「最も重要なことは期待を管理すること」メルセデスF1のトト・ウォルフ代表が語るアントネッリへの期待と日本の印象
メルセデス-AMG・ペトロナス・フォーミュラ1チームは2025年よりドイツのスポーツウェアメーカー『アディダス』をチームの公式パートナーに迎え入れた。今後複数年に渡り、アディダスはメルセデスとの協力のもとで、ドライバー、メカニック、エンジニアを含むチーム全体および一般発売向けのアパレル、フットウェア、アクセサリーを制作する。
スリーストライプス(編注:アディダスのブランドを象徴する3本線のデザイン)のモータースポーツ復帰にあたり、アディダス主催の会見にて短い時間ではあったが、メルセデスF1のチーム代表を務めるトト・ウォルフに聞いた。
まず、メルセデスF1がアディダスに期待することについて尋ねると「長い歴史を誇るアディダスのレガシーに期待している」と、ウォルフは語った。
「アディダスは長い歴史を持つ偉大なブランドであり、最近ではレトロなスタイルからハイパフォーマンス・ギア、ライフスタイルからハイテクまで手がけて、自分自身を改革してきた。そして今日、このすべてが私たちとひとつになったことは、私にとってもチームにとっても、そしてアディダスにとっても誇らしい瞬間だと感じている」
そう語るウォルフ自身もアディダスの愛用者のひとりだ。
「幸運にもY-3(アディダスとヨウジヤマモトのコラボレーションブランド)のアイテムを手に入れることができたから愛用しているよ。また、私はワークアウトが好きで、頻繁にジムに行ったり、ランニングをしたりする。そういったシーンでもパフォーマンス性の高いアディダスの製品を使うんだ」
2025年シーズンはメルセデスF1にとって変革の一年となる。12年チームに所属した大ベテランかつチャンピオン経験者のルイス・ハミルトンに変わり、18歳の新人アンドレア・キミ・アントネッリがF1デビューを果たすからだ。チーム代表として、アントネッリに期待することとはどのようなものなのだろうか。
「キミについて、最も重要なことは期待を管理することだ。彼はカートでもジュニアフォーミュラでも素晴らしい実績があるからね。彼自身の期待を管理しなければならないし、ファンの期待も管理しなければならない。彼が開幕戦のメルボルンでポールポジションを獲得し、初レースで優勝することはないだろうとね」
「2025年にキミをF1に乗せるのは、新しいレギュレーションが導入される2026年シーズンに向けた準備をさせたいからだ。それまで、素晴らしい喜びを味わう日もあれば、ミスを犯す日もあるだろう。ときには期待をコントロールしていくことも大事だと思っている」
2025年シーズンのF1日本GPは第3戦として4月4〜6日に三重県の鈴鹿サーキットで開催される。昨年はウォルフも来日を果たしているが、今年の予定を尋ねると「今年はまだ日本に行くかは決まっていないんだ」とのこと。
ただ、日本の印象や鈴鹿サーキットに対する思いを話してくれた。
「東京も鈴鹿も素晴らしい街で、清潔で、親切で、素晴らしい国だから、日本は大好きな国だ。私のもっとも楽しい思い出のいくつかは日本にある。鈴鹿サーキットのコースは素晴らしく、まさにドライバーのためのコースであり、ナンセンスな部分がない。すべてがドライバーとマシンで決するコースだ。だからこそ日本に行くのは楽しいことだと感じているよ」
事前に編集部が用意した質問に答えるかたちではあったが、18歳でF1デビューを果たすアントネッリへの親心(ウォルフは53歳)のような思いや、日本、そして日本グランプリの舞台である鈴鹿サーキットへの好意を垣間見ることができた。
アントネッリのレギュラー昇格、そしてアディダスとのタッグを含め、メルセデスF1も新たな時代を迎える。さらには、新たな技術レギュレーション導入が1年後に迫る。それだけに、2025年はウォルフの手腕がより一層問われるシーズンとなりそうだ。