2025.02.13

【F速プレミアム】
ハミルトン、フェラーリでもう一度『ハンマータイム!』/スペイン人ライターのF1コラム


(c)Ferrari
 フェラーリに移籍しファンの話題をさらっているルイス・ハミルトン。プライベートテストではクラッシュを喫したものその後のピレリタイヤテストでは順調に適応を進めている。スペイン在住のフリーライター、アレックス・ガルシアがハミルトンに状況について語る。
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 ついに2025年となったが、F1にとってはおそらく過去10年間で最大の瞬間となるだろう。ルイス・ハミルトンは、メルセデスとともに銀色をまとってキャリアを積んできたが、今度は赤を身につけて伝説のスクーデリア・フェラーリでドライブしている。彼は7度の世界チャンピオンに輝いたふたり目のドライバーだ、そして彼の統計から判断すると、もちろんチームに加わったドライバーのなかで最も成功したドライバーでもある。しかしそれ以上に、この変化がF1のあらゆる分野に与えた感情的な影響がある。

 まず、イタリアは一種の“ハミルトン・マニア”となって完全に熱狂している。これは、ミハエル・シューマッハーが1996年シーズンにフェラーリに加入した時としか比較できない。当時、彼は最大のライバルとみなされていたため、すべてのファンが彼を支持していたわけではないのは事実だ。しかし彼のスクーデリアに対する献身と愛情から、すぐに彼は生涯フェラーリファミリーの一員となった。それは彼が最初の引退後にメルセデスからF1復帰したときでさえそうだった。

 長年の経験を持つイタリア人ジャーナリストである私の友人の言葉によれば、「ファンはシャルル・ルクレールの存在すら忘れているようだ」とのことだ。そしてもちろん、マラネロにタイトルを持ち帰ることができるチャンピオンを夢見ている、情熱的なティフォシたちの注目がハミルトンに集中しているのは当然のことだ。
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 やがてルクレールは、ふたたび彼らの心の一部となるだろうが、新しさは否定できないものだ。私自身も、画像を見て少し感動してしまった。まるである種のSF映画を見ているかのような気分にならずにはいられない。赤いハミルトンを見ると、まるで別の現実のように感じられるのだ。

 ハミルトンはの最初のテストはフィオラノでのプライベートテストでこれは主にシェイクダウンであり、走行距離は約100kmだった。しかし、2回目はバルセロナ・カタロニア・サーキットで、2023年型のマシンを使用していたとはいえ、すでに本格的なテストとなっていた。
(c)Ferrari

 うれしいことに、私はハミルトンのドライビングを見ることができた!もちろんテストは非公開で行われるため、コースを見るためには、遠くで小さなマシンが走り回っているのが見える、比較的近くの丘を見つけなければならなかった……。

 私が見ることができなかったのは、ハミルトンがフェラーリのドライバーとして初めてクラッシュした場面だ。それは1月29日水曜日の午前中に起こった。

 面白いことに、ルイスが新チームでの最初のシーズンをクラッシュでスタートするのは、今回が初めてではない。彼は2007年にバレンシアで行われたマクラーレンでの最初のテストでクラッシュしたし、最初のチームから移籍後に、初めてメルセデスでドライブしたヘレスでもまたクラッシュした。どちらの場合も、彼は新しいチームでの最初のシーズンでタイトルを獲得することはなかったが、これまでのところ、新チームでの2年目には常に世界チャンピオンになっている。2026年はどうなるのだろうか?

 2月4日と5日には、同じバルセロナでピレリの2026年用タイヤテストが行われており、ハミルトンはフェラーリF1マシンへの適応を進めている。

 しかし、今のところハミルトンはフェラーリのドライバーとしての初めての年において、厳しい状況に直面している。それはスクーデリアのレーシングドライバーとして7年目を迎え、すでに実力を示しているシャルル・ルクレールというチーム内のライバルがいるだけでなく、チーム外にもライバルはいるのだ。

 レッドブルは現世界チャンピオンのマックス・フェルスタッペンと、新たに加入した意欲的なリアム・ローソンを擁し、一方マクラーレンはランド・ノリスとオスカー・ピアストリのどちらかによってドライバーズタイトル獲得を目指すことになる。

 そういう意味ではメルセデスは未知数かもしれないが、ジョージ・ラッセルは確実にパフォーマンスを発揮するだろう。そして、アンドレア・キミ・アントネッリも、F1に慣れるのに十分な時間を与えられれば、同様に活躍するだろうと私は考えている。

 ちなみに、昨年に私はアントネッリ家と比較的近い人物と話す機会があったのだが、その人物は私に、彼の目標はメルセデスでデビューし、優れた成績を残し、その後フェラーリに移籍することだと語った。その言葉はこしゃくな笑顔とともに出てきた。

 あなたもそれは単なる冗談だと思うかもしれない。しかしご存知のとおり、どんなジョークにも多少の真実が含まれているし、彼がイタリア人ドライバーであることを考えると、最終的にフェラーリでドライブすることの魅力は、非常に大きいに違いない。誰にもわからないことだ。

 しかし当面は、カーナンバー44のフェラーリに注目が集まるだろう。オリバー・ベアマンが2024年のサウジアラビアGPに出場したことを考えると、このマシンにイギリス人ドライバーが乗るのは昨年以来のことになる。しかしそうでなければ、ハミルトンは1999年のエディ・アーバイン以来のイギリス人ドライバーになっていただろう。

 アーバインは、その年にもう少しで世界チャンピオンになるところだった。しかしそのわずか数年前には、“イングランドの獅子”ナイジェル・マンセルが、フェラーリでの2年間の激動の時期に、何度かの伝説的な勝利と多くの興奮でティフォシに夢を見せた。

 過去を振り返ると、フェラーリで世界チャンピオンになったイギリス人ドライバーは、1958年のマイク・ホーソンと、1964年のジョン・サーティースのふたりだけだ。どちらの場合も、非常に激しい競争が繰り広げられたシーズンで、わずかな差でタイトルが決まった。

 ハミルトンは、イタリアのチームで勝利を飾った同胞たちの後を追うことで歴史を作りたいと考えているだろうが、同時に、記録となる8度目の世界選手権タイトル獲得にも挑戦したいと思っているだろう。しかし、そこに到達するまでにやるべきことは数多くあると私は思う。

 しかし、ひとつはっきりしていることがある。何が起ころうとも、ルイス、ハンマータイムだ。

(c)Ferrari

(Alex Garcia/Translation: AKARAG)

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