
【】運だけでないヒュルケンベルグの5位/レーシングブルズ浮上の立役者ハジャー【独自選出:F1第9戦ベスト5ドライバー】
6月5日
長年F1を取材しているベテランジャーナリスト、ルイス・バスコンセロス氏が、各グランプリウイークエンドのドライバーたちの戦いを詳細にチェックし、独自の評価によりベスト5のドライバーを選出する。今回は第9戦スペインGPの戦いを振り返った。
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■ピアストリが驚異的な速さとタイヤ管理で今季5勝目
オスカー・ピアストリ(マクラーレン):予選1番手/決勝1位
オスカー・ピアストリはまたしても、ネガティブな出だしからいかに素早く、かつ効果的に立ち直ることができるかを見せつけた。イモラとモナコでの失望を完全に振り払うような、完璧な優位性を彼は示した。
FP1でピアストリとランド・ノリスは異なる空力パッケージで走行し、ノリスがトップタイムをマークした。しかしピアストリはFP2で理想的な空力バランスを得て、破壊的なスピードを披露した。
ノリスがチームメイトの一発の速さに迫ることができたのはQ2だけであり、Q3終了時点での差は0.209秒という驚異的なもので、これはポールポジションと2番手タイムのギャップとしては今シーズン最大だった。
決勝レースで、ピアストリは土曜午後の流れをそのまま引き継ぎ、素晴らしいスタートで首位を確保。一方ノリスは、スタートでフェルスタッペンの後方に下がってしまった。
その後ピアストリは完璧にペースをコントロールし、タイヤの状態を良好に保った。セカンドスティント終盤、突然ペースを上げ、ノリスとのギャップを倍に広げた場面を見れば、ピアストリがタイヤをうまくマネジメントしていたことは明らかだ。
全く危なげなく勝利を達成、開幕からの9戦で5勝目を挙げた。いまやピアストリはタイトル争いにおいて本命の立場を固めつつある。

■自分自身で戦略を選択。3位をつかんだルクレール
シャルル・ルクレール(フェラーリ):予選7番手/決勝3位
シャルル・ルクレールはスペインの週末に、また一歩前進した。予選ではチームの助言に逆らい、それによってグリッド順位を下げたが、最終的にはその戦略が正しかったことを証明。2週連続でマクラーレンのふたりとともに表彰台に上がった。
週末を通してルイス・ハミルトンより速かったルクレールだが、Q3の走行タイミングだけを誤った。これについてもチームの助言に従わず、セッション終盤ではなく中盤にコースインしたのだ。しかしルクレールがアタックを終えた後、サーキット上空に暗い雲がかかり、他の全ドライバーが0.2〜0.3秒のタイム向上を果たした結果、ルクレールは7番手に転落した。
決勝では素晴らしいスタートを切り、一時は5番手に迫ったが、ターン1でハミルトンと並ぶことは避けた。その後、チームメイトに譲られて前に出た後、ルクレールはトップ勢にほぼ匹敵するペースを発揮した。
SF-25で達成可能な最上位は4位だったが、レッドブルの戦略が裏目に出たことで、ルクレールは3位に浮上することができた。
フェルスタッペンとのバトルでは、彼の攻撃的な走りにルクレールは怯まずに戦えることを改めて証明した。ルクレールは自分の運命をうまくコントロールし、その選択がうまく機能した。

■運だけではない。ヒュルケンベルグがキャリア最高レベルのレースで5位獲得
ニコ・ヒュルケンベルグ(キック・ザウバー):予選16番手/決勝5位
素晴らしいカムバックだ。終盤のセーフティカーによってふたつ順位を上げるチャンスをつかみ、アンドレア・キミ・アントネッリのリタイアとマックス・フェルスタッペンのペナルティによって、ふたつ順位が繰り上がった。そうした状況を考慮したとしても、ザウバーに3年以上ぶりの最高成績をもたらしたヒュルケンベルグは、彼自身のキャリアにおいて最高レベルのレースをしたと断言できる。
予選では実力を発揮できず、Q1で敗退した。しかし決勝スタートと1周目は素晴らしい出来で、早々に11番手に上がり、2周目にはフェルナンド・アロンソとのスリリングなバトルの末、ポイント圏内に入った。
その後は、ピエール・ガスリーとの戦いになり、非常に長いセカンドスティントにおいて、ヒュルケンベルグはガスリーよりもタイヤマネジメントをうまく行った。
その時点で9番手というポジティブなポジションにいたヒュルケンベルグに、セーフティカーが味方した。彼自身が言ったように、「Q1で敗退すると、レース用に新品のソフトタイヤがたくさん残るという利点があった」ためである。
ヒュルケンベルグは新品ソフトを最大限に活用し、リスタート後にアイザック・ハジャーをオーバーテイク、さらに不調のSF-25をなんとかマネジメントしようと苦戦していたハミルトンを抜いて、5位という素晴らしいポジションをつかんだ。彼が稼いだポイントにより、キック・ザウバーはコンストラクターズランキングでふたつポジションを上げることができた。

■ハジャーのポイントでレーシングブルズがハースを逆転
アイザック・ハジャー(レーシングブルズ):予選9番手/決勝7位
若きアイザック・ハジャーは、今では満場一致で今年のベストルーキーと見なされている。彼はバルセロナでも再び、同世代のライバルたちより一段上の存在であることを証明した。
ハジャーは、今回も、より経験豊富なリアム・ローソンを圧倒し、彼をチーム内で脇役へと追いやった。予選Q1では苦労したものの、動じることなく、Q2では6番手のタイムを記録し、Q3では9番グリッドを確保した。
レースでのターゲットは、ピエール・ガスリーに勝利することであり、ハジャーはそれを達成し、“ベスト・オブ・ザ・レスト”の位置でのフィニッシュが確実と思われた。しかしセーフティカーが出動したことでヒュルケンベルグに絶好のチャンスが訪れ、ハジャーは新品タイヤを履いたザウバーに太刀打ちできなかった。
ハジャーはここまでの9戦で21ポイントを獲得。エステバン・オコンを抜いてランキング9位に上がった。同時にレーシングブルズもハジャーの功績により、コンストラクターズ選手権においてハースを抜いて6位に浮上することとなった。

■悲惨なモナコから見事挽回を果たしたガスリー
ピエール・ガスリー(アルピーヌ):予選8番手/決勝8位
最近、運はピエール・ガスリーにもアルピーヌにも味方していなかったが、それでもガスリーはくじけることはなかった。
悲惨な結果に終わったモナコGPの後、スペインのFP1から、この非常に要求の高いサーキットにおいてA525がうまく機能していること、ガスリーが絶好調であることがはっきり分かった。
ガスリーはマシンの弱点を巧みに補い、予選8番手を確保。直接のライバルたちをすべて打ち負かし、そのタイムはメルセデスの1台からわずか0.088秒差だった。
しかし決勝では、タイヤの劣化がより大きく影響し、ガスリーはハジャーとヒュルケンベルグの後方に下がることとなった。それでも、彼は地元の英雄フェルナンド・アロンソとの8位争いに勝利し、チームに貴重なポイントを持ち帰った。

(Text : Luis Vasconcelos)