『ザウバー』の名で戦う最終シーズン。新加入陣も低迷期を支えたスタッフにも特別な表彰台【ギョロ目でチェック/第6回】
ニコ・ヒュルケンベルグ(キック・ザウバー)が2010年のデビューから16年後に、キャリア通算239戦目にして悲願の3位入賞を果たした今年のF1第12戦イギリスGP。ヒュルケンベルグが所属するキック・ザウバーにとっても、特別な表彰台となった。
キック・ザウバーは昨年の8月に、アンドレアス・ザイドルCEOに代えて、マッティア・ビノットを最高執行責任者(COO)兼最高技術責任者(CTO)として迎え入れ、新しい体制を敷いた。ビノットが最初に手をつけたのは新しいチーム代表。長年レッドブルでスポーティングディレクターを務めていたジョナサン・ウィートリーを獲得し、今年の第3戦日本GPからチーム代表として指揮を執らせている。昨年の秋にはイニャキ・ルエダをスポーティングディレクターとして招聘。ルエダはビノットがフェラーリでチーム代表を務めていたときにレースストラテジストとして共にレースをした戦友だった。
ヒュルケンベルグにとってのF1での初表彰台は、ウィートリーにとってもチーム代表として初表彰台となった。
さらにこの表彰台は、キック・ザウバーというチームにとっても特別なものとなった。キック・ザウバーは2026年からアウディとして新たなスタートを切る。つまり、今シーズンはザウバーという名前で戦う最後の年となる。ザウバーはハイブリッド時代になってから長らく低迷が続いていた。その低迷期を支えていたスタッフにとっても、喜びはひとしおだった。
そのスタッフのひとりがヘッド・オブ・トラックサイドエンジニアリングを務めるヨルン・ベッカーだ。低迷期にチームを離脱していったスタッフも少なくないが、ベッカーのようにこのチームを信じてレースを続けてきたチーム全員にとっても、この表彰台は価値のあるものとなった。
「我々が最後に表彰台を獲得したのは2012年の鈴鹿での(小林)可夢偉の3位。あれから13年、再び味わうシャンパンの味は最高だね」(ベッカー)
スペインGPから4戦連続で入賞しているキック・ザウバー。いまの勢いなら、今シーズン中に再びシャンパンファイトが見られるかもしれない。