表彰台を争うルクレール「ほっといてくれ」不要な情報を伝えた無線のやり取りに苦言【F1第13戦無線レビュー(2)】
2025年F1第13戦ベルギーGP。序盤から背後に迫るマックス・フェルスタッペン(レッドブル)を凌ぎ続けてきたシャルル・ルクレール(フェラーリ)は、レース後半もフェルスタッペンと表彰台を争っていた。そんななかルクレールにはフェルスタッペンとのギャップを伝える無線が入ったが、それに対してルクレールは「ほっといてくれ」と不満を露わにした。ベルギーGP後半を無線とともに振り返る。
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12番手走行中のエステバン・オコン(ハース)も、角田裕毅(レッドブル)と同じく1周遅い13周目のピットインだった。しかも交換したタイヤは、新品ではなかった。
13周目
ラウラ・ミュラー:ピット出口に(ランス・)ストロールがいるから気をつけて。
オコン:なぜ中古タイヤなんだ?
ミュラー:ごめんなさい。その通りよ。
ミディアムの新品タイヤは1セット残っていたはず。チーム内の連絡ミスなのか、オコンは中古を履かされ、その上ピットインタイミングが遅かったこともあって、最下位20番手に後退。そこから追い上げたものの15位完走に終わったオコンは、レース後「入賞できる速さはあった」と不満をぶちまけていた。
16周目
マックス・フェルスタッペン:ストレートのクリッピングが信じられないほど酷い。
クリッピングとは、回生エネルギーが途絶えることを指す。雨用セッティングに振ったフェルスタッペンは、最高速が伸びないことに苛立っていた。
1周目にオスカー・ピアストリ(マクラーレン)にかわされ、2番手に後退したランド・ノリス(マクラーレン)だが、ペースは悪くない。
ウィル・ジョゼフ(→ノリス):ランド、このタイヤのまま最後まで行けるぞ。もう1台(注:ピアストリ車)がそれをするには、かなりタイヤを労る必要がある。そこが僕らのチャンスになる。
ルイス・ハミルトン(フェラーリ)と同様11周目という早いタイミングでピットインしたニコ・ヒュルケンベルグ(キック・ザウバー)は、15番手から9番手に一気にジャンプアップ。しかしペース自体は、背後のチームメイト、ガブリエル・ボルトレートの方が速かった。
19周目
ボルトレート:ニコは(リアム・)ローソンを抜く必要がある。そうじゃなければ、僕を行かせてくれ。
20周目に両者は順位を入れ替え、ボルトレートは9位入賞。ヒュルケンベルグはタイヤが持たず、2回ストップで12位に終わった。
22周目
トム・スタラード:いい仕事をしている。基本的にはこのままいける。だが状況次第では、もう1回ピットインするかも。そこは、きみに任せるよ。
ピアストリ:わかった。デグラデーションがひどくなっている。このまま最後まで行くのは厳しいかも。
33周目
スタラード:デグラデーションは予想通りだ。ベストの戦略は、このまま最後まで行くことだ。
ピアストリ:それでハッピーだ。
34周目
ジョゼフ(→ノリス):タイヤがどんどんトリッキーになっている。ハードブレーキングに気をつけろ。
レース中盤まではノリスの方がタイヤの状態はよかったが、後半になると状況は逆転したようだ。
3位表彰台が目前のシャルル・ルクレール(フェラーリ)は、フェルスタッペンに迫られつつあった。
39周目
ブライアン・ボッツィ:フェルスタッペンが1秒2だ。
ルクレール:ほっといてくれ。情報が欲しいときには何も言ってくれなくて、どうでもいい時は余計な情報ばかりじゃないか。(フェルスタッペンとの差は)しっかりマネージメントしているから。
42周目。17番手のフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)は前を行くアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)にコンマ4秒まで迫りながらも、抜きあぐねていた。
クリス・クローニン:あと3周だ。
アロンソ:これだけ近づいているのに、全然抜けない。信じられないよ。
クローニン:辛いと思うが、頑張ってくれ。
42周目、ノリスは首位ピアストリとの差を3秒まで縮めていたが、1コーナーのブレーキングでタイヤがロック。1秒以上のロスを喫してしまう。
スタラード(→ピアストリ):ギャップは4秒3まで広がった。最終コーナーはリフト&コーストで、ブレーキを冷やそう。
ふたりの差は3秒4まで縮まったが、ピアストリが堂々の今季6勝目。ノリスとのポイント差を16まで広げた。
スタラード:よくやった。素晴らしい仕事だったぞ。
ピアストリ:ターン1を抜けたら、ピットレーンを逆走して入っていくんだよね?
スタラード:そうだ。歩行者がいるかもしれないから、気をつけて。
ピアストリ:昨日のレースよりはずっといい出来だったね。狙ってたとはいえ、本当に気持ちいいよ。今回も素晴らしいクルマに仕上げてくれて、本当にありがとう。
前日のスプリントレースでは、スタート直後に2番手フェルスタッペンに抜かれて2位に終わっていた。2番手スタートの決勝レースでは同じことをノリスに仕掛け、まんまと成功させた。会心の勝利だったはずだが、冷静なピアストリは勝利の雄叫びを上げるようなことはなかった。