大接戦から劇的な幕切れを演出したベッテルとアロンソの激闘は今期ももちろん注目の的…だけれども他にもこんなバトル=見どころがいっぱい。F速が選ぶマジメでちょっとオモシロ対決

battle01:移籍組。女神はどちらに微笑む

投票:セルジオ・ペレス vs ルイス・ハミルトン
ポイントで勝つのはどっち?
==移籍==
・セルジオ・ペレス(ザウバー ⇒ マクラーレン)
・ルイス・ハミルトン(マクラーレン→メルセデス)

 ルイス・ハミルトンのメルセデスAMG加入、それは久々の大型移籍だった。
 と同時に、彼の後任としてマクラーレンに抜擢されたのはセルジオ・ペレス。この2名への注目度は高い。
 両者ともヘレスではまず、勝手の違うマシンや走行手順、用語に慣れる作業に集中し、特筆するタイムもなく初テストを終えた。だが、ともに余裕のある表情が印象的だった。

 勝てるかどうか怪しいメルセデスへの移籍について、特に英メディアを中心に批判的な見方が多勢を占める。だがハミルトンは「他人がとやかく言うことじゃない」と一蹴。事実、本人はメルセデスをトップに押し上げるという自分に課せられた挑戦を強く意識し、使命感に燃えている。マクラーレンでの経験を最大限に活かすべくやる気に満ちている。
「自分の技術と経験のすべてを、このクルマ(W04)を速くするために注ぐつもりだ」
 無駄に多いステアリングボタンもどんどん削っていっているというから、すでにチームを自己流に染めつつある。一流ドライバーに必要とされる、けん引役としての存在感を示そうとしているのだ。

 一方のペレスは、トップチームの流儀に戸惑いを見せながらも、「マシンの良さは明らかだし、スムースなすべり出しだ。予想よりもハッピーな気分」と笑顔をこぼす。
 だが、メディアに対する露骨なまでのアピールをはじめ、多少スタンドプレー的な点が気にかからないでもない。
 両者とも新たな成長を求められる今季。先に結果を出すのは環境面で恵まれているペレスかもしれないが、ハミルトンはもっと先にある成長した自身とチームの姿を思い描いているように見える。果たして、最後に笑うのはどちらなのだろうか。

battle02:反省してます!安全第一を誓うふたり

投票:ロメイン・グロージャン vs パストール・マルドナド
結果を出すのはどっち?
“クラッシャー”という不名誉なレッテルを貼られた両名は、今季どのようにク“更生”するのだろうか。
 ふたりとも「昨年の教訓を活かしたい。安定感が必要」と語るが、どこまで本気で意識しているのか。というよりも、ステアリングを握ると歯止めが利かなくなることは昨年から言われてきた。  意識の外にある問題なのかもしれない。だが今季、これまで以上にプレッシャーはかかる。
 グロージャンはもう一度事故を起こせばスーパーライセンス剥奪もあるとされ、契約更新が12月末まで遅れたこともあって、かなりの危機感を抱く。日本GP以降コンサバなレースを強いられたが、今季もそれを続けざるを得ないことは本人も認めている。
 危険度ではグロージャンのほうが圧倒的に上だ。
「僕が安定したレースができるかどうか、誰もが関心を持っていると思う。でも昨年多くを学んだ。成長したことを証明するためにあらゆる手を尽くすよ」

 一方のマルドナドは、バルテリ・ボッタスという実力あるチームメイトがプレッシャーとしてのしかかる。
 ウイリアムズは2台を同一条件で走らせ、マルドナドにも“成長”を期待すると明言した。そんな背景もあってか、新車での初走行となったバルセロナの初日は「クルマは完全に新しいから、今日はまだプッシュはしていない」と先輩らしさを見せた。
 もしかすると、ヘレスを旧車でテストしたことで、慎重な走行の重要性を再認識したのかもしれない。

 彼らの速さは両チームも認めている。それを踏まえ、今季求められるのが結果だ。もし彼らが昨年と同じことを繰り返すようであれば、両者に次のチャンスはない。そのことは本人たちも良く分かっているはずだ。

battle03:重すぎる責務を担うNo.2

投票:マーク・ウェーバー vs フェリペ・マッサ
結果を出すのはどっち?
 世間から最強のセカンドドライバーとみられることは、彼らにとって受け容れがたいことだろう。実質的に何年もそのポジションに居座り続けている彼らだが、返り咲きに野心を燃やしている点でも一致している。
 ウェーバーが新レースエンジニアを迎える今季、奮起の年になる可能性もある。ヘレスの初日こそマシンバランスが思わしくなく不機嫌さを露わにしたが、翌日には「セブに良いマシンを用意できた」と冗談を言うほど上機嫌だった。
 ベッテルにつまずきがあれば、逆襲のチャンスは十分にありそうだ。

 一方のマッサは4日間の最速タイムを記録したものの、スピンを喫してマシンを壊し、プログラムを完遂できなかったこともあって表情は暗く曇っていた。スランプを脱した昨年後半はアロンソを上回ることもあっただけに、もしその再現が続けばチームでの立場も変わり得るのだが……。
 ともかく、マシンを壊してしまうといった、肝心な場面でのミスは絶対に避けなければならない。
 ともに単年契約で来季以降の保証がない身分だけに、内に秘める野心をしっかりと結果に結びつけたいところだ。

battle04:結果が欲しいニコ・ニコ対決

投票:ニコ・ロズベルグ vs ニコ・ヒュルケンベルグ
結果を出すのはどっち?
 F1界にはニコがふたり。どっちも地味めで、決してメディアウケの良いキャラではないのだが、質実剛健で実力は折り紙付きだ。
 ロズベルグは早くも、新加入ハミルトンの影に隠れてしまった印象さえある。
 改革を推進するハミルトンへの期待は高く、メルセデスとはいえ、実体は英国人主体であることも影響している。だが本人は意に介す様子はなく、「変化は歓迎。新鮮な雰囲気が生まれる」と語るが、この新風を自身の追い風にできるか?
 ヒュルケンベルグはテスト初日を任されるなどエース格扱いで、同じドイツ語圏のザウバーチームにすんなりと馴染んだ。現場責任者のトム・マクカラフは、ウイリアムズ在籍時に担当エンジニアだったので気心も知れている。まるで新天地からの再出発とは思えない、落ち着いた様子で淡々とテストを進めていた。
 ヒュルケンベルグが一歩リードといったところだが、メルセデスのポテンシャルが上がれば、ロズベルグの粘りある走りとの相乗効果で上位浮上も可能だろう。

battle05:総勢5名 新人さんいらっしゃい

投票:総勢5名 結果を出すのは誰だ?  別格なのはボッタスだ。GP3王者でありウイリアムズで経験を積んだ彼は、群を抜くF1走行経験があり、ルーキーとは思えない落ち着いた物腰だ。チームも「走りもフィードバックも素晴らしいし、新人だとは思っていない」と言う。関係者からの評判もすこぶる高い。
 他の4人は全員が、昨年のGP2の上位ランカー。グティエレスはランク3位だったが、その外見に反して鋭い追い抜きを見せるなどレース強さがある。素直で謙虚な性格と合わせて、ザウバーでうまく成長していけそうだ。
 ランク4位のチルトンは資金力が話題だが、シーズン後半戦に安定したレースをして、質疑応答の受け答えもしっかりしている。単なる金持ちの道楽ではなさそうだ。
 チーム力を考えれば、初年度から結果が残せそうなのはボッタスかグティエレスに限られるだろう。いずれも自分がやるべきことをしっかり認識しているだけに、今季注目に値する活躍を見せる可能性は十分に考えられる。

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