2025.08.14

【角田裕毅を海外F1解説者が斬る】フェルスタッペンに近づき、力を示せるか。未来を賭けた戦いに他チームも注目


角田裕毅とマックス・フェルスタッペン(レッドブル)
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 F1での5年目に突入した角田裕毅は、2025年第3戦からレッドブル・レーシングのドライバーとして新たなチャレンジをスタートした。元ドライバーでその後コメンテーターとしても活躍したハービー・ジョンストン氏が、角田の戦いについて考察する。今回はベルギーGPとハンガリーGPの週末を振り返る。

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 私は陽気な人間で、常に「グラスに水が半分も入っている」と考えるタイプだ。あらゆる物事のポジティブな面を見る人間であり、長く落ち込むことはない。頑張れば物事は良くなる、良い人間は勝つ――基本的にそういう考え方をする。

 そんな私が、今、ポジティブな要素を見つけるのに手こずっている。夏休みのために低予算で過ごせる素敵な場所へと出発する前に、角田裕毅ファンの皆さんに明るいメッセージを残したかったのだが、現実はなかなか厳しい。

 確かにスパ・フランコルシャンでは予選Q3進出などのポジティブな兆しがあった。しかしその後のハンガリーではQ1敗退だ。もちろん、あのセッションで裕毅はマックス・フェルスタッペンよりわずか0.163秒遅かっただけで、予選ではこれまでで最も接近したということは分かっている。しかし、角田は予選16番手どまり、マックスはQ3まで進んだ。それが事実だ。

 そして、レッドブルは、追い抜きができないハンガロリンクで角田をピットレーンからスタートさせることを決めた。その理由はひとつ。彼らはハンガリーGPを諦めて、モンツァでわずかでもパワーアドバンテージを得られるよう、新しいエンジンを積んだのだろう。

角田裕毅とマックス・フェルスタッペン(レッドブル)
2025年F1第14戦ハンガリーGP 角田裕毅とマックス・フェルスタッペン(レッドブル)

 モーターレースに奇跡はない。レーシングブルズからレッドブルに移ってきたローレン・メキースが、角田の大ファンだからといって、RB21が突然角田のドライビングスタイルに合うようになるわけではない。

 それでも、スパ・フランコルシャンで良い兆候を見せた後に、ブダペストで全く期待外れだったのは本当に残念だった。他のドライバーたち以上に、角田は夏休みを心待ちにしていたことだろう。

 F1サマーブレイクの2週間は、チームのファクトリーにとって強制的なシャットダウン期間となるが、ドライバーとエンジニアが話し合うことは可能だ。そうすることで角田は、自分に合う、より良いセットアップのベースラインを見つけ、それをザントフォールトで使い始める必要がある。

角田裕毅(レッドブル)
2025年F1第14戦ハンガリーGP 角田裕毅(レッドブル)

 遠まわしな言い方はやめて、率直に言おう。これからの4カ月の成績によって、角田が来年もF1に残るか、それとも12月のアブダビGPを終えてパドックを去る姿が最後になるのかが決まる。

 たとえレッドブルのオペレーションが悪かったとしても、またRB21がシーズン最後の10戦で競争力が低かったとしても、最終的な決定要因となるのは、角田がフェルスタッペンとの比較において、どこまでやれたかだ。

 フェルスタッペンが少なくともあと1年レッドブルに残ると明言したことで、角田がシートを維持できる可能性は大幅に低下した。アイザック・ハジャーは非常に好調にルーキーシーズンを過ごしており、リアム・ローソンはレーシングブルズでゆっくりと地位を回復してきた。そして、FIA F2には育成ドライバーであるアービッド・リンドブラッドという存在がいる。

 ヘルムート・マルコは、下位カテゴリーにおいてドライバーをわずか1年で卒業させることを好むため、リンドブラッドが来年F1に昇格する可能性は高いとみられる。つまり3つのシートに4人のドライバーという状況で、そのなかで角田が残留する可能性が最も低い。移籍するとして、候補に考えられるのは、アルピーヌとキャデラックのふたつだけだ。両チームは、これからの数戦、角田の走りを注視していくだろう。

アイザック・ハジャー(レーシングブルズ)と角田裕毅(レッドブル)
2025年F1第13戦ベルギーGP アイザック・ハジャー(レーシングブルズ)と角田裕毅(レッドブル)

 角田のF1での未来は依然として彼自身の手の中にあると、私は言いたい。もし彼がザントフォールトとモンツァでフェルスタッペンに近い位置を走り、両方の週末で予選Q3に進出し、ポイントを獲得できれば、このひどいシーズンを救い出せるかもしれない。すべては角田自身の手の中にある。だから、絶対にその可能性を逃すんじゃないと、彼には言いたい。

角田裕毅とマックス・フェルスタッペン(レッドブル)
2025年F1第14戦ハンガリーGP 角田裕毅とマックス・フェルスタッペン(レッドブル)

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筆者ハービー・ジョンストンについて

 イギリス出身、陽気なハービーは、皆の人気者だ。いつでも冗談を欠かさず、完璧に道化を演じている。彼は自分自身のことも、世の中のことも、あまり深刻に考えない人間なのだ。

 悪名高いイタズラ好きとして恐れられるハービーは、一緒にいる人々を笑顔にする。しかし、モーターレースの世界に長く関わってきた人物であり、長時間をかけて分析することなしに、状況を正しく判断する力を持っている。

 ハービーはかつて、速さに定評があったドライバーで、その後、F1解説者としても活躍した。彼は新たな才能を見抜く鋭い目を持っている。F1には多数の若手育成プログラムがあるが、その担当者が気付くよりもはるかに前に、逸材を見出すこともあるぐらいだ。

 穏やかな口調でありつつも、きっぱりと意見を述べるハービーは、誰かが自分の見解に反論したとしても気にしない。優しい心の持ち主で、決して大げさな発言や厳しい言葉、辛辣な評価を口にせず、対立の気配があれば、冗談やハグで解決することを好む。だが、自分が目にしたことをありのままに語るべきだという信念を持っており、自分の考えをしっかり示す男だ。



(Text : Herbie Johnston)

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