2025.07.15

「スリックには濡れすぎ」「完全にインター」「ボックスだ」スタートタイヤの判断分かれる【F1第12戦無線レビュー(1)】


2025年F1第12戦イギリスGP ジョージ・ラッセル(メルセデス)
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 2025年F1第12戦イギリスGP。フォーメーションラップ終了直後にグリッドにつかず、ピットに入ってタイヤを変えることを選択するドライバーが出てくるなど、レースは雨の影響によりスタート前から戦略が分かれることになった。イギリスGP後半を無線とともに振り返る。

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 午前中の大雨も止み、フォーメーションラップの時点では日差しも射している。この時点では全車が浅溝のインターミディエイトタイヤを履いていた。

カルロス・サインツ:チャールズ(シャルル・ルクレール)が僕の目の前でコントロールを失った!

 2台はコースオフしたが、なんとかコースに復帰した。

 路面は急速に乾きつつあるようだったが、場所によっては十分に濡れている。これがドライバーたちの判断を分かつことになった。

マーカス・ダドリー:ジョージ、路面が十分乾いていると感じたら、(判断は)君に任せる。
ジョージ・ラッセル:どのタイヤで行こうと思ってる?
ダドリー:ハードだ。
ラッセル:次の雨はいつぐらい?
ダドリー:20〜25分後だ。

ルイス・ハミルトン:走行ラインが乾いているところもあるが、ウエット路面もあちこちに残ってる。エッジの上を走っている感じだね。

オスカー・ピアストリ:最終区間はスリックで走るには濡れすぎている。

ウィル・ジョゼフ:コンディションはどうだ?
ランド・ノリス:間違いなくインターだね。すごく滑っている。

マックス・フェルスタッペン:完全にインターだよ。
ジャンピエロ・ランビアーゼ:わかった。

ラッセル:よし、行こう。ボックスだ。
ダドリー:ボックス、了解。

シャルル・ルクレール:ボックスする。
ブライアン・ボッツィ:了解。ボックスしろ。

 ジョージ・ラッセル(メルセデス)、ルクレールら6台がスリックタイヤに履き替えた。

2025年F1第12戦イギリスGP
2025年F1第12戦イギリスGP 6台がピットに向かったため、グリッドからスタートするマシンは14台となった

 ピットスタートとなったフランコ・コラピント(アルピーヌ)が、再発進できない。

コラピント:何かが壊れている。どうなっているんだ?
ジョン・ペケット:よくわからないが、ギヤがスタックしている。
コラピント:なんてこった……。

 ちょい濡れコンディションのスタートで、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)がポールポジションをキープ。後方ではエステバン・オコン(ハース)とリアム・ローソン(レーシングブルズ)が接触事故を起こした。

1周目
オコン:ダメージを受けた。
ラウラ・ミュラー:すぐにチェックする。

ローソン:誰なんだ、あれは。誰にしても、僕にまっすぐ突っ込んできやがった。

 ローソンは戦線離脱。オコンはレースに復帰した。

2025年F1第12戦イギリスGP
2025年F1第12戦イギリスGP リアム・ローソン(レーシングブルズ)は接触よりリタイア。マーシャルによってマシンの撤去作業が行われた

 バーチャルセーフティカー(VSC)の解除直後、ガブリエル・ボルトレート(キック・ザウバー)がスピン、グラベルにハマってしまう。

ヨルン・ベッカー:ガビー、大丈夫か。
ボルトレート:ああ。申し訳ない。
ベッカー:心配するな。スイッチオフの手順に入れ。
ボルトレート:いや、脱出できた。
ベッカー:気をつけろ。リヤウイングにダメージがある。

 ボルトレートはいったんはコース復帰するが止まってしまい、2度目のVSCとなった。

ガブリエル・ボルトレート(キック・ザウバー)
2025年F1第12戦イギリスGP スピンを喫してバリアに接触し、マシンにダメージを負ったガブリエル・ボルトレート(キック・ザウバー)

 このタイミングでランス・ストロール(アストンマーティン)がピットイン。ソフトに交換した。

 8周目、フェルスタッペンはなすすべもなくノリスに抜かれ、2番手に後退した。

10周目
フェルスタッペン:崖が来たら交換しないとね。ひどいインターだ。

マックス・フェルスタッペン(レッドブル)
2025年F1第12戦イギリスGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)

 グリップ不足を訴えるのは、ニコ・ヒュルケンベルグ(キック・ザウバー)も同様だった。

ヒュルケンベルグ:全然グリップがない。
スティーブン・ペトリック:あと3周で雨が来る。ベストを尽くすんだ。

 ソフトに交換したストロールは、その間にみるみる順位を上げていた。

8周目
ゲイリー・ギャノン(→ストロール):DRS使用可能だ。2秒ロスしているセクター3以外は、君がインター勢の誰よりも速い。いいぞ。

10周目
リチャード・ウッド(→角田裕毅):ストロールが後ろから来ている。ソフトタイヤだ。

角田裕毅(レッドブル)&ランス・ストロール(アストンマーティン)
2025年F1第12戦イギリス ポジションを争う角田裕毅(レッドブル)&ランス・ストロール(アストンマーティン)

 ストロールは難なく角田をかわしていった。

ギャノン(→ストロール):戻る準備だ。ボックス、ボックス。

 5番手まで順位を上げていたストロールは、10周目にピットイン。ほとんどのライバルたちも同じタイミングでピットに向かったこともあって、5番手のままコース復帰を果たした。

 この時点で、雨足はかなり強くなっていた。

13周目
ハミルトン:これはもう(フル)ウエットだよ。

ペトリック:次の周は、もっと雨が強くなるぞ。P5まで上がった。
ヒュルケンベルグ:安定して走れている。完全にウエットコンディションで、前は何も見えないけどね。

ジャンピエロ・ランビアーゼ(→フェルスタッペン):ここからの2、3分はサバイバルレースになるぞ。

スタラード:フェルスタッペンは13秒後ろだ。
ピアストリ:この雨の強さは、馬鹿げているレベルだ。どこに行くのかさえ、わからないよ。他の連中は、ちゃんと走れているの?
スタラード:とにかく気をつけてくれ。ターン5は、特に水たまりが深い。

オスカー・ピアストリ(マクラーレン)
2025年F1第12戦イギリスGP オスカー・ピアストリ(マクラーレン)

 14周目。あまりに雨が強く、セーフティカー(SC)導入となった。

 その直前には、ルクレールがマゴッツで直進し、なんとかコースに戻った。

ルクレール:バイザーのなかに雨が入って、何も見えなかった。

 7番手スタートのフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)は、特にミスもないのに10番手まで順位を落としたことが不満のようだった。

15周目
アロンソ:僕らは何番手だ? どうしてこんなに順位を落としたんだ?
クリス・クローニン:現在10番手だ。オコンはユーズドのインターで、コース上にステイアウトした。ランスは4番手まで上がってる。早めにソフトを履いたんだ。
アロンソ:ブラボー。

 18周目。レースが再開された。その直前のルクレールとボッツィのやり取りは、相変わらずのギクシャクぶりだった。

ボッツィ:タイヤ交換したいようなら、言ってくれ。
ルクレール:どういうことだ? 何が起こってる?
ボッツィ:もしここでピットインしたら、先行集団の10秒後方でコース復帰だ。
ルクレール:どうしてそういうことまで、全部僕に訊くわけ? もうセーフティカー終了じゃないか。
ボッツィ:そうだ。

 レース再開直後、アイザック・ハジャー(レーシングブルズ)がアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)に追突して、リタイア。これで再びSC導入となった。

18周目
ピエール・アムラン:ザック、大丈夫か?
アジャ:ああ。全然見えなかった。突然、前に出て来たんだ。

アントネッリ:後ろからぶつけられた。
ピーター・ボニントン:アジャだ。ターン9だった。それまでずっとくっついて走ってたんだ。

 アントネッリもその後リタイアとなった。

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F1第12戦無線レビュー(2)に続く



(Text : Kunio Shibata)

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