2014.10.06

【決勝日レポート】
【レースの焦点】事故は回避できなかったのか−−


ウェットレースとなった今年の鈴鹿を走るビアンキ
(c)xpb
 台風の影響を心配した昼下がりから、果てしない時間が流れたように感じた。夜のパドックでは撤収作業が進められ、ピットロードにはロシアGPに旅立つ機材のケースが並んでいる。

 集まったファンの祈りが通じて、セーフティカー先導ながらレースは15時にスタート。強まる雨足にいったんは赤旗が提示されたものの、15時25分には再度セーフティカー先導で再開――9周終了時点で“本物の"スタートが実現してからは、多彩なオーバーテイクが灰色の空に包まれたサーキットを華やかにした。困難なコンディションで際立つドライバーのテクニックは、最後の赤旗が提示された16時56分まで、見る者を魅了した。

 しかし表彰台に笑顔が溢れることはなかった。ファンの祝福に応えようと努めながらも、ジュール・ビアンキの容体を案じる3人のドライバーの表情は固く、シャンパンが振り撒かれることもなかった。セレモニーの後、いつもより長い時間を置いて記者会見場に姿を現した3人からは、表彰台で見せたかすかな柔らかさも消えていた――こんな状況でさえ、会見できちんと話す彼らはプロだ。でも、自分が話している瞬間以外、一点を見つめて動かない視線の先に会見場の風景はなかったに違いない。ルイス・ハミルトン、ニコ・ロズベルグが自分たちのレースを最小限の言葉で説明する間、セバスチャン・ベッテルは祈るように両手の指を組んでいた。

「セーフティカーが入って来た時点で、僕らはエイドリアン(スーティル)がターン7でコースアウトしたことは認識していたと思う。でももちろん、その後に何が起こったかはわからなかった……。ここは大好きなコースだし、こんなトリッキーなコンディションで表彰台に上がれたのは素敵だ。でも最終的には、それが大事なことだとは思えない。一番大切なのは、たぶん僕ら全員が同じだと思うけど、ジュールの容体だ……すぐにでも、何かいい報告が聞けることを僕らは祈っている」

 会見を終えたベッテルはTV各局が待つ場所には向かわず「チャーリー(ホワイティング競技長)に会いたい」と、ピットビル内の道筋を訊ねて足早に去っていった。

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