表は2025年のペアはうまくまとまっていると語っている。イギリスGPでウエットからドライに変わるコンディションのなか、ふたりが衝突するという一触即発の手痛い状況が起こった後でさえもだ。
「正直に言って、ふたりとも最高のチームプレーヤーになっています」と、小松代表は最近記者団に語った。
「シルバーストンは非常に特殊な状況で、ドライラインが1本しかなかったため、問題が生じていました。しかし、どれも意図的なものではありません。とてもよい会話ができましたし、まったく問題はありませんでした」
小松代表は7月の第13戦ベルギーGPを、ハースのガレージ内に広がる相互尊重の完璧な例に挙げた。
「それ以前も、我々がチームオーダーを出さなければならないときに疑問が生じたことは一度もありませんでした。彼らはすぐさまそうします」
「スパでは、スプリントのグリッドが隣同士で、5番グリッドと7番グリッドでした。スプリントの前に、私はふたりに『我々がこれからやろうとしていることはこれだ』と話しました。(やろうとしていることは)完全に明確で、何の問題もありませんでした」
「その後、天候が不安定だったため、メインの予選とレースのダウンフォースレベルを分ける必要がありました。ダウンフォースのレベルにこれほどの差があると、ある時点で、一方のマシンがもう一方のマシンよりもはるかに速くなるので、日曜日の朝に私たちは話をしました」
「座って3人で話をして、完全にクリアでした。レース中、エステバンは『今はオリー(編中:ベアマンの愛称)にパスさせる』と言っただけです。我々は要請すらしていませんでした。そういうことです」
今年のニュースが現在のラインアップに関するものだった一方で、小松代表はハース在籍時のヒュルケンベルグのプロ意識が、このような協力関係を育むチーム文化の形成に貢献したと繰り返し強調してきた。オープンなコミュニケーションと、ソリューション第一の精神を育むことで、ヒュルケンベルグの手本はハースの2025年のドライバーたちの方向性を決定づけたようだ。小松代表は、チームが再建を続けるなかで、この方向性を維持していく決意をしている。
「ニコに、なぜ昨年あんなにいい成績を残せたのか聞いてみてはどうでしょうか? 私たちは本当にとてもよい関係を築いていました」
「私はこの仕事を22年くらいやっていますが、昨年にニコと築いた関係が私に新たな基準を与えてくれました。これはどのドライバーとも達成する必要があることです。それがパフォーマンスを発揮できる環境だからです」
「誰もがみな人間です。ドライバーがチームを信頼しておらず、チームもドライバーを信頼していない場合、ある決定が強制されていると感じるようなら、当然ながら最善な状況にはならないでしょう。これはレースのことではありません。単に、より根本的な人間の資質のことなのです。尊重、透明性、誠実さ、包括性です。これらのすべてを、我々はこのチーム内で構築しようとしているのです」
「エステバンは長年F1で、よいことも悪いことも経験してきました。今、私たちはこの基盤を手に入れたように感じています。もちろん、それは毎回積み重ねていかなければならないものです。『よし、ここに到達した。大丈夫、もうこのことは考えなくてもいい』というようなことではありません。そうではなく、状況はそれぞれ違っているのです。シナリオは毎回異なります。私たちはそういうことをやっています。そこに根本的な信頼があると考えています」