【平川亮 F1テスト後インタビュー】「アタックラップはオコンと比較しても悪くなかった」F1参戦の夢を改めて宣言
F1最終戦アブダビGP後、ヤス・マリーナ・サーキットで行われたF1合同テストに、TOYOTA GAZOO RacingとともにWEC世界耐久選手権で戦う平川亮が、ハースF1チームから出走、初めて同チームのマシンで走行した。アブダビGPでは、マクラーレンのリザーブドライバーとしてFP1に出場。1週間のうちにふたつのチームのF1マシンに乗るという稀有な経験をした平川が、F1マシンやタイヤの感触、詳しいテストメニューなどについて語った。
────────────────────
──改めて聞きたいのですが、WECハイパーカーとF1マシンはどう違いますか?
平川亮(以下、平川):それはなかなかの愚問です(笑)。同じところを見つけるのが難しいです。次元が違います。クルマの違いを説明するのを置いておいて、違いという点をわかりやすく説明すると、例えば12月に行われるスーパーフォーミュラのテストよりも、アブダビのほうが暑いのにタイヤのグリップ力はあります。しかも、全然速い。ダウンフォースが圧倒的に高い。高速コーナーはもちろん、低速コーナーでもしっかりとダウンフォースがあるのがF1だと思います。
あと加速が違います。コーナーの立ち上がりでも2Gとか出ます。スーパーフォーミュラだと1G行くか行かないかというレベル。WECもいまは二駆でクルマも重くて700馬力ぐらいしかないので、そこまでGはすごくない。ブレーキングも全然奥まで突っ込めて、一瞬で止まりますが、とにかくトラクションがすごい。F1の加速は圧倒的です。
──乗りやすさという点ではどうですか?
平川:結構、乗りやすいんですが、少しでもミスするとすぐに吹っ飛んでいくという緊張感があります。コーナリングしていると壁が近寄ってくるフィーリングが常にあります。
──ピレリタイヤはほかのメーカーのタイヤとどう違いますか?
平川:滑らせるとすぐにオーバーヒートしたり、痛めてしまいます。滑るというのはコーナリング中の横滑りもありますが、ブレーキングでフロントをロックさせたり、立ち上がりでリヤをホイールスピンさせるといったタテ滑りもあります。これだけダウンフォースがあるのに、滑らせるとすぐにダメになるという繊細さがあります。
WECはミシュランで、スーパーフォーミュラはヨコハマですが、ピレリは滑らせることによるオーバーヒートにすごく敏感な感覚があります。例えば、アブダビではセクター3がコーナーが連続しますが、最初のコーナーで滑らせるとどんどん滑っていって最後までもちません。また1アタックのときにセクター1で少しでも滑らせると、セクター3で苦労します。だから、今日のテストで最後に行ったアタックでも、ターン1を少し安全に行ったら、タイヤが余ってしまいました。
──今日のテストメニューはどんなメニューだったのですか?
平川:午後のセッション途中までずっとタイヤのロングランでのデータ取りをしていました。セットアップ変更もタイヤのデータ取りのための変更で、特に一発のタイムを出すためのセットアップ変更はしませんでした。
──タイムアタックはどのくらい行いましたか?
平川:ミディアムタイヤで1回、ソフトタイヤで2回やりました。最後に再びロングランのメニューがあったので、ショートランは5時ぐらいにすませました。
──1分24秒435というタイムと12番手という結果については?
平川:最後のアタックはさっきも言ったように、1コーナーで少し余らせてしまいましたが、その分セクター3でタイヤを使えたので、あまりタイムを上げられなかったんですが、悪くはないと思います。ずっとロングランしていて、いきなりショートランだったんですが、うまく合わせ込めたと思います。もう1台のクルマ(エステバン・オコン)のタイム(1分24秒305)と比較しても、いろんなこと(タイヤのスペック違い)を考慮すると、悪くないと思います。
──先週はマクラーレン、今週はハース。どうでしたか?
平川:クルマも違うし、パワーユニットも(メルセデスとフェラーリで)違うので、僕だけでなく、もうひとりのほうもこのチームでの初走行だったので、チーム側が2人に対して、手取り足取り教えていました。PUが違うと操作が全然違うので、いろいろとサポートしてもらいました。
──133周走りましたね。
平川:ランチタイムの休憩は40分間だけしかなかったので、僕のお昼ご飯はちょっとバナナとパスタを摘んだ程度で、ほとんど昼抜きでした(笑)。最後、かなり疲れましたが、なんとか持ち堪えました。首はかなりきました(笑)。
先週のFP1はあまり乗った感がなかったんですけど、今日はみっちり乗ることができ、完全燃焼できました。違うクルマ、違うPU、違うチームで走るという恵まれた経験を積ませていただき、ありがとうございました。この経験を次のチャンスに生かしたい。まだF1でレースする夢はあきらめていません。