2014.06.12

【今宮純のアフターザレース】
カナダGP:サバイバル・レースを勝ち取ったリカルド


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 101人目ベッテル、102人目ウェバー、そして105人目「GPウイナー」にリカルド。レッドブル7戦目の彼がメルセデス開幕7連勝を止めたカナダGP、完走14台、チェッカーを受けたのは11台という“サバイバル・レース”を勝ちとった。

 完走率50%、グッドラックとハードラックが交錯したゲームでスリリングな瞬間が次々に起きた。このスポーツに潜む“魔力”、いや“魅力”というべきだろうか。

 特殊なコース・レイアウトのここはオープニングラップ400mがとてもリスキーだ。スタートからゆるく曲がったままきつい1〜2コーナーに飛び込み、その先3〜4コーナーはブラインド気味のシケイン。他のGPサーキット(近代ティルケ・タイプ)にはありえない。2時03分、PPロズベルグのスタート失敗から70周レースは始まった。ひどいホイールスピン、隣のハミルトンを意識したからだ。二人は並走状態のまま1コーナーへ、他のコースならば加速力でロズベルグは彼にやられただろう。

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 しかし左〜右と切りかえすポイントでハミルトンは接触寸前に身を引いた。引いた瞬間にベッテルが隙を突いた。ハミルトンは3位に落ち、ナイス・スタートは成功どころか2コーナーをまわった時には失敗となった。すると後方のチルトンが3コーナーでスピンしながらビアンキに追突接触、ここにタイヤバリアはない。当然セーフティカー出動、昨年マシン撤去作業中にコースマーシャルが亡くなっている。慌てず作業せよの指示が今年再確認された。
 非競技走行が7周も続き(レース距離の10%)、これはトップのロズベルグにとってラッキー。モナコGPでも序盤のマシンが重い段階で燃費がシビアで、その傾向が再びあった。

 18周目、ロズベルグが先にピットへ。静止タイム3秒1で戻ると4コーナーでスライド、危機一髪の瞬間をこらえる。19周目、ハミルトンは3秒6、順位は変わらない。そこから自己ベスト連発、追い詰めていくと24周目最終シケインで仕掛けた。再び並走、このピンチをロズベルグは“シケイン不通過”で逃れた。明らかな「コース外走行」プレーだがノーペナルティー……。

 その10周後あたりからハミルトンに変化が出ていた。DRS圏内から外れ2秒以上遅れた彼が「パワーダウン症状」を訴えると、ほぼ同時にロズベルグもそうなった。MGU・K機能低下、回生パワーダウン、ブレーキ・バイ・ワイヤー変調、減速不安定。ピットサイドは懸命にトラブル対応を指示、二人も持てるテクニックをすべて使う。

 44周目、ロズベルグはピットで左前輪がもたつき4秒5停止、45周目ハミルトンは2秒9、逆転だ。そのアウトラップ、奥のヘアピンで止まりきれずにロズベルグが前へ。だがハミルトンはくいさがり、この日3度目の“並走バトル”で最終シケインに。止まらない(!)、ブレーキを失い不通過のままスローダウン、万事休す。

 チームメイトバトルが決着したロズベルグの相手はここから“トラブル”との戦いに変わった。背後にリカルドが上昇してきたが防ぐ手立てはもうなく、2位18点を守り抜くことが自分のミッション。ファイナルラップはマッサとペレス大事故によりセーフティカーランに、これで数々の危機をポイントリーダーは乗り越えられた。

 3時50分、オーストラリアとオーストリア国歌が2年ぶりに流れた。故J・ブラバム、A・ジョーンズ、ウェーバーの後オーストラリアン4人目通算36勝、24歳リカルドが笑顔で荒れたゲームをしめくくった。

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