ホンダ山本MD、角田裕毅の“人間としての成長”も評価。F1初年度は「ルーキーとして様々なことを学んでほしい」
角田裕毅が日本人として10人目のフル参戦F1ドライバーとなった。角田はレッドブル・ジュニアチームの一員であると同時に、ホンダ・フォーミュラ・ドリーム・プロジェクトのドライバーでもある。国内外で活躍するホンダの若手ドライバーを支えてきた山本雅史(マネージングディレクター)は、その角田をどのように見ているのだろうか。
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──まずは2020年のFIA-F2選手権での角田裕毅選手のレースについて、振り返ってもらえますか。
山本雅史マネージングディレクター(以下、山本MD):今シーズンはいろんな意味で本当に厳しい1年となったわけですが、そのなかで強いメンタリティを発揮して、本当によく戦ってくれました。感謝したいです。
──特に最終戦は2レース連続で表彰台を獲得して締めくくりました。
山本MD:最終戦は本当にいいレースで締めくくってくれました(レース1/優勝、レース2/2位)。1年の集大成のようなレースでした。(レース1だけでなくレース2でも)リバースグリッドから表彰台に乗るというのは、過去にF1へステップアップしていったドライバーはみんなそうだったし、それを見事にやってのけました。
──しかも、FIA-F2選手権は2020年が1年目でした。
山本MD:2019年にヨーロッパのレースにデビューして、最初はイェンツァー・モータースポーツで1年FIA-F3選手権を経験して、2020年にFIA-F2選手権にステップアップしてきた。ルーキーイヤーにも関わらず、ポールポジションを4回獲得し、3回優勝しました。(最終的にランキングは3位でしたが)レース1だけで計算すると、ポイントはトップでした(選手権トップのミック・シューマッハーのレース1の獲得ポイントは合計140点、2位のカラム・アイロットは158点、角田は161点)。チャンピオンのミックが1度もポールポジションを獲っていないのに対して、角田が4回獲ったというのは、ルーキーとしてしっかりといい仕事をしたということだと思います。
また毎戦毎戦学んだことを次のレースできっちりと活かしていたのも印象的でした。そのことを最終戦のレース1とレース2でしっかりと確認できたし、その成長は来年に繋がると思っています。
──ヨーロッパのチームともいい関係を築いていましたね。
山本MD:カーリンはこれまでも日本人ドライバーと仕事をした経験もありますが、角田は、チームと本当にいいコミュニケーションを取っていました。
──11月4日のイタリア・イモラでのアルファタウリのプライベートテストでは、走行後に、エンジニアやメカニックをはじめ、テストに参加してくれたスタッフ全員に「ありがとう」と言っていたそうですね。チームスタッフだけでなく、マーシャルたちにもお礼しに行っていっていたようで、その姿を見て、アルファタウリのメンバーが「本当にいいドライバーだ」と言っていたと聞いています。
山本MD:ドライバーとしてだけでなく、人間としても成長しています。
──ホンダの育成ドライバーとしては、2002年の佐藤琢磨選手以来、ふたり目のF1ドライバーです。琢磨選手との共通点と相違点を教えてください。
山本MD:ふたりとも挑戦する気持ちを持っていますが、琢磨はまさしくノーアタック・ノーチャンス。隙あらば、少しでも上を目指した一方で、完走率も高くはなかった。インディカーへ転向してから、それを徐々に修正していって、インディ500で2回も優勝するまで成長しました。
その点、角田は20歳という若さにもかかわらず、レースを俯瞰して見ることができる。だから、無駄な接触事故がない。20歳にして、すでに周りがよく見えている。そういう点では角田のほうが将来、楽しみだなと思っています。
──F1ドライバーとして、2021年の角田選手に期待することはなんですか?
山本MD:イモラのテストの後、話をしたら、「F1は、F2に比べて2つぐらいカテゴリーを間にはさんでもいいくらい違いますよ」と言っていました。F1はそれくらい別格なステージなので、1年目はルーキーとして、まずはいろいろなことを学んでほしい。目先の結果を求める必要はありません。ドライバーとしていいモノを持っているので、(経験を)どんどん積み上げていって、2020年のF2のように、毎戦毎戦成長していく姿を見ることができたらいいなと。とても落ち着いているので、とにかく楽しんで行ってこい、と思います。