【】レッドブル&HRC密着:バトルよりタイヤ温存を優先。ノリスの前でフィニッシュするための戦略を遂行したフェルスタッペン
11月25日
「いまのところ、フェラーリやメルセデスと戦えるとは思わない。彼らはここでは速すぎる。10番手からスタートするルイス(・ハミルトン)も、レースでは僕より前を走ることになるだろう。なぜなら、ルイスが10番手なのは彼がまとなアタックができずに終わったから。そうでなければ、彼が5番手で僕は6番手だっただろう」
これはF1第22戦ラスベガスGP金曜日の予選で5番手に終わったマックス・フェルスタッペン(レッドブル)の土曜日のレースに向けてのコメントだ。
チームが予算の効率化によって、ラスベガスに適したリヤウイングの開発を行わなかったため、レッドブルのRB20に装着されたリヤウイングは空気抵抗が大きく、ストレート区間でライバルに大きく遅れをとっていた。そのため、全開区間が多いラスベガスGPでレッドブルが苦戦を強いられることは、戦前から予想されていたことだった。
ところが、レッドブルとフェルスタッペンにとって幸運だったのは、マクラーレン勢もまた苦戦していたことだ。ラスベガスGPを含めて残り3戦。フェルスタッペンにとって重要なことは勝つことより、チャンピオンシップ争いをしている唯一のライバルであるランド・ノリス(マクラーレン)の前でレースをフィニッシュすることだった。
サンパウロGPを終えた時点で、ノリスとの差を62点まで広げることに成功したフェルスタッペン。ラスベガスGPでノリスに先着すれば、その時点でフェルスタッペンの4連覇が決定する。
そのノリスが予選でまさかの失速。6番手に終わったことで、タイトル獲得に向けて、千載一遇のチャンスがフェルスタッペンに巡ってきた。フェルスタッペンとレッドブルはこのチャンスを見逃さなかった。
「ロングランでは僕らふたりとも少し苦戦していたけど、彼らはいくつか変更を加えた。僕らもいくつか変更した。だから、それがどうなるか見てみよう」
11月23日、土曜日、午後10時。50周で争われる決勝レースで、フェルスタッペンとレッドブルは、珍しく勝利を目指さなかった。彼らが見ていたのは、ノリスだけ。たとえ何位でフィニッシュしても、ノリスの前でチェッカーフラッグを受ける戦略をストラテジストは考え、レースエンジニアはそれをフェルスタッペンに実行するようアドバイスし、フェルスタッペンも冷静に作戦を遂行した。
2021年に最も激しくタイトル争いを演じたハミルトンに猛追されても、フェルスタッペンは不必要なブロックをしてタイヤにダメージを与えるようなことはせず、オーバーテイクされることを許した。その後、ハミルトンを追うことはせず、タイヤを温存。1度はコース上で抜いたフェラーリ勢が後方から迫ってきたときも、フェルスタッペンの頭にあったのはノリスとのギャップと、自分のタイヤのライフだった。
レーススタートから1時間22分後、フェルスタッペンがノリスより26秒前でチェッカーフラッグを受けた瞬間、2024年のドライバーズチャンピオンがフェルスタッペンに決定した。
「今日は落ち着いて、序盤はライバルたちをひとりずつ追い抜いていった。その後も粘り強く、自分のレースをしようと心がけ、そして成功した。シーズンは好調なスタートを切ったものの、その後はかなり厳しい展開となった。それでも、僕たちは決してあきらめることなく、ダメージを最小限にとどめ、タイトル獲得に必要な最善の戦略を立て、実行してきた。チーム一丸となって懸命に戦い、僕たちが今年成し遂げたことを、僕はとても誇りに思っている」
チャンピオン会見を終えたフェルスタッペンが真っ先に向かったのは、チームスタッフがレース後の後片付けを行っていたガレージだった。そこで肩車されたフェルスタッペンは喜びを爆発させた。それは過去3回とは異なる至福の瞬間に見えた。
おめでとう、マックス!! 2024年のチャンピオンは間違いなく、君だ。
(Masahiro Owari)