「他に誰かハードを履いた?」バランスを失い順位を落とし、大苦戦のフェルスタッペン【F1第9戦無線レビュー(2)】
2025年F1第9戦スペインGP。レース終盤にセーフティカーが導入され、各車ピットに入ってタイヤを交換し、最後の数周に備えた。そんななかマックス・フェルスタッペンは、コース上で唯一となるハードタイヤを装着。リスタートではバランスを崩し、順位を落とすことになってしまった。スペインGP後半を無線とともに振り返る。
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マクラーレン2台のピットインで暫定首位に上がったマックス・フェルスタッペン(レッドブル)。しかしマシンバランスの不満を盛んに訴えていた。
28周目
フェルスタッペン:すごく運転しにくい。低速コーナーでターンインできない。
フェルスタッペンは29周目に2度目のピットに向かい、4番手に後退した。
ウィル・ジョゼフ(→ランド・ノリス):フェルスタッペンがピットインした。3回ストップだと思う。僕らは今のプランでハッピーだ。
16周目にミディアムタイヤに履き替えたルイス・ハミルトン(フェラーリ)は、タイヤマネージメントに苦しんでいた。
31周目
ハミルトン:全然リヤグリップのグリップがない。どこに行くかわからない。
33周目
フェルスタッペン:以前みたいにアップシフトでクラッチがない。
ランビアーゼ:1973年みたいな?
フェルスタッペン:いや、74年かな。
この時点ではまだ、ランビアーゼの冗談に付き合う余裕はあるようだった。
ジョゼフ:もっとタイヤ攻めていいぞ。ターン3と9で
ノリス:プッシュできないよ。もう左フロントがささくれている。
ジョゼフ:いや、グレイニングは認められない。
37周目
マーカス・ダドリー:OK、ジョージ。前との差を詰めて行こう。
ラッセル:もうやってるよ。
ダドリー(→ラッセル):ペースはいいぞ。このままならチャンスはある。
ラッセルは5番手ハミルトンとの差を縮めつつあった。一方3番手の定位置に戻ったフェルスタッペンは、マクラーレン2台を追う。
40周目
ランビアーゼ(→フェルスタッペン):マクラーレンは君を意識している。先は長いし、まだ行けるぞ。
41周目
ジョゼフ:フェルスタッペンはまだ4秒後方だ。ペース2で行く。ターゲットはプラス3だ。ペース2。
ノリス:ペース2って何? どうしてこんなにスローペースなの?
ジョゼフ:ペース2とは言ってない。ケース2だ。
ノリス:ああ。
8番手を快走するアイザック・ハジャー(レーシングブルズ)。タイヤにも大きな問題はないようだった。
46周目
ピエール・アムラン:プランAだ、プランAで行く。
ハジャー:え、プランBじゃないの?
アムラン:すまない。プランBだった。このまま引っ張るぞ。
ハジャー:いいね。
49周目、オスカー・ピアストリ(マクラーレン)がピットインし、首位をキープしたままコース復帰した。
スタラード(→ピアストリ):コース上は青旗だらけだ。すぐ前にも6台いる。
50周目
フェルスタッペン:クルマのライドが壊れてる
ランビアーゼ:OK。
このままマクラーレンがワン・ツー、フェルスタッペン3番手で行くと思われたが、55周目にアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)がパワーユニット(PU)トラブルでストップ。レース終盤にまさかのセーフティカーが導入された。
ピーター・ボニントン(→アントネッリ):エンジンだ。PUが死んだ。
スタラード:セーフティカーが出た。ボックスだ。
ピアストリ:ボックス、了解。
アムラン:ステイアウトだ。このまま走る。
ハジャー:ボックスしてソフトの新品を履こうよ。
アムラン:もうニュータイヤはない。ちゃんと数えてるよ。
しかし直後にハジャーもピットに向かい、ユーズドソフトに交換した。
そしてレッドブル陣営はフェルスタッペンに、ハードタイヤを装着させた。フェルスタッペンは驚きを隠せない。
フェルスタッペン:え、タイヤ、何?
ランビアーゼ:ハードだ。
フェルスタッペン:なぜハードなんだ?
ランビアーゼ:これが唯一のオプションだ。
フェルスタッペン:他に誰かハードを履いた?
ランビアーゼ:誰もいない。
60周目
ハミルトン:ラップを浪費するのが好きだよね。
SCでの周回がなかなか終わらないことに、ハミルトンは焦れていた。
61周目、ようやくレース再開。フェルスタッペンは最終コーナー立ち上がりで挙動を乱し、ルクレールにかわされる。さらにラッセルにも先行された。
61周目
フェルスタッペン:チャールズはストレートで突っ込んできた!
フェルスタッペン:(ラッセルも)僕に突っ込んできた。さっきと同じだ。あれはペナルティだろう!
ラッセル:僕が先にイン側にいた。
マーカス・ダドリー:その通りだ。
ランビアーゼ:マックス、ラッセルを前に出すんだ。
フェルスタッペン:なぜだ?
ランビアーゼ:それがルールだ。
64周目、フェルスタッペンはスローダウンしてラッセルを先行させようとした際に、接触してしまう。
ラッセル:なにが起きている?
ダドリー:わからない。
フェルスタッペンは5番手まで落ちた上に10秒ペナルティを科され、10番手でレースを終えた。
一方、15番手スタートのニコ・ヒュルケンベルグ(キック・ザウバー)は、大健闘の6位フィニッシュを果たした。
ヒュルケンベルグ:みんな、グッジョブだった。
スティーブン・ペトリック:君こそだよ。素晴らしいスタート、素晴らしいペース、そして素晴らしいタイヤマネージメントだった。
ヒュルケンベルグ:昨日はクソだったけど、よく取り戻せたよ。
ベテランが一味も二味も違う走りを見せたスペインGPだった。