F1 Topic:ローソンの6位入賞を支えた岩佐歩夢のシミュレーター作業。初日の問題解決が大きな前進に繋がる
2025年F1第11戦オーストリアGPの金曜日になかった岩佐歩夢の姿が、土曜日にあった。岩佐に尋ねると、「金曜日の夜まで、イギリスでシミュレーターに乗っていた」と言う。
今年、レーシングブルズのリザーブドライバーを務めている岩佐。その任務のひとつはレースチームとともにグランプリが開催されるサーキットへ行って、レギュラードライバーに何かあった場合に代役を務めることだ。
しかし、現在のリザーブドライバーにはもうひとつの役割がある。それはファクトリーでシミュレーター作業を行うことだ。特にヨーロッパラウンドはイギリスのミルトン・キーンズとサーキットが近いので、金曜日にレギュラードライバーに何かあった場合に、すぐにサーキットへ駆けつけることができる。そのため金曜日はファクトリーに待機し、シミュレーター作業を行い、土曜日の朝にサーキットへ向けて出発するというスケジュールとなっている。
金曜日のフリー走行のデータを元にファクトリーでシミュレーター作業を行うというのは、いまに始まったことではない。しかし、そうした作業を行っていたのはトップチームがほとんどだった。それがレーシングブルズのような中団グループのチームも行うようになっているのが、最近のF1だ。
さて、オーストリアGPでのシミュレーター作業は、どうだったのか?
「じつは金曜日の段階ではクルマの調子がいまひとつで、チームの雰囲気はかなり沈んでいました。フリー走行2回目を終えた後にイギリスのファクトリーでシミュレーター作業を開始したのですが、やはりシミュレーターでもフィーリングはよくありませんでした。コラレーションを取ってみても、改善しなかったのですが、その後にテストアイテムをやっていったら、いくつかいいものが見つかりました。それをサーキットにいるレースチームに送って、現場にいるエンジニアたちがFP3(フリー走行3回目)へ向けたセットアップに活かしたんです。それでFP3を走ったら、金曜日の問題が一気に解決して、大きくステップアップしました」
シミュレーター作業を終えた岩佐は、土曜日にイギリスからオーストリアへ移動。サーキットに到着すると、エンジニアから「シミュレーターでやったテストがかなり効いたよ」と言われたという。フリー走行3回目で調子を取り戻したレーシングブルズは、リアム・ローソンが予選で6番手を獲得。そのアドバンテージを活かして、日曜日の決勝レースでは1ストップ作戦を決行し、見事やり遂げ、ローソンはF1での自己最高位となる6位でフィニッシュした。
その活躍を見守っていた岩佐も、自分のことのように喜んでいた。
「チームからは、『シミュレーターでのテスト結果がかなり効いた』という言葉をもらいました。アイザック(・ハジャー)もレース途中に異物を拾ってフロアにダメージを負わなければ、ポイントを獲れていたと思うので、そうなっていれば、ダブル入賞できていたと思います」
ローソンもファクトリーのサポートに次のように感謝している。
「チームに感謝している。彼らは裏で信じられない努力をしてくれている。本当に誇りに思う。彼らがクルマを改善してくれたおかげで、今週末は快適に予選とレースを戦うことができた」
ポイント獲得はならなかったハジャーもこう言って、ファクトリーのサポートに感謝していた。
「金曜から土曜にかけて大きく改善できたことを含めて、チームは素晴らしい仕事をしてくれた」
若いドライバーと、小規模なチームでも、やり方次第で好成績を残すことができるということを、レーシングブルズと岩佐はオーストリアGPで証明した。