アタック直前のデプロイ切れに足を引っ張られQ3逃す。一方クルマに「自信を持てている」と好感触【角田裕毅F1第12戦展望】
2025年F1第12戦イギリスGPの予選Q2の最後のアタック。角田裕毅(レッドブル)が最終コーナーを立ち上がってフルスロットルにした瞬間、本来得られるはずのパワーを失うという問題が発生した。いわゆる「デプロイ切れ」を起こしたのだ。
角田はその状況をこう説明する。
「最後のアタックに入る直前の最終コーナーの立ち上がりで、少しパワーを失った感じがしました。それでターン3まででコンマ1秒ロスしたと思います」
デプロイとは、デプロイメントの略で、バッテリーに蓄えられたエネルギーをMUG-Kを通して、サーキットのどの場所で起動させるかを決めることだ。デプロイはどこで使用してもいいが、コーナーリング中は事実上、パワーは必要ない。ラップタイムに大きく影響するのは、ストレートへ向かうコーナーを立ち上がってアクセルを全開した瞬間からストレートの中盤までだと言われている。デプロイはマシンのセットアップによっても異なるので、全マシンが必ずしも同じではない。ただし、シルバーストン・サーキットの場合、最終コーナー、5コーナー、7コーナーの立ち上がりは、確実にデプロイを効かせていると考えられる。
最終コーナーの立ち上がりで、それまでのラップのようなパワーを得られなかった角田は、ホームストレートでの加速が若干鈍り、タイムをロスしたわけだ。
ただし、エンジンパワーをロスしたわけでなく、あくまでも電気のパワーが正しく発動しなかっただけ。予選でのセクター1の角田の区間自己ベストはQ1の2回目の27.846秒だったが、Q2の2回目は27.864秒と100分の2秒遅れている。これに路面の改善しろとドライバーのQ2の集中力を考慮すれば、角田が言うコンマ1秒のロスは十分に考えられる。
角田は、こうも続けた。
「それ以外も、ほかのコーナーの立ち上がりで(デプロイが)起動していなかったと思うので、それがなければ、おそらくQ3へは進出できたと思います。今回は『パワーロス』という僕にはコントロールできない問題だったので、腹が立ちます」
角田はセクター2とセクター3で自己ベストを叩き出していた。クリスチャン・ホーナー代表も「ユウキはラップの序盤にパワーロスの問題が発生したことで、多少不利な状況に追い込まれてしまった」と、全周に渡ってデプロイが切れていたとは語っていない。とはいえ、アタックに入る直前に、起動すると思っていたデプロイが行われなかったことは事実で、ホンダ・レーシング(HRC)の折原伸太郎(トラックサイドゼネラルマネージャー)もそのことを認めている。
「ラップタイムに影響していたのは事実であり、ラップ開始時にパワーロスを発生させるのはアタックに入るドライバーにいい影響ではなかったことは確かです」
Q3に進出できなかったことは残念だが、第11戦オーストリアGPから立ち直ったことは今後に向けて明るい兆しだ。
「クルマの感触はよかったです。今週はここまでクリーンなセッションを続けられていて、クルマにも自信が持てています。Q3進出を逃したことは残念ですが、先週のように18番手ではありません。チームのバックアップにはとても感謝しています。だからこそ、日曜日のレースではいい走りをして、結果につなげたい。最後にポイントを獲ったのは、いつだったのか覚えていないくらい前なので、ポイントを狙いたいです」
5月18日の第7戦エミリア・ロマーニャGP以来のポイントを期待したい。