「他のシナリオを考える必要はない」移籍の話題をかわしたフェルスタッペン。パフォーマンス改善に集中/F1第5戦木曜会見
2025年F1第5戦サウジアラビアGP定例会見第一部には、オリバー・ベアマン(ハース)とガブリエル・ボルトレート(キック・ザウバー)のふたりの新人、そしてアレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)が出席した。
Q:オリー(編注:オリバー・ベアマンの愛称)、この3戦ですべて入賞と、素晴らしい安定感を見せていますね。
ベアマン:「現状にはすごく満足しているよ。先週のバーレーンはいい点も悪い点もあった。予選は最悪だったけど、決勝ではセーフティカーが入ったおかげで幸運にもポイントを獲得できた。そしてその前の2レースは、上位に食い込むにふさわしい走りを見せることができた。対照的に開幕戦のオーストラリアは、すごく厳しかった。でもすぐに状況を改善し、小さなアップグレードを施したおかげで、今ではマシンから多くのパフォーマンスを引き出せるようになっている。素直に嬉しいよ」
ベアマン自身が語っているように、冬のテストから開幕戦にかけてのハースは予想外の不振に苦しみ、ほぼ最下位の戦闘力しかないとみなされていた。ところが第2戦以降はベアマン、エステバン・オコンが揃って入賞を重ね、コンストラクターズ選手権5位。堂々の中団グループトップに位置している。
対照的なのがウイリアムズで、冬のテストではカルロス・サインツが総合トップの速さを見せて大いに期待させた。しかし開幕戦こそアルボンが5位に入ったが、その後はふたりとも上位入賞を果たせず。ハースの後塵を拝している。
Q:ハースはコンストラクターズ選手権でウイリアムズを上回りました。中団勢の現状を、どう見ていますか?
アルボン:「すごく興味深い展開だと思う。開幕戦の時点では、ハースが上位争いに加わるなんて誰も予想していなかったからね。一方で僕たちは、かなり安定した成績を残せていると思う。この4戦、1位との差は常にほぼ同じだったしね。それに比べると他の中団チームは、サーキットによってパフォーマンスが大きく上下する印象だ。本来なら4戦すべてでポイントを獲得できていたはずなので、そこは残念な点かな」
Q:ここまで4戦での個人的な満足感はどれくらいですか?
アルボン:「シルバーストンのシェイクダウンでの1周目から、新車の感触はものすごくよかった。その後もずっと、ドライビングを楽しめているよ。それ自体はすごくポジティブだけど、さっきも言ったように必ずしも結果がついてきてくれないのが残念なところだね。でも間違いなく、今までのF1キャリアで一番楽しいシーズンだよ」
トロロッソでデビューし、レッドブルでもなかなか結果を出せず。1年の浪人生活を経てウイリアムズから復帰するも、チームは長い低迷状態だった。その意味で今季が一番楽しいというのは、偽りのない実感だろう。
一方ボルトレートは去年のFIA F2を制した実力者だが、戦闘力を欠く今季のキック・ザウバーではなかなか真価を発揮できずにいる。
Q:あなたもニコ・ヒュルケンベルグも、たとえ自分の方が速いと感じていても、追い抜くのが難しいと話しています。
ボルトレート:「オーバーテイクには、かなり苦労しているよ。他のマシンに近づきすぎると、空力とダウンフォースが一気に失われる感じなんだ。ごくたまに他よりペースがあると感じても、飛び込める位置まで近づくことさえ難しい。残念な状況が続いているね」
第二部にはマックス・フェルスタッペン(レッドブル)とフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)の新旧チャンピオン、そしてデビュー以来速さを見せ続けるアイザック・ハジャー(レーシングブルズ)が出席した。
コース上では大胆な走りのハジャーだが、記者会見ではまだまだ緊張が解けない感じだ。それでもしれっと、楽しいコメントをしてくれる。
Q:ここまで4戦のF1で学んだ最大の教訓は何ですか?
ハジャー:「シートベルトがしっかり締まっているか確認することだね」
Q:締めすぎないことでしょう?
ハジャー:「そう、締めすぎないこと(苦笑)」
Q:他に何か?
ハジャー:「白線に注意することだね」
これらはいうまでもなく、シートベルトが失神しそうになる程きつかった鈴鹿と、フォーメーションラップで白線を踏んでクラッシュ。号泣したオーストラリアでのエピソードを指す。しかしそこからハジャーは1戦ごとに成長を見せている。
一方、アロンソは今季まだノーポイントと、苦しいシーズンを送っている。
Q:今季のマシンは、どこで苦しんでいるのでしょう?
アロンソ:「今は少しずつ、弱点を発見しているところだ。現時点では、低速コーナーが最も弱い部分だと思う。でもバウンシングの問題にも時々直面しているね」
低速でも高速域でも苦しい。かなり深刻な状況だ。それでもレースを続けるモチベーションは健在なのだろうか。
Q:2年前にはポールポジションを争い、レースをリードし、表彰台にも上がっていました。不振を極める今、それでも十分な忍耐力はありますか?
アロンソ:「今週末は僕にとって、アストンマーティンでの50戦目になる。確かに旅の始まりより、今は多くの困難に直面している。でも2年前よりはるかに優れたチームになり、タイトルを争う準備もはるかに整っている。今は単なる移行期間ということだよ」
フェルスタッペンに対しては、マシン戦闘力の改善の見通しと、レッドブル離脱の可能性について質問が集中した。
Q:ヘルムート・マルコ博士はあなたのレッドブル離脱を懸念していると言っています。何を根拠にそう言っていると思いますか。
フェルスタッペン:「僕にはさっぱりわからないよ。今はただ、マシンを改良するために努力し続けているだけだ。とにかく状況を改善しようと努めている」
Q:マルコ博士は誤解していると? レッドブルを離れるつもりはないのですか?
フェルスタッペン:「ドライビングに集中し、戦闘力を上げようと全力を注いでいる。そうなったら、他のシナリオを考える必要はないよ」
Q:具体的に、どこに苦しんでいるのでしょう?
フェルスタッペン:「バーレーンでは、バランスに苦労したね。コーナー進入から中盤までの挙動が、望むレベルに達していないんだ。それがここでどれだけ改善できるかわからないけど、路面コンディションは確実にいいはずだ」
Q:もし状況が改善しない場合でも、タイトルを争えると思いますか?
フェルスタッペン:「今はただ、1レース、1レースを戦っていくだけだ。なので今週末は、バーレーンよりいい結果になればと思っている。そうやって前に進むだけだ。現時点の僕たちは最速じゃないので、タイトルを争うのは非常に厳しい。でも道のりは長い。去年の今頃、第5戦の時点では、すべてが僕たちにとって順調に見えていた。でもその後どうなったかは、みなさんご存知の通りだ。まだまだ改善できると期待しているよ」
次々と繰り出される質問にそつなく返し続けたフェルスタッペンだったが、前戦バーレーンでは「今はレースに参加しているだけだ」と、無線で吐き捨てていた。むしろそちらが、本音と見るべきだろう。