2014.07.24

【今宮純のアフターザレース】
ドイツGP:ウイリアムズが“セカンドベスト”の存在に


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 名門ウイリアムズ完全復活――14年前半期ビッグニュースのトップにあげたい。ベテランF1ファンの方は苦節×年、ジッと耐えながら見てきただけに(?)、痛快な気分ではないか。ドイツGPでフェラーリを抜き遂に3位ランクアップ。レッドブルを3戦連続で破り、いまや“セカンドベスト”の存在だ。

 専属介護士さんとともに車椅子で日曜夕方パドックをあとにするサー・フランク・ウイリアムズさん。そのお姿を拝見していて、今年ランクアップするごとに元気になっていくようにお見受けする。「若返る車椅子の闘将」、個人的にはそれがうれしい・・。

 昨年ランキング9位まで転落。開幕から未入賞レースが続き第10戦ハンガリーGPでマルドナルド10位・1点、第18戦アメリカGPでボッタス8位・4点。この合計5点のみで下には新興マルシアとケータハムがいるだけ。名門の名を汚すようなレースにフランクさんはいつも苦い表情のままサーキットを後にしていた。

「ボスが現場に来るともうそこに居るだけでみんな緊張するんですね」。07年から09年までウイリアムズにエンジン供給したトヨタ関係者は、“車椅子の闘将”の存在感にあらためて驚いたと言う。

 F1参戦当初の70年代は多くの英国チーム同様フォード・コスワースだったが、80年代に日本のホンダと組んでからウイリアムズ・チームはフランスのルノー、ドイツのBMW、日本のトヨタと次々にエンジン供給契約を結んでいった。
 今年、メルセデスは歴代5番目のメーカーとのジョイント関係になる。日・仏・独を代表する大企業メーカーと複数年単位で組んできたコンストラクターはウイリアムズだけと言ってもいい。

 F1に進出する以前にウイリアムズさんはレース活動資金が底をつき、サーキットで使用ガソリン代が払えず腕時計を借金返済にあてた、というエピソードがある。“超ビンボー時代”にシビアな金銭感覚を経験しながらグランプリ舞台に這い上がってきたウイリアムズ。チーム運営方針は一方の英国名門マクラーレンとは違い“質実剛健”そのものだ。

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 それは今パドックにある両チームのモーターホームを眺めても分かる(デザイナーズマンション風のマクラーレンと、プレハブ住宅みたいなウイリアムズ・・・)。3階建てマクラーレンの正面入り口は敷居が高く、ウイリアムズにはバリアフリーのスロープが左右にちゃんとある。これを見るたび両名門マクラーレンとウイリアムズのボスの“価値観”の違いを感じる。

 同じメーカー・エンジン(パワーユニット)でこの2チームが競うのはこの14年が初めてだ。昨年、マクラーレンは2年後を見据えた15年からのホンダ体制を発表、ウイリアムズは直近の14年からのメルセデス体制を決めた。最後のマクラーレン・メルセデス対最初のウイリアムズ・メルセデス、直接対決構図が今シーズン出来あがった。95年から20シーズンをこのメーカーととともに戦ってきた名門はしかし、組んで間もない初シーズンの名門に現在96点対121点で押しまくられている。

――ウイリアムズの逆襲である。その矛先はフェラーリやレッドブルというよりむしろ、再び15年から日本のメーカーと組むマクラーレンに向けられている。87年にダブルタイトル制覇しながら、翌年マクラーレンに最強エンジンをとられた苦い思いがフランクさんの胸のなかに刻みこまれている。

 いつも青色のセーター姿で鋭い眼光を放つボスのもと、世代交代した若いスタッフたちとボッタスが名門の“質実剛健”チームカラーを受け継ぐ。11年前、03年にウイリアムズ・BMWはコンストラクターズ・タイトルをフェラーリと争う2位、後半戦にそこまでいけるか。若返った闘将率いる名門の復活をホッケンハイムに見た。

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