2025.06.23

リヤタイヤの状態を見ながらトルクの安定性を確保。レースではPUの水温と油温が限界に近づく場面も:ホンダ/HRC密着


2025年F1第10戦カナダGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)
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 2025年F1第10戦カナダGPが行われたモントリオールのジル・ビルヌーブ・サーキットは、典型的なストップ&ゴー型のコース。ただし、全開率はそれほど高くなく、ホンダ・レーシング(HRC)の折原伸太郎(トラックサイドゼネラルマネージャー)によれば、「一般的にはパワーサーキットと言われていますが、パワーユニット(PU)的にはラップタイム感度(エンジンパワーがラップタイムに関与する割合)は言われているほど大きくなく、標準的」だった。

 回生エネルギーを回収して使用するデプロイに関しても、「予選ではフルデプロイできますし、レース中のデプロイに関しても、ほかのサーキットと同じなので、通常と同じような準備で戦っていました」と折原GMは振り返る。

 ただし、ストップ&ゴーのモントリオールではトラクションが重要であると同時に、リヤタイヤのデグラデーション(劣化)も大きくなりやすい。そこで起きやすいのが、ドライバーからのトルク制御に関してコンプレイン(苦情)だ。

角田裕毅(レッドブル)
2025年F1第10戦カナダGP 角田裕毅(レッドブル)

「リヤタイヤのグリップが落ちた状態で、少しでもトルクがオーバーデリバリーしてしまうと、立ち上がりで滑りやすくなるからです」(折原GM)

 そのため、いつも以上に気をつけてトルクの制御を行っていた。

「トルクに関しては安定性が重要なんです。ドライバーにとっては毎回同じようにトルクが出るのが理想ですが、温度などの環境が変わるとどうしても影響を受けやすく、ラップによってズレたりして、ドライバーはコンプレインを出しやすいんです」

 このとき、気をつけなければならないのは、トルクが不安定でリヤが滑っているのか、それともリヤタイヤのデグラデーションが大きくなって滑っているのかを見分けることだ。トルクが安定していても、タイヤが劣化していけば、トルクをかけた時に滑る。ドライバーはそれがタイヤのせいなのか、トルクのせいなのかまでは判断できないからだ。トルクが正常なのに、調整してしまうと、タイヤのグリップが戻ったときに、トルクの出方がおかしくなってしまう。その点に気をつけて、HRCのエンジニアたちはパワーユニットを現場で調整。予選でマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が2番手につけた。

2025年F1第10戦カナダGP 予選
2025年F1第10戦カナダGP 予選 PPジョージ・ラッセル(メルセデス)、2番手マックス・フェルスタッペン(レッドブル)、3番手オスカー・ピアストリ(マクラーレン)

 ところが、日曜日になってHRCのスタッフの頭を悩ませた出来事があった。それは、日曜日の温度だった。

「日曜日の気温が想定よりも高くなり、路面温度も上がり、路面からの照り返しも強くなりました。さらに終盤までセーフティーカーが出なかったので、トラフィックのなかでレースする時間が長かったため、レース中の水温・油温はリミットに近い状態となりました。ただ、幸いパワーユニットだけでなく、ブレーキやタイヤの温度も高かったため、そちらを冷やすために間隔を空けてくれたことで、結果的にパワーユニット側のクーリングは助けられました」(折原GM)

 なお、カナダGPではリアム・ローソン(レーシングブルズ)が金曜日と日曜日にパワーユニットを新しくした。金曜日の交換は、ローソンのパワーユニットが角田裕毅(レッドブル)のものを引き継いでおり、角田は中国GPで2基目を入れていて、ほかのドライバーとは異なるローテーションとなっていたからだった。これに対して、日曜日の交換は土曜日の予選結果を踏まえた戦略的な交換だった。

リアム・ローソン(レーシングブルズ)
2025年F1第10戦カナダGP リアム・ローソン(レーシングブルズ)

 カナダGPでは予選とレースでいずれもマクラーレンの前を走っていたレッドブル・ホンダRBPT。しかし、折原GMは「レッドブルとメルセデスの位置関係を見ていると、レッドブルがマクラーレンより速くなったというより、マクラーレンのペースだけがスペインGPよりもよくなかったのではないでしょうか」と、レッドブルのパフォーマンスがマクラーレンを上回ったとは見ていないようだ。

 次のオーストリアGPはレッドブルにとって、地元。マシンとの相性も決して悪くない。レッドブルとのパートナー最終年をドライバーズチャンピオン連覇で締めたいHRCにとって、重要な一戦となることは間違いない。



(Text : Masahiro Owari)

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