避けようのなかった接触。一方で「自信もついてきた」と進歩に満足、今後は旧型車テストも【角田裕毅F1第5戦分析】
2025年F1第5戦サウジアラビアGPの決勝レースで、またしても4コーナーから5コーナーにかけてのタイトなコーナーで角田裕毅(レッドブル)を不運が襲った。
土曜日の予選Q3の最後のアタックでスナップ・オーバーステアに見舞われてタイムを失い、予選8番手に終わった角田。スタート直後の1コーナーでピエール・ガスリー(アルピーヌ)に並びかけられると、そのまま2台は並走して4コーナーへのブレーキングポイントへ激しいポジション争いを繰り広げる。
ここでイン側のラインを守った角田は、こう振り返る。
「僕はカルロス(・サインツ/ウイリアムズ)に続いてコーナーに進入しようとしていました。そのとき、彼(ガスリー)が並んでコーナーに進入しようとしていたんです。僕たちはかなりのスピードを出していました。その直後、彼が僕の方を向いたのがわかりました。あそこはコースで最も狭いコーナーのひとつだったので、そのまま行けば、接触するのはわかっていました」
角田の車載カメラの映像を見ると、角田は前を走るサインツに続いてコーナーに進入しようとしていた。そのため、ブレーキングポイントを遅らせることができず、アウト側にいたガスリーにコーナーのクリッピングポイントで前に出られてしまう。その結果、ガスリーの左側のタイヤと角田の右フロントタイヤが接触し、クラッシュとなった。
「1周目は路面のグリップがないので、僕たちはもう少し慎重になるべきだったかもしれません。とにかく、1周目の事故というのは避けたかった。特に相手が(仲のいい)ピエールなら、なおさらです。成功するために最も痛いのはDNFですから」
ガスリーもまた避けられない事故だったと振り返る。
「レースを1周目に事故で終えるのは、決していい気分ではない。ユウキが内側にいることはわかっていて、白線内にマシンをキープしつつ、内側にも十分なスペースを確保していた。彼との接触による結果は残念だけど、これがレースであり、時にはこういうことも起こるものだ」
この言葉からも、この事故は角田の無謀な運転によるものではないことはわかる。
角田も言う。
「もし、もう一度レースをスタートして同じ状況になっても、同じことをすると思います。僕はできる限りのことはしました。でも、レースでは事故は起きます」
むしろ、前日の予選で予測不能な挙動に見舞われた4コーナーから5コーナーだけに、角田は慎重になっていたように思う。その慎重なドライビングが結果的にガスリーにブレーキングで付け入る隙を見せてしまったのかもしれない。
いずにしても、レース後にレース審議委員会が事故を検証した結果、ふたりにペナルティを科さなかったことからも、今回の事故はレーシングインシデントだった。
レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表もこう語る。
「ユウキにとっては残念な結果だった。彼にできることは本当になかった。このコースでは常に事故のリスクがある。ただ、週末の全体的なパフォーマンスを見れば、マイアミへ向けて前向きな気持ちで臨める」
角田も、レッドブルに移籍して迎えた3連戦を終えて、次のように語った。
「まだ少し波はありますが、ここまでの進歩は悪くないと思います。今やっていることに満足していて、自信もついてきました。少しずつですが、いい方向に進んでいます」
次戦マイアミGPの前には、イギリスのシルバーストン・サーキットでTPC(Testing of Previous Cars:旧型車を使用するテスト)も行う。
「レッドブルのファクトリーでシミュレーターに乗ってから、シルバーストンでテストにも参加します。TPCという2年前のクルマでのテストなので、いま乗っているRB21ではありませんが、レッドブルのクルマでテストができるのは楽しみです。そこでレッドブルのマシンの速さの秘密を探り出したいです」
2週間後、速くそして強くなってマイアミに戻ってきてほしい。