2025.05.09

「いいチームワークじゃない」僚友とライバルと争うハミルトンと、悠長なピットウォール【F1第6戦無線レビュー(2)】


2025年F1第6戦マイアミGP ルイス・ハミルトン&シャルル・ルクレール(フェラーリ)
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 2025年F1第6戦マイアミGP。レース後半、フェラーリ製パワーユニットを使用するハースのオリバー・ベアマンと、キック・ザウバーのガブリエル・ボルトレートが、PUトラブルを理由にレースをリタイアした。一方本家フェラーリでは、レースオペレーションをめぐり、ドライバー側とチーム側で辛辣なやり取りが繰り広げられた。マイアミGP後半を無線とともに振り返る。

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 F1第6戦マイアミGPの決勝レースの18周目以降は、マクラーレンが磐石のワン・ツー体制を築き、3番手のマックス・フェルスタッペン(レッドブル)は2台に徐々に離されていった。

 一方、フェラーリの2台はレッドブル以上にペースが上がらず、シャルル・ルクレールが8番手、ルイス・ハミルトンは入賞圏外の11番手にとどまっていた。特にハミルトンは、すぐ前を行くエステバン・オコン(ハース)攻略にかなり手こずっていた。

21周目
リカルド・アダミ:ストラット9だ。
ルイス・ハミルトン:バトルの最中に話しかけないでくれ!

ラウラ・ミュラー(→オコン):いいペースね。グッジョブ。

 それでもなんとか22周目に、ハミルトンはオコンをかわして行った。

 27周目、ハースのもう1台、オリバー・ベアマンがトラブルに見舞われた。

27周目
ベアマン:なんてことだ。全部が……全部がダメになった。
ローナン・オヘア:パワーユニット(PU)のトラブルだ。
ベアマン:パワステも効かない。
オヘア:了解だ、オリー。ターン7の右側に止めるんだ。
ベアマン:後ろから誰もこない? (コースを)横切っても大丈夫?
オヘア:クリアだ。
ベアマン:ああ……残念だよ。

オリバー・ベアマン(ハース)
2025年F1第6戦マイアミGP PUトラブルにより、コースサイドにマシンを止めたオリバー・ベアマン(ハース)

 これでバーチャルセーフティカー(VSC)が導入され、まずマクラーレンの2台がピットに向かった。3番手フェルスタッペンは、直前の26周目にタイヤ交換したばかりだった。

ジャンピエロ・ランビアーゼ(→フェルスタッペン):VSCが出た。もし(ジョージ・)ラッセルがピットインしたら、前に行かれそうだ。

マーカス・ダドリー(→ラッセル):ボックス、ボックスだ。

ダドリー:フェルスタッペンが横から来るぞ。

 わずかにラッセルが先行し、3番手を奪い取った。フェルスタッペンはそのまま、ラッセルに追いつけずに終わった。

30周目
ガブリエル・ボルトレート:エンジンがダメだ。これじゃ運転できない。
ヨルン・ベッカー:止まるんだ。安全な場所にクルマを止めろ。

 フェラーリ製PUが立て続けにトラブルに見舞われた。これで3回目のVSCが導入された。

 31周目、アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)がアンドレア・キミ・アントネッリを抜き去り、5番手に上がった。

ジェームズ・アーウィン(→アルボン):ナイスジョブだ。

アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)&アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)
2025年F1第6戦マイアミGP アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)&アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)

 背後ではカルロス・サインツもルクレールをかわしていた。

ガエタン・イエゴ(→サインツ):P7だ。そのペースで行け。

33周目
フェルスタッペン:ジョージがスロットルを緩めたか確認してくれ。

 黄旗中にもかかわらず、ラッセルが減速しなかったとフェルスタッペンは訴えた。しかし実際には黄旗無視はなかったようで、この一件は記録されなかった。

ジョージ・ラッセル(メルセデス)
2025年F1第6戦マイアミGP ジョージ・ラッセル(メルセデス)

 サインツをかわして8番手に上がったハミルトンは、ルクレールのすぐ背後まで近づいていた。

36周目
ハミルトン:彼の後ろにいても、タイヤが熱くなるだけだ。

 順位の入れ替えを要求するハミルトン。しかしチームから反応はない。

ハミルトン:レース中、僕はずっとこの位置なわけ?
アダミ:すぐ連絡する。

ハミルトン:お茶を飲んでいる場合じゃないだろ!

 ほとんどキレかかっていたハミルトン。彼の必死さとあまりに対照的なチーム側ののんびりぶりは、ほとんど衝撃的だ。

アダミ:DRSの距離をキープしたいんだったら、それで行こう。
ハミルトン:おいおい、君たち……

ハミルトン:言わせてもらえば、いいチームワークじゃないよね。

シャルル・ルクレール&ルイス・ハミルトン(フェラーリ)
2025年F1第6戦マイアミGP シャルル・ルクレール&ルイス・ハミルトン(フェラーリ)

 これでようやくチームは順位の入れ替えを指示。しかしハミルトンのミディアムタイヤは、すでにピーク性能を過ぎていた。

38周目
ボッツィ(→シャルル・ルクレール):ターン17で順位を入れ替えろ。ハミルトンはミディアムで、抜くチャンスがある。後ろのサインツに注意しろ。

ルクレール:これは馬鹿げてる。サインツがこんなに近くにいるなんて知らなかったよ。

 9番手のサインツが1秒ほどの距離にいることを、ルクレールは事前に知らされていなかったようだ。

アダミ:今のラップは(1分)31秒4だった。
ハミルトン:もうタイヤを使い切ってしまったよ。

 もっと決断が早ければ、アントネッリにもっと迫れたはずだった。しかしハミルトンのペースは伸びず、今度は後ろのルクレールがジリジリし始めた。

ルクレール:もっと速いペースで走ってほしい。ひどいダーティエアだ。

41周目
ハミルトン:(アントネッリの)タイムは遅くなってる?
アダミ:(1分)31秒7だった。追いつけるぞ。

 確かにアントネッリのペースは徐々に落ちていたものの、ハミルトンはせいぜいコンマ数秒速いに過ぎない。両者の差はまだ5秒以上あった。

51周目
ルクレール:(ハミルトンは)アントネッリに近づいてるの?
ボッツィ:ああ。でもゆっくりだ。もしクリーンエアなら、どれくらいで走れる?
ルクレール:そんなの、全然わからないよ。でもタイヤはオーバーヒートしてる。

 ハミルトンの担当エンジニアであるアダミに負けず劣らず、ボッツィもかなり悠長な反応だったが、ようやく順位再入れ替えの指示を出した。

ボッツィ:ターン11で順位を変える。今だ。

 しかしハミルトンに譲る気配はない。

ボッツィ:ルイスに指示が行ってなかったようだ。ターン17でやり直す。

ボッツィ:次の周でもう一度トライだ。
ルクレール:わかった。アントネッリは見えてるから、できるだけ追いつくよ。でも随分時間を無駄にしたよね。あとで話し合おう。

 52周目に両者はようやく入れ替わった。

アダミ:サインツは1秒4後方だ。
ハミルトン:彼にも譲ってほしい?

 チェッカー間際に順位を下げさせられたハミルトンが、精一杯の皮肉を飛ばした。

 そしてマクラーレンのオスカー・ピアストリが2位の僚友ランド・ノリスに4秒6、3位ラッセルに37秒、4位フェルスタッペンにはほぼ40秒の大差をつけて、今季4勝目のチェッカーを受けた。

スタラード(→ピアストリ):グレートジョブだ、オスカー。しっかりラバーを拾ってくれ。素晴らしいペースだった。

ラッセル:ここまでちょっと苦戦したけど、レースでようやく立て直せたよ。

 後方ではまだ、ハミルトンとサインツの間で激しい8番手争いが続いていた。

イエゴ(→サインツ):最終コーナーで刺すんだ。

 しかしハミルトンにインを絞められ、わずかに接触。抜くことはできなかった。

サインツ:ブレーキングで、少し動いた。あれでいいのか。

 この一件はレース後の審議となったが、最終的にハミルトン8位、サインツ9位が確定した。



(Text : Kunio Shibata)

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