【F1第9戦予選の要点】最大の好敵手ノリスに0.2秒の大差。予選の名手に成長したピアストリ
2025年シーズン9戦目を迎えたF1スペインGPでも依然としてマクラーレンの優位は明らかで、ポールポジション争いはランド・ノリスとオスカー・ピアストリのふたりに絞られた。予選Q1、Q2とピアストリがトップタイムをマーク。しかし、ノリスはQ2で0.058秒差の2番手で食い下がった。
そんな状況で迎えた最終Q3、最初のアタックで1分11秒836の暫定トップタイムを叩き出したピアストリに、担当エンジニアのトム・スタラードから無線が入った。
トム・スタラード「ランドがすぐ後ろからアタックラップに入るぞ」
ピアストリ「cheeky」
ピアストリが実際に発したcheekyという単語は、あつかましいとか図々しい、生意気なといった意味だ。日本人的には、先輩に対して使うには少し躊躇する単語だ。しかしピアストリにしてみれば、『自分に黙ってトウ(スリップストリーム)を使うなんて許さない』とでも考えたのだろうか。
するとピアストリはフィニッシュラインを越えるや、極端に減速した。それでもノリスは0.017秒差で、ピアストリを暫定ポールの座から引きずり下ろした。ただ、セッション終盤の最後のアタックで、ピアストリは自己ベストを約0.3秒縮める1分11秒546を記録。その直前に最後のアタックを終えていたノリスは、セクター2、3で自己ベストを更新できず。ピアストリが今季4度目のポールポジションを獲得した。
現在、ドライバーズランキング首位を走るピアストリ。もともとレースでは抜群の安定性を誇り、2024年の第4戦エミリアロマーニャGP以来、26戦連続入賞(うち6勝を含む15回の表彰台)の記録を続けている。
それに加えて今年のピアストリは、本人も課題だと言っていた予選の速さが大きく改善された。去年は20勝4敗でノリスが圧倒していたのが、今季は前戦モナコGPまでで4勝4敗。そして今回、ついにノリスを上回った。ちなみに今季のポール獲得数も、ノリスの2回に対してピアストリはすでに4回だ。
予選後のインタビューでピアストリは、「12カ月前に比べたら、大きく逆転できた」と、喜びを語っていた。確かに去年のスペインGP予選は、ポールポジションを獲得したノリスに対し、ピアストリはタイム抹消やコースオフで10番手に終わっていた。
そして今回の0.209秒というふたりの差は、今季これまでで最も大きい差だ。予選でもレースでも進化が止まらないピアストリに、ノリスが心中穏やかでないのは確かだろう。