「タイムは意識していませんでした」黙々と役割をこなす平川に見えた準備と自信。ハースF1富士TPCテスト初日に111周を走行
ハースF1チームによる富士スピードウェイでのTPC(Testing of Previous Cars/旧車テスト)テスト、8月6日の初日を担当したリザーブドライバーの平川亮が走行後、メディアの会見に出席。初日を振り返った。
平川は午前46周、午後65周の111周を走行。この日の最速タイムは午前中に記録した1分18秒538で、午後は燃料を多くして長めの周回数を重ねるメニューで1分19秒722がセッションの最速タイムとなった。
「ちょっと暑かったのが若干残念ですけども、そういった意味でクルマとタイヤにはかなり厳しい条件でした。クルマだったりタイヤだったりが限界以上の温度だったので、ちょっと難しいところが多かったですけども、いろいろとドライビングだったり、セットアップだったり、いい勉強になったかなと思います」
「最近は富士を走れていないですけども、そうは言っても富士はいろいろと経験してきたサーキットなので、そこでF1で走るというのは、すごく感慨深いというか、もともとレースを始めたのも2007年にここでF1を見てからレース界に入ったので、そういった意味でも、いろいろと感じるものはありましたね」
F1マシンでの富士での走行は平川自身にとっても、メモリアルなイベントとなったようだ。今回の平川には富士でのコースレコード(2008年フェリペ・マッサの1分17秒287)を超えるタイムが期待されていたが、初日のランプランは午後のセッションのほとんど燃料多めの走行で、当の本人とチームはそのタイムにはあまり固執していない様子だった。さらに、静岡市でこの日観測史上2位の41.4度を記録したように、富士スピードウェイもかなりの暑さとなり、当然、空気密度が薄くなることからダウンフォースは減少して、エンジンパワーは低下することでタイムは出ずらい状況になっていた。
「(コースレコードタイムは)そこはあまり考えていなくて、朝に走り出してクルマのバランスがあまり良くなくて、そこをいろいろと改善していく中でランプランがあって、という状況だったので、あまり自分はタイムは意識していませんでした」
「路温も一気に上がっていったので、そこに合わせながらクルマも初めて富士を走るということで大きな変更があったりしたのですけども、あまりタイムを追っかけている時間は特に午前中はなかったと思います。路温がやっぱり高い、気温も高いので、もちろんそれでもダンフォースがあって安定している部分はあるのですけども、特にセクター3でダウンフォースがあまりないところはかなりトリッキーだった印象ですね」
セットアップだけではなく、持ち込んだ2023年型のVF-23のパーツもこの時期、そして富士のレイアウトには合っていなかったようだ。
「正直言うと、たぶん富士に合わせられるウイングは(今のハースには)ないです。この時期に100Rを全開でいけるので、ちょっとダウンフォースがつきすぎていると思いますね。でも、ここでレースをするわけではないですし。タイムを追っかければ、たぶんもうちょっと軽めのダウンフォースにすればタイムは出ると思いますし、今(セッション後の18時過ぎに)走ったら、たぶんこの路温だと(コースレコードは)出ます」
111周を走り終えたばかりの平川だったが、直後の会見ではまったく疲れた様子は見せなかった。
「体力的には大丈夫でしたね。でも結構、汗をかいて脱水症状にならないか心配だったのですけど、大丈夫でした」
ファンを前にしたトークショーでも「明日は今日よりも気温が低いようなので、坪井がコースレコードを出してくれるでしょう。燃料も軽めで走りますし」と、横にいる坪井に笑顔でプレッシャーをかけた平川。
翌日にF1ルーキーである坪井翔が走ることから、初日を担当した先輩の平川としては厳しいターゲットタイムを刻むのかとも推測されたが、平川は冷静にチームのメニューに従い、自分の役割をまっとうしていた。新人を相手にライバル心を燃やすのではなく、自分とハースF1のさらに先、レース参戦に向けて着々と準備と自信が積み上がっていることを感じさせる姿と表情が印象的だった。