【決勝日レポート】
【全ドライバー独自採点&ベスト5/F1第14戦】勝機を嗅ぎつけた時のハミルトンの強さ。低迷を脱したルクレール
長年F1を取材しているベテランジャーナリスト、ルイス・バスコンセロス氏が、全20人のドライバーのグランプリウイークエンドの戦いを詳細にチェック、独自の視点でそれぞれを10段階で評価し、ベスト5のドライバーを選出した。今回はベルギーGPの週末を振り返る。
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スパ・フランコルシャンはカレンダーのなかで最も難しいサーキットのひとつであり、そのうえ、天候が予測不可能だ。そのため、ドライバーたちがここで最善の結果を出すためには、最大の力を発揮する必要がある。今年のベルギーGPでは、素晴らしいパフォーマンスがいくつか見られると同時に、大失敗した者はいなかった。今の現役ドライバーたちの質がどれほど高いかが分かる。
ルイス・ハミルトン(メルセデス):予選4番手(3番グリッド)/決勝1位
勝利の気配を感じ取ったとき、ルイス・ハミルトン(メルセデス)は、チャンスを絶対に逃さず、必ずや素晴らしい結果を出してみせる。この数戦、彼のそういう姿を繰り返し見ることができた。7度の世界チャンピオンは、金曜日にはW15に競争力がないと感じ、落胆していた。予選4番手という結果についても過小評価し、日曜日がドライコンディションになれば、まるで戦えないと予想していたのだ。
しかし実際にどうだったかというと、ハミルトンは見事な走りで正々堂々とライバルのシャルル・ルクレールを打ち負かし、終盤にはメルセデスよりはるかに速いマクラーレンに乗って追い上げてくるオスカー・ピアストリを抑え切った。
トップでフィニッシュしたジョージ・ラッセルが失格になったことで、勝利はハミルトンのものになった。しかし週末を通してハミルトンの方がチームメイトよりも断然速かった。ハミルトンは正式なウイナーにふさわしい力を示していた。
シャルル・ルクレール(フェラーリ):予選2番手(ポールポジション)/決勝3位
数戦の低迷から抜け出したシャルル・ルクレール(フェラーリ)は、ベルギーでフェラーリのために素晴らしい仕事をした。予選最後のラップを見事に決めて2番手をつかみ、マックス・フェルスタッペンのペナルティにより、ポールポジションを確保した。
決勝最初の数周をリードした後、将来のチームメイトに抵抗できるだけのペースがなかったためにポジションを落としたが、その後のルクレールは、タイヤをうまく保護しつつ、後ろのドライバーに対してディフェンスするための絶妙なバランスを取って、走り続けた。はるかに速いマシンに乗るピアストリにはアンダーカットされたものの、最後の数周、DRS圏内まで迫ったフェルスタッペンを抑え切ったことは、ルクレールのベルギーでのパフォーマンスの最高のアクセントになった。
ジョージ・ラッセル(メルセデス):予選7番手(6番グリッド)/決勝失格(1位フィニッシュ)
レースで戦略をうまく機能させてトップでフィニッシュしたジョージ・ラッセル(メルセデス)だが、残酷な運命により、マシンの規定違反で失格になった。予選の難コンディションではチームメイトに敗れ、決勝中の唯一のピットストップ前には存在感がなかった。しかしその後にラッセルは最高の走りをし、1ストップ戦略を採るようチームを説得し、可能だと思われた周回数をはるかに超えてタイヤを長持ちさせ、そのうえ、最後の3周ではすぐ後ろに迫ったハミルトンを抑え切ってみせた。しかしレース後のW15は重量の規定を満たしておらず、当然の結果として、失格になった。
オスカー・ピアストリ(マクラーレン):予選6番手(5番グリッド)/決勝2位
オスカー・ピアストリ(マクラーレン)はいまや安定して上位を走り、頻繁にチームメイトを打ち負かしている。予選で良い仕事をしたが、ノリスより0.046秒だけ遅かった。決勝の1周目をうまく走り、4番手にポジションアップ。ピットストップ直後にセルジオ・ペレスを抜いたものの、2回目のピットストップまでにルクレールをつかまえることはできなかった。
フリーエアでの3周で、真の速さを披露、最終スティントでは誰よりも速く、ファイナルラップでメルセデス2台に追いついた。2回目のピットストップで停止位置からはみ出して2秒ロスしており、それがなければ優勝していたかもしれない。とはいえ全体的にポジティブな週末だった。
エステバン・オコン(アルピーヌ):予選10番手(9番グリッド)/決勝9位
エステバン・オコン(アルピーヌ)はスパを愛しており、スパもまたその愛に応えているようだ。チームメイトよりもダウンフォースが低い設定で走っていたオコンだが、ウエットコンディションの予選でオコンの方が速かった。スタートでアレクサンダー・アルボンに抜かれたオコンは、最初のスティント全体をウイリアムズの後ろで過ごし、チームが比較的遅いタイミングでタイヤ交換をすることを決めた後、第2スティントの開始時には、遅いマシンの後ろに落ちてしまった。
オコンはバルテリ・ボッタス、ピエール・ガスリー、ニコ・ヒュルケンベルグ、フェルナンド・アロンソを次々に追い越した後、再びアルボンの後ろに閉じ込められた。2ストップ戦略を貫いたオコンは、最後のスティントで再びポジション回復に努めなければならず、その際についにアルボンをパスし、ランス・ストロールとダニエル・リカルドを抜いて1回ストップのアロンソを追った。しかし周回数が足りず、8位に届かなかった。
フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン):予選9番手(8番グリッド)/決勝8位
=評価 8/10:予選で素晴らしい結果を出し、決勝ではコントロールしたレース運びにより、オコンに勝って8位を獲得、その才能を示した。
マックス・フェルスタッペン(レッドブル):予選1番手(11番グリッド)/決勝4位
=評価 7/10:予選で傑出した走りを見せた。ライバルたちよりもダウンフォースを高めにしたセットアップで決勝に臨んだフェルスタッペンは、期待したほどポジションを上げることができず、慎重なレースの後に4位という結果にとどまった。
ランド・ノリス(マクラーレン):予選5番手(4番グリッド)/決勝5位
=評価 7/10:再びレース開始直後の数メートルで失敗、ラ・ソースでのミスにより、上位争いに加われず、フェルスタッペンとのポイント差はさらに2ポイント広がった。
カルロス・サインツ(フェラーリ):予選8番手(7番グリッド)/決勝6位
=評価 7/10:予選Q1で高くつくミスを犯したが、その後は堅実なレースをし、フェラーリに貴重なポイントをもたらした。
アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ):予選11番手(10番グリッド)/決勝12位
=評価 7/10:Q3進出まであと一歩のところまで迫った。決勝ではタイヤに厳しいマシンで素晴らしいレースをした。
ダニエル・リカルド(RB):予選13番手/決勝10位
=評価 6/10:予選ではマシンと状況から最善の結果を出し、決勝では良い戦略の下で優れた走りをすることで、チームにとって重要な1ポイントをつかんだ。
ピエール・ガスリー(アルピーヌ):予選12番手/決勝13位
=評価 6/10:パワーの問題によりレースが妨げられた。しかし予選ではもっと良い結果を出すべきだった。ガスリーのマシンセットアップの方が、オコンよりもコンディションに適していたのだ。
バルテリ・ボッタス(キック・ザウバー):予選14番手/決勝15位
=評価 6/10:ザウバーのアップグレードが効果を上げているようだ。ボッタスは予選Q2に進出し、ポイント争いに加わった。しかし2回目のピットストップのタイミングが遅かったことでポジションを落としてしまった。
ケビン・マグヌッセン(ハース):予選17番手/決勝14位
=評価 6/10:レースをよくコントロールして走った。しかしマシンには14位より上を狙える力がなかった。
セルジオ・ペレス(レッドブル):予選3番手(2番グリッド)/決勝7位
=評価 5/10:予選で復調したものの、それでもチームメイトより0.6秒遅かった。そしてレースではなすすべなくポジションを落としていった。
ランス・ストロール(アストンマーティン):予選15番手/決勝11位
=評価 5/10:ウエットコンディションのFP3で不必要なクラッシュをし、その影響から立ち直れず、最後までアロンソのパフォーマンスに迫ることができなかった。
角田裕毅(RB):予選18番手(20番グリッド)/決勝16位
=評価 5/10:パワーユニット交換により最後尾グリッドからのスタートが決まっていた。そのためレースセッティングに集中したのだが、戦略がうまく機能しなかった。
周冠宇(キック・ザウバー):予選20番手(19番グリッド)/決勝リタイア
=評価 5/10:いまだ旧型の空力仕様のマシンで走っていた周冠宇だが、それでも予選ではもっと良い結果を出せたはずだった。レースでは今回唯一のリタイアとなった。
ニコ・ヒュルケンベルグ(ハース):予選16番手/決勝18位
=評価 5/10:奇妙なことに、週末を通して調子が悪かった。得意なはずの天候になった予選でも輝きを見せず、レースではチームメイトにかなわなかった。
ローガン・サージェント(ウイリアムズ):予選19番手(18番グリッド)/決勝17位
=評価 4/10:週末を通してアルボンに匹敵するペースを示すことができなかった。デビューした2023年初め以来、そういう状態から抜けさせずにいる。