2025.07.18

【F速プレミアム】
王者フェルスタッペンの戦い:ウエット路面に悪戦苦闘「最後までクルマを信じてドライブすることはできなかった」


2025年F1第12戦イギリスGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)
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 F1第11戦オーストリアGPはリタイア。第12戦イギリスGPでは5位に終わったマックス・フェルスタッペン。波乱の展開となった2連戦についてF1スイス在住のF1ジャーナリスト、マチアス・ブルナーが語る。
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 F1は歓喜と落胆が繰り返されるローラーコースターだ。現世界王者のマックス・フェルスタッペンは、オーストリアとイギリスでそのことをあらためて思い知らされた。

 レッドブル・リンクで開催されたオーストリアGPの予選で、マックスは7番手に甘んじた。そして、日曜のレースでも状況は好転せず、もうこれ以下はないという最悪の結末を迎えた。スタートから1分も経たないうちに、ターン3でメルセデスのティーンエイジャー、キミ・アントネッリに突っ込まれて、その場でリタイアを余儀なくされたのだ。

 マックスはこの出来事の直後に、現場でアントネッリと言葉をかわしている。「いったい何が起きたのか、知りたかったんだ。その後、ピットでアクシデントの場面を見直した。結論としては、誰もが知っているようにキミはすばらしい才能の持ち主だが、時にはミスも犯すということだ。彼はこの出来事から学ぶだろうし、僕らの間には何のわだかまりもない」

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 このレースでランド・ノリスが優勝し、オスカー・ピアストリが2位に入ったため、選手権ポイントの差はさらに広がった。フェルスタッペンは少しの動揺も見せずに、こう語った。「現実を直視しないといけない。僕らのクルマは、いつでもマクラーレンのドライバーたちに挑戦できるほど速くはない。そうなると僕にできるのは、ひとつひとつの週末で最善の成績をあげていくことだけだ」

 そう言いながらも、マックスはシルバーストンで行われたイギリスGPの予選で、見事なパフォーマンスを発揮してみせた。自身通算44回目のポールポジションを獲得し、セバスチャン・ベッテルがレッドブル・レーシングで記録したポールの獲得回数と肩を並べたのだ。レッドブルのモータースポーツ・コンサルタントを務めるヘルムート・マルコは言う。「誤解を恐れずに言えば、もし他のドライバーだったら、あの日のあのクルマでポールは獲れなかっただろう」

2025年F1第12戦イギリスGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)
2025年F1第12戦イギリスGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)

 このポールポジションをもたらしたのは(フェルスタッペンの卓越したドライビングの才能は別として)、レッドブルRB21に与えられたローダウンフォースのリヤウイングだった。このセットアップにより、クルマはストレートが抜群に速くなり、マックスが訴えていたコーナーでのバランスの悪さも解消されたのだ。

 ところが、予選では文句なしだったセットアップは、ウェット路面で始まった決勝レースで完全に裏目に出た。フェルスタッペンはまずピアストリと、その後はノリスと果敢に戦ったが、ポジションを守ることはできなかった。そして、セーフティカー後のリスタートでスピンを喫して大きく順位を落とし、絶対的なペース不足ゆえにそこからの挽回も容易ではなかった。

 結局、5位でレースを終えたマックスは、もはやタイトル防衛は難しいと認めざるをえなかった。「僕はもう、自分が本気でタイトルを争う位置にいるとは思っていない。まったくひどいレースだった。天気予報を見た時点で、タフなレースになることは覚悟していたが、実際にはその予想以上に厳しかった。とにかく必死でステアリングを握っているだけだったよ。ちょっとでも気を緩めたら、すぐにコースから飛び出していただろうね。リスタートでスピンしたのも、そんな状態だったからだ」

「インターミディエイトタイヤの消耗も、他のクルマよりずっと早かった。そうなると、できるだけ長くステイアウトすべき状況では、ますます難しい状況に陥る。とうとう最後までクルマを信じてドライブすることはできなかった。オーバーステアかと思えばアンダーステアになり、ヒヤリとさせられたことも一度や二度ではなかった。本当にひどかった……」

「ただひとつ良かったのは、友人であるニコ・ヒュルケンベルグが、ついにF1で初のポディウムに上がれたことだ。僕にとっても、すごくうれしいことだったよ」

2025年F1第12戦イギリスGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)が3位表彰台を獲得したニコ・ヒュルケンベルグ(キック・ザウバー)を祝福
2025年F1第12戦イギリスGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)が3位表彰台を獲得したニコ・ヒュルケンベルグ(キック・ザウバー)を祝福


(Mathias Brunner/Translation:Kenji Mizugaki)

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