【決勝日レポート】
ノリスが1ストップ成功で今季5勝目。ピアストリとのギャップを7点縮める【決勝レポート/F1第14戦】
8月3日、2025年F1第14戦ハンガリーGPの決勝レースが行われ、ランド・ノリス(マクラーレン)が自身通算9勝目/今季5勝目を飾った。
2位にオスカー・ピアストリ(マクラーレン)、3位にジョージ・ラッセル(メルセデス)が続いた。ピットスタートの角田裕毅(レッドブル)は17位となった。
路面再舗装に加え、ピットビルやグランドスタンドの建て替えをはじめとする大規模改修が行われたハンガロリンクを舞台に開催された第14戦。スタートタイヤは上位11台を含む15台がミディアムタイヤ(イエロー/C4)を選択した。
気温22度、路面温度33度、湿度57パーセントとなるなか、70周のレースはスタートを迎えた。ポールシッターのシャルル・ルクレール(フェラーリ)がターン1のホールショットを守る一方で、フロントロウスタートのピアストリのイン側に3番グリッドスタートのノリスが接近する。
ノリスはターン1へ向けてイン側のポジションを取ったが、ブレーキング時にアウト側から4番グリッドスタートのラッセルにかわされる。さらに、続くターン3で5番グリッドスタートのフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)がノリスを攻略し、ノリスは5番手まで後退することに。
首位を守るルクレールはハイペースで飛ばし、2周目にはピアストリに1秒以上のギャップを開けてDRS圏外に。また、ノリスは3周目のホームストレートでアロンソをかわし、4番手にポジションを戻し、ルクレール、ピアストリ、ラッセル、ノリスのトップ4オーダーに。
8番グリッドスタートのマックス・フェルスタッペン(レッドブル)は、リアム・ローソン(レーシングブルズ)、ランス・ストロール(アストンマーティン)を序盤に続けて攻略し、6番手を走るガブリエル・ボルトレート(キック・ザウバー)の背中を追う。
ただフェルスタッペンは、5番手アロンソに対しDRSを使えるボルトレートをなかなかかわすことができない。アロンソはタイヤ温存を狙い、トップ4から1〜2秒近く遅いペースで周回。12周目にはノリスとのギャップが10秒におよび、序盤からトップ4とアロンソ以降で大きなギャップが開くことに。
トップ4では真っ先に2番手ピアストリが19周目にハードタイヤ(ホワイト/C3)に換えて、首位ルクレールに対するアンダーカットを仕掛けた。翌20周目にルクレール、3番手ラッセルがハードタイヤへ履き替えたことで、ここではポジション変わらず。
一方、トップ4のうち唯一ノリスだけは1ストップ作戦の可能性を残すべくステイを選択し、見た目上トップに浮上する。ただ、20周を超えたミディアムタイヤと、履き替えて数周のハードタイヤではペースが1秒近く異なり、レースが進むにつれて、ルクレールとのギャップは徐々に縮まる。
ノリスにはチームから「1ストップにするならハードタイヤで40周走ることになるけど、どうかな」と無線が飛ぶと、ノリスは「いけるよ!」と自信を感じさせる返事を返した。このころにようやくルクレールは、ノリスの1ストップ戦略に気づき、ノリスとのギャップを一気に縮めにかかる。
32周目、ノリスがハードタイヤに履き替えた。幸い、同じくミディアムタイヤで引っ張るアロンソの前、4番手でコースに戻り、9秒先の3番手ラッセル、そして19秒先の首位ルクレールの背中を追う。
これでトップ3台は予定どおり2ストップにするのか、それとも1ストップに換えるのか。その判断が問われる状況が訪れた。その3台を横目に、フレッシュなハードタイヤでノリスはファステストラップを連発し、34周目にはラッセルとのギャップを3.3秒/ルクレールまでは13.5秒差まで縮めた。
41周目、首位のルクレールが2度目のピットインを敢行し、2セット目のハードタイヤに交換。これでルクレールは、ノリスの7秒後方の4番手にポジションを下げる。同じ周回にタイヤ交換かと思われたピアストリは、ルクレールの動きを見てコースにステイ。クリーンエアのなか、プッシュを続ける。
44周目にラッセルがハードタイヤに交換。これで首位ピアストリ、9.5秒差の2番手にノリスというマクラーレンのワンツーが構築された。ただ、ノリスの猛追は止まらず、毎周1秒以上ギャップを縮めにかかる。
2台のギャップが8秒を切った46周目にピアストリがハードタイヤに換え、ノリスが首位に浮上。7秒差の2番手にルクレール、12秒差の3番手にピアストリというオーダーへ変わった。
首位に浮上したノリスだったが、いつタイヤのデグラデーション(性能劣化)による崖(急激なグリップダウン)が訪れるかが唯一の不安材料だった。ルクレールとは10周、ピアストリとは15周異なる状況のなか、もっともコンディションのいいタイヤを履くピアストリがルクレールとのギャップを縮める。
ピアストリは51周目のターン1で易々とルクレールを攻略し、ふたたびマクラーレンのワンツーが構築された。なお、ルクレールは事前のミーティングで1ストップの可能性と対策に触れていたようだが、フェラーリチームは1ストップの可能性はないと判断していたようだ。
ルクレールは「すごくストレスだよ。僕の言ったことを少しでも聞いてくれていたら、もう少しまともな状況だったかもね。ここから表彰台に残れたら奇跡だよ」と、無線で怒りを露わにする。そのルクレールの背後にはラッセルが徐々に接近する。
62周目、ラッセルがルクレールをかわし3番手に浮上する。ポールシッターのルクレールは、ブレーキングゾーンでラッセルに寄せる、かなり強引なブロッキングを見せたものの、ポジションを守ることは叶わず、表彰台圏外にポジションを下げることになった。また、ルクレールにはこの行為で5秒のタイムペナルティが下った。
一方、1ストップでタイヤマイレージが30周を超えたノリスの背後に、ピアストリが接近する。残り6周となった65周目にピアストリはノリスの後方1秒以内/DRS圏内に入り、ここからマクラーレン同士の直接対決が激化する。
タイヤマイレージの差もあり、状況はピアストリに有利に見えた。ただ、ピアストリはなかなかかわすには至らず。69周目のターン1では、ピアストリがタイヤスモークを上げるブレーキングであわや同士討ちという場面もあったが、幸い接触は回避され、ノリスが首位をキープする。
70周目を終え、ノリスがトップチェッカーを受け、自身通算9勝目/今季5勝目を飾った。0.698秒差の2位にピアストリ、21.916秒差の3位にラッセルが続いた。
以下、4位ルクレール、腰痛で金曜日にはFP1を欠場したアロンソが5位。6位ボルトレート、7位ストロール、8位ローソン、9位フェルスタッペン、10位アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)までが入賞となった。
ピットスタートの角田はミディアムタイヤでの第1スティントから苦戦が続き、第2スティントでソフトタイヤ(レッド/C5)、第3スティントでハードタイヤを履いたが、入賞には届かず17位。レッドブル勢は揃って苦戦となり、ハンガリーでの得点はフェルスタッペンが獲得した2ポイントのみだった。
次戦となる2025年F1第15戦オランダGPは8月29〜31日に、ザントフォールト・サーキットで開催される。