2024.11.15

【F速プレミアム】
王者フェルスタッペンの戦い:周囲の強烈なプレッシャーを跳ねのけ結果を出す資質


(c)Red Bull
 F1第21戦サンパウロGPで大逆転勝利を飾ったマックス・フェルスタッペン。逆境のなかでも冷静さを失わないフェルスタッペンの戦いをF1スイス在住のF1ジャーナリスト、マチアス・ブルナーが語る。
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 レッドブルのモータースポーツコンサルタント、ヘルムート・マルコは、かつて私にこう言った。「F1レーシングの真のチャンピオンは、スロットルを戻すのが誰よりも遅い者ではない。強烈なプレッシャーのもとでも冷静さを失わず、どんなレースでも望みうる最高の結果を残せる者だ」。つまり、マックス・フェルスタッペンのようなドライバーということだろう。

 マックスは10戦もの間、グランプリでの勝利から遠ざかっていた。メキシコでは、ランド・ノリスとのバトル中のドライビングに対して厳しいタイムペナルティを科され、ブラジルではエンジン交換の必要に迫られて、5グリッド降格を受け入れざるをえなかった。そして、そのブラジルの予選は、彼にとっては最悪のタイミングで赤旗が提示され、Q2敗退を喫した。
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 結果として、フェルスタッペンのサンパウロGPのスタート位置は17番手となり、選手権争いのライバル、ノリスはポールポジションを確保した。しかし、それからおよそ3時間後、マックスは自身通算62回目の優勝を飾っていた。6月のスペインGP以来の勝利だ。これに対して、ノリスは選手権争いの観点から言えば痛恨の6位でレースを終えた。

 レースを振り返って、フェルスタッペンは語っている。「感情が一方から他方へ、これほど大きく振れるなんて、めったにないことだ。予選ではひどい不運に見舞われて、本当に怒りが収まらなかった。僕はランドにまたポイント差を縮められてしまうことを恐れていた。だけど、最終的にはあらゆることが、僕らにとって文句なしの結果になった」

 きわめて難しいコースコンディションに直面して、他の19人のグランプリドライバーの多くが何らかのミスを犯すなか、フェルスタッペンは非の打ち所がないドライビングを披露した。マックスは言う。「極限的なコンディションだった。F1マシンをドライブしているというより、ボートかジェットスキーを操っているような感じだったよ」

「とにかくポジションを上げるために、できるだけ長くコース上にとどまるつもりでいた。そして、運にも恵まれて、レース中にピットストップをせずにタイヤを交換できた。コラピントが起こしたアクシデントで赤旗中断になったからだ。それ以降は本当にいいペースで走れたし、クルマのフィーリングも最高だった」

 マルコはこう語っている。「今日のマックスは完全に別格だった。このところ彼には不利なことが多かったし、彼に対する批判的な意見も多く聞かれた。だが、この見事な勝利へのドライブが、彼を批判した人々への答えだ。カーコントロールでマックスの右に出る者はなく、濡れた路面でグリップを感じ取る彼の能力はズバ抜けている」

 そうした能力と感覚はどのように養われたのか。この質問を向けるべき相手は、やはりマックスの父親ヨス・フェルスタッペンだろう。「カート時代に何年もかけて、そのためのトレーニングをした。雨が激しくなって他の子たちが帰ってしまったときにも、私はマックスをコースに送り出した。そうして彼は、濡れていてもグリップする場所を見つける、あの不思議な能力を身に着け始めた。それはたいてい、そこを通るなんて普通は考えられないようなところなんだ。他のドライバーにはあんな能力はない」

「厳しい批判を浴びたことで、マックスはいつも以上に闘志を燃やしてサンパウロGPを迎えた。そして、何かを証明してやろうと意気込んでコースに出ていった。あれこれと余計なことを言えば、私の息子を動揺させられると思った人たちもいるようだが、実際にはそうしてマックスを刺激して、最高のパフォーマンスを発揮させただけだった」

 あと3戦をうまく乗り切れば、フェルスタッペンにとって4度目の世界選手権タイトルに手が届く。だが、彼は言う。「タイトルについては考えたくない。ただコースに出て、クリーンなレースをしたいんだ。そうすれば、おのずと結果はついてくるはずだよ」

(c)Red Bull
(c)XPB Images

(Mathias Brunner/Translation:Kenji Mizugaki)

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