2014.07.11

【今宮純のアフターザレース】
イギリスGP:名勝負選に加えたい「第50回記念」レース


(c)LAT

 おもしろくなければシルバーストーンじゃない――。イギリスGP名勝負選に加えたい「第50回記念」レースだった。ハミルトン大逆転で6年ぶり母国2勝目、ロズベルグが失速リタイアした瞬間に沸き上がった大歓声は放送席にも伝わった。“静かな14年パワーユニット(PU)”だからこそだ。エキゾーストをかき消すようなエキサイトシーンが、今年は増えている。

 新レギュレーションの功罪、ネガティブなとらえ方や批判が開幕当初から騒がれた。まさにエキゾースト・ノイズ(雑音)で、それは有料入場者ファンからではなくVIP関係者周辺から政治的に流れてきたもの。シルバーストーンに詰めかけた観客の様子を見てまわっても、例年と同じように皆さんF1をエンジョイしていた。

 見どころいっぱい見せ場たっぷりだった第9戦イギリスGPを“演出”したのは「14年新ルール」だ。

1、予選Q3に1セット追加タイヤ供給となったから、濡れ乾きコンディションの最後にロズベルグ逆転PPアタックが見られた。

2、アロンソ対ベッテルの本物のサイドバイサイド接近戦が続けられたのは、ダウンフォース25%削減によって後方乱流が減り、前後・左右の車間距離ぎりぎりバトルがよみがえった。

3、そのアロンソに“グリッド位置違反”ペナルティが下されたが、罰則の軽減方針によって「ピットストップ+5秒ルール」で下位まで脱落せずに済み、それがベッテルとのバトルにつながっていった。

4、硬めの新ピレリにモデルチェンジされ昨年多発したバーストは皆無、ライフ(摩耗)なども改善されリカルドが驚異の1回ストップ、37周をミディアムでカバーして3位入賞へ。

5、さらに言うとピットストップが昨年55回から24回に半減、ファンにとっては順位展開がシンプルで“レースの筋”が分かりやすくなった。

(c)xpb

 このように新規定の「ポジティブ効果」がいくつも見られたイギリスGPだが、スタート直後に起きたライコネン事故は危機一髪のアクシデントだった。
 5コーナーでアウトにはらんだ彼がそのままコースに戻ろうとしたのは責められるものではない。フリー走行ならば徐行して合流しただろがレースなのだから、誰だって“一時停止”したくはない。

 5コーナーの先はウェリントン・ストレート、直線区間なのであのクラッシュ地点にタイヤバリアなどが無かったのはコース施設の不備とは言えないだろう。
 損傷した3段ガードレールの補修に約50分かかったが作業員スタッフは懸命に急いでいた。某チャンピオンOBの方が「タイヤバリアでも置いてすぐに再開すべき」、とおっしゃったようだがこれは理解しかねる。コース修復は競技再開の必須条件、あの場にあとからただタイヤバリアを置いただけでは安全対策効果は期待できない。本来しっかりと連結固定されているものなのだから。

 1周目に赤旗中断となったのは99年イギリスGPまでさかのぼる。グリッド上で混乱があった直後、シューマッハがストウ・コーナーでクラッシュし重傷事故に見舞われた。
 00年モナコGPが1周目赤旗になったのは競技運営上のミスで、今回のケースは15年ぶりの事態。幸い重傷を負うドライバーもマーシャルも関係者も出ず、ライコネンも次戦ドイツGPには参加できるとのことだ。

 伝統の一戦、危機一髪・・・。多重事故になりかねない場面を切り抜けた、小林可夢偉君の回避プレーがイギリスGPを救ったと言いたい。

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