FIA会長、F1パワーユニットの新構想を打ち出す。V8エンジン復活とハイブリッドパーツ標準化を提案
FIA会長モハメド・ビン・スライエムは、2026年からF1で使用される予定のパワーユニット(PU)に満足していないことを示唆し、将来に向けて新たな道を改めて提案した。それは、グランプリレースにV8エンジンを復活させたうえで、パワートレインのその他の部分に関しては、マシンの一部の非パフォーマンス部品と同様に、すべてのメーカーが単一サプライヤーによる製品を用いるべきだというものである。
今年初めから、ビン・スライエムはモータースポーツの将来に関する自身のビジョンについて積極的に発言しており、自然吸気のV10エンジンをできるだけ早く復活させるべきだという提案を行った。
しかしそれについて彼は、ホンダ、アウディ、フォード、キャデラックといった自動車メーカーが、電動化が将来の主流でなくなれば即座にこの競技から撤退するだろうという、明確な警告を受けた。1994年からグランプリレースに参戦しているメルセデスですら、将来のF1エンジンが彼らが生産する市販車の将来性に結びつかないものになるなら、その立場を再考するとした。
最近、ビン・スライエムは、『the-race.com』のインタビューにおいて、新たな提案を打ち出した。それは、V8エンジンをF1に復活させる一方で、パワーユニットのハイブリッド部分を統一し、外部パートナーからの供給を受けることで開発コストを比較的低く抑えるというものである。
彼は自身の見解として、次のように説明した。
「いまや彼らは理解した。チームもメーカーも、このエンジンを使い続けることはできないと分かっている」
「2026年にはMGU-Hが撤廃され、圧縮比、燃料、ブースト圧も変更したが、結局のところ我々には新しいエンジンが必要なのだ。はるかに軽量で、ハイブリッド電動部分と燃料に関しては単一サプライヤーが必要だ。私としては、トランスミッションについても単一サプライヤーによるものにするべきだと付け加えたい」
「当然のことながら、我々にはFOM(フォーミュラ・ワン・マネジメント)とチームの支持が必要だ。我々の提案を示し、彼らが受け入れるかを確認する。彼らは受け入れると私は思っている。それは理にかなっているからだ」
その主張をさらに強調するために、ビン・スライエムは次のようにも指摘した。
「我々の使命はコスト削減にある。現在のパワーユニットは1基あたり180万〜210万米ドル(約2億6000万円〜約3億1000万円)もかかっている。だが、我々はその4分の1のコストであり、複雑さも4分の1のエンジンについて想像することができるのだ」
ビン・スライエムが提案するエンジンが、近年F1参入を決めた自動車メーカーにとってどれほど魅力的なものになるのかは、見通しが立ちにくい。というのも、ホンダ、アウディ、フォード、キャデラックといったメーカーにとっては、市販車に導入したいハイブリッドシステムの開発ができることこそが最大の魅力だからである。
それでもFIA会長は、「我々は一部のエンジンメーカーと議論を進めており、現在は互いに提案を出し合っている段階にある」と述べた。
「しかし仮に、我々が望む支持を得られなかったとしても、我々は努力したと言える。何が起ころうと、FIAが敗北することは決してない。最終的には数年後に(ルールサイクルが終了した後に)レギュレーションは国際連盟の元へと戻ってくる。我々にとってこれは挑戦ではない。正しいことを行い、理にかなった改革を実現しようという意思なのだ」