2025.05.09

同じPUモードで追い詰めた“脅威”ハジャーと、チームからの信頼に繋がる1ポイントを獲得した角田:ホンダ/HRC密着


2025年F1第6戦マイアミGP アイザック・ハジャー(レーシングブルズ)
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 2025年F1第6戦マイアミGPの32周目、レース審議委員会は角田裕毅(レッドブル)に、ピットレーンのスピード違反で5秒のタイムペナルティを科した。

 このとき角田裕毅の後方にいたアイザック・ハジャー(レーシングブルズ)との差は5秒以上あり、ポイント獲得のためのライバルは、そのハジャーの1秒以内で追い上げていたエステバン・オコン(ハース)になるのではないかと予想していたと、ホンダ・レーシング(HRC)の折原伸太郎(トラックサイドゼネラルマネージャー)は振り返った。

「ハジャーがどこまでオコンを抑えてくれるのかと思って見ていたのですが、ハジャー自身がレッドブルにとって脅威の存在になりました」

アイザック・ハジャー(レーシングブルズ)&エステバン・オコン(ハース)
2025年F1第6戦マイアミGP アイザック・ハジャー(レーシングブルズ)&エステバン・オコン(ハース)

 44周目になると、ハジャーとオコンの差は1秒以上に広がり、46周目からは角田とハジャーの差が5秒を切っていった。そのため、角田はレースエンジニアのリチャード・ウッドに何度もエンジンモードに関して無線を入れた。パワーアシストをもらって、ハジャーとの差を広げたかったからだ。

 折原GMはこう語る。

「ドライバーとしては少しでも速く走りたいので、そのモードを使いたいと訴えるのですが、そうするとフィニッシュする前にバッテリーが空になってしまうので、トータルで考えると遅くなります」

 予選のように1周だけ速く走るためだったら、1周の間にバッテリーが空になってもいいから使用可能な電気エネルギーを使うのだが、レースのように連続して周回する場合は、空にならない範囲で使いながら電気を溜めて、また使うということを繰り返す。ただし、レースではバトルがあるため、オーバーテイクしたり防御するためにバッテリーには常に貯金を残しておく。

 しかし、角田の場合は前後にバトルするドライバーがおらず、かつ5秒以上の差をハジャーにつけなければならないため、バッテリーに電気を溜めておく必要はなくなっていた。

角田裕毅(レッドブル)
2025年F1第6戦マイアミGP 角田裕毅(レッドブル)

 そこで、HRCのエンジニアから最適なモードとそれをいつから使用するのかという指示がウッドに伝えられ、ウッドが角田に無線で指示したと折原GMは言う。

「具体的な周回数は教えられませんが、『残り何周になったら、このモードを使ってほしい』と伝えていました。そのモードはタイムペナルティなどを科されたときに使うモードで、チェッカーフラッグに向けて徐々にエネルギーを使っていくモードです。またペナルティを科されたときだけでなく、前を走るドライバーにタイムペナルティが出たときに、そのタイムのなかに入ってフィニッシュするときにも使うモードです」

 これは、昨年のアメリカGPでマックス・フェルスタッペン(レッドブル)がランド・ノリス(マクラーレン)にオーバーテイクされた後、ノリスに5秒ペナルティが出されたときに、5秒以内でチェッカーフラッグを受けるために出されたモードと基本的な同じだった。

 異なっていたのは、今回の相手が異なるパワーユニットを搭載するライバルではなく、同じホンダRBPTを搭載する姉妹チームのレーシングブルズだったことだ。レース終盤、同じようなペースで走る2台。レース後、レッドブルで仕事をしている折原GMが、レーシングブルズにいるHRCのエンジニアに確認したところ、同じようなモードを使用していたという。

「後ろを走るレーシングブルズも同じような考えで、ハジャーに同じようなモードを使えと指示していたようです」

 つまり、角田が最後の最後に逃げきれたのは、HRCから伝えられたモードのおかげというよりも、角田自身の踏ん張りだった。ただし、それを裏を返せば、角田を最後まで追いつめたハジャーの走りもまた称賛に値するということになる。

アイザック・ハジャー(レーシングブルズ)
2025年F1第6戦マイアミGP アイザック・ハジャー(レーシングブルズ)

 そんな厳しいレースで、最後に5秒以上の差に広げてフィニッシュした角田の走りを折原GMは次のように称えた。

「本来であれば、1ポイントで喜んではいられないんですが、週末の走り出しからペースにかなり苦しんでいたという状況を考えると、ポイントフィニッシュしたことは、チームから信頼を得ることができたという面でよかったと思います」

 次のエミリア・ロマーニャGPの舞台は、マイアミと異なるコース特性を持つイモラ。ホンダRBPT製パワーユニットを搭載する4台が、マイアミGPよりも上のポジションで戦ってくれることを折原GMは願っていた。

角田裕毅(レッドブル)
2025年F1第6戦マイアミGP 角田裕毅(レッドブル)


(Text : Masahiro Owari)

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