2014.06.26

【今宮純のアフターザレース】
3メーカーのパワーバランスにさらなる異変!?


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 超満員レッドブルリンクでメルセデス勢が1−2−3−4−6−7−9、供給4チーム8台のうちバトン以外7台入賞は衝撃の結果だ。フェラーリ勢はアロンソ5位とライコネン10位、ルノー勢はリカルドが8位という今年最悪の事態に。
 トップ10入賞は“7対2対1”、中盤戦突入のオーストリアGPにおいて3メーカーの「パワーバランス」にさらなる異変が起きた。

 最近では12年バーレーンGPでルノー勢レッドブルとロータスが“1−2−3−4フィニッシュ”を決めている。新生メルセデスとしては初めての1−2−3−4で(55年イギリスGP以来)、しかもPU供給3ユーザーチームすべて入賞圏に押し込んだ。メルセデスPU106Aハイブリッドのこのコースに対する優位性は予想されていたとはいえ、7台入賞だけでなく完走率100%の信頼性がその高い“クオリティースタンダード”を証明する。

 ワークスとユーザーの供給関係はシーズンが進むにつれ“強化”された。開幕当初はメルセデス本家のみが用いていたPUシステム・ソフトウェアを、まず出足好調だったフォースインディアから順次あてがっていった。
 名門マクラーレン、ウイリアムズではない彼らがそれを得られたのは“政治力”ではなく、連続入賞結果による。フォースインディアは第3戦でコンストラクター2位に浮上、するとメルセデス陣営は名門2チームにも“最新PUバージョン・アップデート”を分け与える動きをとった。
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 最初からこの両名門に出さず新興フォースインディアからとしたのは、ビッグ2チームの底力を警戒していたからなのだろう。だが彼らに本家を脅かすほどのチーム力はないと判断すると、来年から日本メーカーにスイッチするマクラーレンにも、今年から陣営に加わったばかりのウイリアムズにも供給する動きをとっていった。

 彼らユーザーチームがそれによって上昇すれば、レッドブル・ルノーとフェラーリの壁になる。5年目新生メルセデスは悲願のコンストラク
 ターズ制覇に向け、ライバル2メーカー包囲網として3チームを使い強固に構築した・・・。

 表には見えないPUシステムの“ソフトウェア・アップデート”が最前線で行われてきた。目に見えるエアロパーツのビジュアル的“アウター・アップデート”から、今年は内臓部PUにかかわる“インナー・アップデート”競争へ。

 「空力からPU」に転換したこの現実を、敏感に察知したのがレッドブルのニューウェイだ。カナダGP開催中の土曜に事実上「F1から身を遠ざける」という発表がなされた。

 エアロ・レボリューションではなく、PUレボリューションがレースを左右する14年シーズンの新たな潮流・・・空力の鬼才ニューウェイも流れには逆らえないということか。

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――8戦で300点突破、首位メルセデスは2位レッドブル・ルノーを158点、3位フェラーリを203点リード。そしてその背後にはフォースインディア+ウイリアムズ+マクラーレンが固まっている。
 ワークス銀の矢とユーザー“包囲網”の矢が飛び交った中盤戦オーストリアGP、フェラーリもレッドブル・ルノーも射抜かれた。

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