2025.07.24

ラッセルとメルセデスの交渉が進展しない背景。ウォルフ代表の意向に反し、ダイムラーはフェルスタッペン獲得を要求か


2025年F1第11戦オーストリアGP ジョージ・ラッセル(メルセデス)
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 クリスチャン・ホーナーがレッドブル・レーシングにおけるすべての職務から解任されたことによって、チームとマックス・フェルスタッペンのマネージャー陣との間の緊張が和らいだかに思えるが、それでも、フェルスタッペンがメルセデスに移籍する可能性が今も取り沙汰されている。

 メルセデスF1チーム代表トト・ウォルフは、「マーケットにおいて誰が獲得可能かを把握し、メルセデスにとって最良のドライバーを獲得しようと努めるのは私の責任だ」と述べている。ただ、実際には、ウォルフがフェルスタッペンを来年に向けて獲得することに強い熱意を持っていると考える者は少ない。

マックス・フェルスタッペン(レッドブル)
2025年F1第11戦オーストリアGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)

 ウォルフとフェルスタッペン一家は、マックスがF1に到達した当初は非常に親密な関係にあった。マックスがF3に参戦していたころに、彼にはグランプリで成功を収めるだけの才能があると明らかになった時、フェルスタッペン陣営はマックスをメルセデスに加入させたいと考え、ウォルフも同じ意向だった。

 しかし、当時はルイス・ハミルトンとニコ・ロズベルグが2015年末まで契約下にあったため、ウォルフは、フェルスタッペンを1年間GP2に参戦させ、その後2016年以降にメルセデスに加えるという計画を立てていた。

 一方で、レッドブルには、セカンドチームを有しているという切り札があった。2015年および2016年のスクーデリア・トロロッソのシートをオファーした上で、その後にレッドブル・レーシングへ昇格させるというオプションと、チームから解放することを可能にする条件をつけたことで、フェルスタッペンはレッドブルと契約を結んだ。

 それでもウォルフとフェルスタッペン家との関係は2021年までは良好だった。しかしその年にハミルトンとフェルスタッペンのライバル関係が激しくなり、サーキット内外で数多くの衝突が起きた結果、ウォルフとフェルスタッペン陣営は事実上関係を断った。

 その後の4年間で状況は徐々に改善され、ヨス・フェルスタッペンとウォルフは再び会話を交わすようになり、パドックやモナコでの短い社交的な交流に限られていた関係が元に戻りつつある。

 しかし、両者の間の信頼は完全には再構築されておらず、それもウォルフがフェルスタッペンを自分のチームに引き入れようと積極的に動いていない理由のひとつであると考えられる。

トト・ウォルフ(メルセデス)
メルセデスF1チーム代表トト・ウォルフ

 それではなぜ、今季ジョージ・ラッセルが最高のパフォーマンスを見せているにもかかわらず、彼との契約更新交渉が進展していないのか。

 それはまず、ラッセルが3年契約と大幅なサラリー増額を求めているのに対し、ウォルフ側は1年契約と控えめな昇給しか提示していないという事情がある。それに加え、メルセデス内部の情報筋によれば、ダイムラーCEOオラ・ケレニウスは、できる限り早くフェルスタッペンを獲得するようプレッシャーをかけているという。ケレニウスは、世界最高のドライバーを擁することは良いことしかもたらさないと考えているのである。

 一方、ウォルフは、2021年アブダビでドライバーズタイトルを不当な形で失ったことで負った傷がいまだに癒えておらず、さらに、ラッセルとアンドレア・キミ・アントネッリの協力関係に満足している。

 ウォルフは、アントネッリは将来チャンピオンになるドライバーであると信じている。また、メルセデスは2026年以降、技術的に大きな優位を得ると確信しており、チームが再び勝利の軌道に乗るのにフェルスタッペンの存在は必ずしも必要ではないと考えている。

 この問題において最終的に誰の意見が通るのかは、いずれ時が明らかにするだろう。最終決定は、今夏のサマーブレイク中に下される可能性がある。



(Text : GrandPrix.com)

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2025-07-25更新

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