サインツ父、FIA会長選出馬を辞退。立候補に向けて理想的ではなかった現状と、ダカールラリーへの懸念を説明
ラリーのレジェンドであるカルロス・サインツ・シニアは、国際自動車連盟(FIA)の会長選出馬の可能性についての憶測に正式に終止符を打ち、次期選挙では立候補しないことを認めた。この発表は、モータースポーツの世界統括団体のトップとして2期目を目指している現会長モハメド・ビン・スライエムにとって、道を切り開くものとなった。同氏は無投票で当選する可能性が高いとみられている。
63歳のサインツは、2度の世界ラリー選手権チャンピオンであり、4度のダカールラリーウイナーでもある。報道によると、彼はモータースポーツ界の有力者らとの協議を経て、2023年後半から立候補を検討していたという。辞任者が続出したことや、FIAの運営に対する物議を醸す変更により、ビン・スライエムのリーダーシップに対する監視が強まるなか、サインツの出馬の可能性は大きな関心を集めていた。
サインツは自身の公式Xアカウントに投稿した声明のなかで、会長選への出馬を辞退する決断をした理由を説明した。
「みなさんこんにちは。このメッセージは、私が今年のFIA会長選挙に立候補しないと最終的に決めたことを、公にお知らせするためのものだ」
「私はここ数カ月、FIAの現状と、このような重要なプロジェクトに伴う要求や複雑さを深く理解するために、懸命に取り組んできた。熟考の結果、現在の状況は、私が立候補する根拠となる理想的なものではないという結論に達した」
「さらに、私が会長に正式に立候補すれば、ダカールへの準備が著しく損なわれることを認識している。フォードと私のチームに対するコミットメントを弱めたくない。これらの懸念から私は現実的になり、今回はFIAでの取り組みを断念することになった」
選挙戦からは撤退したものの、サインツのモータースポーツの統治に対する情熱は依然として強く、FIAの改革の必要性を依然として感じていることを強調した。
「この選挙戦からは退いたものの、モータースポーツ界に貢献し、リードすることへの私の情熱は変わっていない。私は今でもこの組織には重要な変化が必要だと信じており、今後数年間でそれが実現されることを心から期待している」
「レースとモビリティはどちらも私の人生であり、今後の展開を大きな関心を持って見守っていきたいと思う。私は常に自分のスポーツをサポートし、世界中の道路利用者のモビリティを向上させるために、意味のあるあらゆる方法で貢献するよう努めていく」
「最後に、この数週間に私が得たサポート、励まし、アドバイスのメッセージに対し、大きな感謝を伝えたい。彼らは、私の現在の目標と将来の目標に向かって努力し続ける自信を強めてくれた。私は心から感謝している。どうもありがとう」
サインツの決断は、FIAの現体制に対するプレッシャーが高まっている時期になされた。2021年に会長に就任したビン・スライエムは、スタッフの辞任が相次いだことや、スタッフの会議への参加制限、また、ドライバーによる罵倒語の使用禁止など、スポーツ界の一部の人物との疎遠を招いた物議を醸す統治上の決定を行って、批判に直面している。
しかし会長選挙の候補者からサインツが外れた現在、ビン・スライエムの有力な対抗馬はまだ現れていない。FIA総会選挙前に何か進展がない限り、現会長が留任する可能性が残されている。
サインツは、フォードとともに2025年のダカールラリーへの継続的な取り組みに完全に集中しているようで、モータースポーツ界における政治的野心は保留中かもしれないが、彼の存在感と影響力は決して薄れていないことを再確認した。