2025.08.01

「何を待っている?」「状況はいいけどあと2周必要」レース再開までのSCランに意見が割れる【F1第13戦無線レビュー(1)】


2025年F1第13戦ベルギーGP ランド・ノリス(マクラーレン)
Other Photo

 2025年F1第13戦ベルギーGP。予報通り日曜日は雨が降り、レースはフォーメーションラップの段階で赤旗が掲示されスタートが延期された。1時間以上の中断を経て、セーフティカー先導でレースはスタートしたが、このセーフティカーランを巡ってドライバーらの間で意見が別れることになった。ベルギーGP前半を無線とともに振り返る。

────────────────────

 決勝レースは、スタート直前に大雨に見舞われた。セーフティカー先導でフォーメーションラップが始まったが、視界は最悪だった。

2025年F1第13戦ベルギーGP
2025年F1第13戦ベルギーGP フォーメーションラップ

ウィル・ジョゼフ:丘の上のコンディションはどうだ?
ランド・ノリス:理想的じゃないね。セーフティカーの後ろでさえ、よく見えない。他の連中よりコンディションはいいはずなのにね。

ジョゼフ:ランド、見えないのは視界なのか、あるいは水しぶきか?
ノリス:視界が全然効かない。

 あまりにコンディションが悪く、スタートは中止。天候回復を待って再びフォーメーションラップが始まったのは、それから1時間以上経ってからだった。

ニコ・ヒュルケンベルグ:昨日から無線の調子がよくない。声がめちゃくちゃ大きく聞こえる上に、割れている。頭がガンガンするよ。僕のいうことは聞こえている?

トム・スタラード:視界はどうだ?
オスカー・ピアストリ:ずっといいね。ただオールージュのあとのストレートは、ひどい。

ノリス:グリッド右側の方がかなり濡れている。

 スパ・フランコルシャンはイン側(進行方向右側)がポールポジションになる。スタンディングスタートになったら、ポールシッターの自分は不利だと訴えているのだろう。

 だが最終的にローリングスタートが選択され、ノリスの危惧は払拭された。

2025年F1第13戦ベルギーGP
2025年F1第13戦ベルギーGP 決勝レース

マックス・フェルスタッペン:こんなに長くセーフティカーの後ろで走り続ける必要なんてないよ。
サイモン・レニー:了解した。

 本来のマックス・フェルスタッペン(レッドブル)の担当エンジニアであるジャンピエロ・ランビアーゼは、オーストリアに続いて欠席。ベテランエンジニアのレニーが、今回も代役を務めた。

 路面コンディションは、ドライバーによって感じ方はいろいろだった。

ノリス:だいぶコンディションはいいけど、あと2周は必要かな。

フェルスタッペン:もうレースできるよ!

ハミルトン:何を待っているんだ? 完全にドライになっちゃうよ。前のクルマのレッドライトがはっきり見えるし。
リカルド・アダミ:ローリングスタートになった。
ハミルトン:そんな必要ないのに。……わかったよ。

フランコ・コラピント:どうしてローリングスタートなんだ?
ジョシュ・ペケット:それでいいんだ。僕らのグリッド側は、濡れてるからね。

 5周目にレーススタート。1コーナーでランド・ノリス(マクラーレン)が挙動を乱したのを見逃さず、オスカー・ピアストリ(マクラーレン)がケメルストレートで抜き去っていった。

2025年F1第13戦ベルギーGP
2025年F1第13戦ベルギーGP オスカー・ピアストリ(マクラーレン)が僚友ランド・ノリスをオーバーテイク

ノリス:なぜパックがなかったんだ?
ジョゼフ:すぐに戻ってくる。セーフティカーの間に、放電してしまったんだ。

 パックとは、バッテリーの充電状態を指す。回生エネルギーが十分になく、抜かれてしまったというのがノリスの言い分だった。

 数時間前の大雨が嘘のように強い日差しが射し、路面は急速に乾いていった。

6周目
ペケット(→コラピント):ウエットパッチを探して走るんだ。

ジョージ・ラッセル:タイヤはどんどんダメになっているのに、路面はよくなっていない。

ジョージ・ラッセル(メルセデス)
2025年F1第13戦ベルギーGP ジョージ・ラッセル(メルセデス)

ヒュルケンベルグ:このタイヤ、もうダメだよ。
スティーブン・ペトリック:ああ、わかってる、ニコ。ただセクター2は、まだかなり濡れている。タイヤについては、みんな文句を言っているよ。

10周目
ピアストリ:クロスオーバー(ドライタイヤへの交換タイミング)は遠くない。
スタラード:了解。
ピアストリ:ただターン5(レ・コンブ)までの直線はウエットだ。

 フェルスタッペンの猛攻をしのぎ続ける3番手シャルル・ルクレール(フェラーリ)。しかしタイヤは限界のようだ。

11周目
ルクレール:ダウンフォースを削っているからかわからないけど、タイヤがもう終わっている。

ジョゼフ:もうドライで行けるか?
ノリス:かなり近づいている。でももうちょっとかな。

ハミルトン:もう行ける。トライしようと思う。
アダミ:了解した。
ハミルトン:準備しておいてね。ミディアムがいいと思う。

 ピットレーンからスタートしたハミルトンには、失うものはない。真っ先にピットに向かい、ドライタイヤに交換した。ライバルたちより1周、あるいは2周早いピットイン。これでハミルトンは、一気に9番手にジャンプアップした。

アダミ(→ハミルトン):ピット出口が濡れているから、気をつけるんだ。

ルイス・ハミルトン(フェラーリ)
2025年F1第13戦ベルギーGP ルイス・ハミルトン(フェラーリ)

12周目
ジョゼフ:ハミルトンはターン5で速い。
ノリス:ピットインしよう。

角田:ボックスじゃないの?
リチャード・ウッド:ボックス、ボックス。
角田:ノー!

 怒りを露わにする角田裕毅(レッドブル)。ピットインの指示がきたのは、すでに最終シケインを回り込もうとした時だった。角田はもう1周、レインタイヤで走らざるをえず、7番手から12番手まで順位を落としてしまった。

角田裕毅(レッドブル)
2025年F1第13戦ベルギーGP 角田裕毅(レッドブル)

────────────────────

F1第13戦無線レビュー(2)に続く



(Text : Kunio Shibata)

最新ニュース一覧

2025-08-02更新
2025-08-01更新

最新PHOTO一覧






|TOP|NEWS|