厳しい後半戦も覚悟のうえか。シーズン中の代表交代で“変革”を選んだレッドブル【トップチーム密着】
2025年F1第12戦イギリスGPから3日後の7月9日に、レッドブルで長年チーム代表を務めていたクリスチャン・ホーナーが解任された。シーズン中にチーム代表がドライバーを交代するケースは少なくないが、チーム代表が交代するというのは決して多くなく、異常事態だと言ってもいいだろう。
今年はアルピーヌのチーム代表を務めていたオリバー・オークスが5月6日に電撃辞任した。チームからの公式なアナウンスはないが、チームの成績とは関係ない、個人的な理由だと言われている。
ホーナーの解任は、その理由は明かされていないが、こちらは個人的な理由でないことは「辞任」ではなく「解任」であることからも容易に察することができる。しかも、解任と同時に新しいチーム代表としてローラン・メキースがレーシングブルズから移籍することが発表されたことを考えると、周到に準備された解任劇だった。
しかも、中団グループのチームではなく、トップチームのチーム代表の解任は珍しい。最近では2022年にフェラーリのチーム代表だったマッティア・ビノットが12月末で辞任し、マラネロを追われた。その後、フェラーリはフレデリック・バスールを代表の座にすえたが、なかなかチャンピオンシップ争いに加わることができず、そのバスールもまた代表の座にとどまることが怪しくなっている。
このようにトップチームでチーム代表が変わると、必ずと言っていいほど、直後は前チーム代表派と新チーム代表派が対立するなどしてチーム内が政治的に混乱し、成績が低迷することは目に見えている。しかも、今回のレッドブルはシーズン途中での交代なので、さらに混乱は大きい。
そのことをレッドブルの上層部も覚悟したうえでの解任だとすれば、今回のホーナー解任劇は、2025年の後半戦へのテコ入れというよりは、2026年へ向けた変革を行うためのものだったと考えるほうが自然だ。もし、その推測が間違っていなければ、レッドブルの後半戦は厳しい戦いになることを覚悟しなければならない。
チーム創立時のオーナーであるディートリッヒ・マテシッツが亡くなり、技術部門を統率してきたエイドリアン・ニューウェイも去り、エンジニア陣をまとめていたロブ・マーシャルとスポーティングディレクターのジョナサン・ウィートリーも移籍した。
現役最長となる20年間、しかもチーム創設時からチーム代表を務めてきたホーナー体制の終焉は、レッドブルにとっていかなる理由があっても決して小さな出来事ではないことは事実。さらに噂されているマックス・フェルスタッペンが離脱するようなことになれば、2009年からトップチームとしてF1界に君臨し続けたレッドブルが、ついにその座から滑り落ちることになるだろう。