「保守的な判断になるとわかっていた」“スパの特殊性”を念頭に、ガスリーらが前戦の赤旗処置を支持/F1第14戦木曜会見
夏休み直前のF1第14戦ハンガリーGPドライバー会見には、前戦ベルギーGPで逆転勝利を挙げたオスカー・ピアストリ(マクラーレン)、そしてフランス人ドライバーのピエール・ガスリー(アルピーヌ)、エステバン・オコン(ハース)が出席した。
Q:オスカー、スパでの勝利で、3位のマックス・フェルスタッペン(レッドブル)には81ポイント差をつけました。今後はランド・ノリス(マクラーレン)との2強争いになるのでしょうか?
ピアストリ:そう思う。すでにここ数週間は、毎戦、ランドとの一騎打ちだしね。もちろん他チームのライバルたちも依然として強力で、特定のサーキットでは脅威になっている。とはいえランドと僕が乗るマシンが、最高、最強なのは間違いない。ランドとは、ずっと接戦を強いられると思う。
Q:ピエール、あなたの所属するアルピーヌは現在選手権10位、最下位です。エンストンを本拠とするチームがこれほど下位にいるのは、1985年のトールマン以来です。エンストンで長く働いたスティーブ・ニールセンが古巣に戻り、1ヶ月後にはチーム代表に就任します。最下位から脱却するために、彼は何をすべきでしょう?
ガスリー:マシンは6月のスペインGPでのアップデートが最後で、最終戦までこのままなんだ。そしてスティーブは9月の着任で、彼が手腕を振るうのは実質的に2026年以降になると思う。なので今シーズンは現状のままで、この状況を変えるのは非常に難しい。でも来シーズン、トップ5を争えるマシンが手に入り、表彰台や勝利を得られるなら、今はなんでも喜んで受け入れるよ。
前戦ベルギーGPでは、最初の赤旗中断からレーススタートまで1時間20分も待ったことに、賛否の声が渦巻いた。ドライバーたちは、どう思っているのだろう。
Q:なぜもっと早くレースが始まらなかったのかという意見がたくさん出ました。たとえばアイルトン・セナやミハエル・シューマッハーだったら、どうだったか。ドライバーの視点から見て、視界不良で運転しないという常識と、観客が期待するような英雄的な行動との間の微妙なバランスはどこにあるのでしょう?
ガスリー:その前のイギリスGP決勝もウエットコンディションで、ドライバーが進行方向を見えていなかったために他のクルマに衝突する場面があったよね。でもそれって、レースの本質とはまったく関係ないと思う。ファンが期待し、僕らが見せたいのはオーバーテイクであり、ウエットコンディションでのスキルだ。自分のクルマの2メートル先で何が起こっているかのがわかるかどうかで決まるレースじゃない。シルバーストンで起こったこととスパというサーキットの特殊性を踏まえて、判断がより保守的になることはわかっていた。なのであの決断に文句をつけようとは思わない。僕たちドライバーは、ウエットコンディションでも走りたいと思っている。でも一方で、ケメルストレートの真ん中でクラッシュして、別の家族に説明しなければならないような事態には陥りたくない。そのあたりの微妙なバランスを、どう取っていくか。FIAと協力して改善していければと思ってるよ。
オコン:僕がスパで初めてレースをしたのは2012年で、グリッド最後尾だった。雨のレースでね。前は何も見えなかった。シルバーストンでアイザック(・ハジャー/レーシングブルズ)がキミ(アンドレア・キミ・アントネッリ/メルセデス)にクラッシュした時とほぼ同じ状況だったんだ。ギアは4速か5速、おそらく時速160〜170kmくらいだったと思う。右に寄った瞬間、平行に走っていたクルマを抜いていったことに気づいた。もし進路を変えていなかったら激突して、おそらく大怪我をしていた。それくらい、何も見えなかったんだ。決して楽しい経験じゃなかったね。だからFIAがスパで行った対応は正しかったと思う。そんな状況は、再び悲劇を招きかねないからね。
ピアストリ:ここ数年、僕たちはFIAに、何が許容範囲で何が許容範囲外かについてフィードバックを提供してきた。ウエットコンディションはテレビで見るより、実際にクルマに乗っている時の方がずっとひどいものだからね。その意味では、FIAは僕たちの意見に耳を傾け、きちんと受け止めてくれたと思う。僕らはFIAに、どちらかといえば保守的な姿勢で臨んでほしいとお願いしていたしね。もし先週大きなクラッシュが起きていたら、この部屋の雰囲気もかなり違っていたはずだ。今後もFIAと協力して調整していくけど、慎重な姿勢は適切だと考えているよ。
ガスリーの指摘した「スパというサーキットの特殊性」とはオー・ルージュからケメルストレートへと続くレイアウトを指し、オコンが「再び悲劇を招きかねない」と言ったのは、そこで2019年に起きたFIA F2のレース中に起きたアントワーヌ・ユベールの死亡事故が念頭にあったに違いない。
ユベールはふたりと同じフランス人で、将来を嘱望されていたドライバーだった。今もベルギーGPの折に事故現場で弔意を捧げるふたりにとって、二度とあのような事故は起きてほしくないという思いなのだろう。