2021.07.28

【F速プレミアム】
ライコネン観察日記:スプリント予選で大きく順位をアップ。レース巧者ぶりは未だ健在


(c)XPB Images
 シルバーストンは、伝統的にワールドチャンピオンたちが強いサーキットだ。過去15年間のイギリスGPを振り返ってみると、マーク・ウェーバーを唯一の例外として、他の勝者は全員がチャンピオン経験者なのである。キミ・ライコネンも、1950年5月に最初のF1世界選手権レースが開催されたこの聖地で、勝利の美酒を味わったことがあるチャンピオンのひとりだ。

 実際、アイスマンのシルバーストンでの戦績は悪くない。フェラーリで王座に就いた2007年に勝っただけではなく、それまでの4年間はずっとポディウムに上がり(03年3位、04年2位、05年と06年は3位)、その後も2017年と18年に再び3位に入っている。しかし、アルファロメオでの上位入賞はさすがに難しく、2019年には8位でポイントを獲得したものの、2020年にシルバーストンで開かれたふたつのレースはいずれも無得点に終わった(17位と15位)。そして、今季の第10戦イギリスGP終了時点で、キミの獲得ポイントはいまだ1点にすぎない。
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 また、弱り目に祟り目と言うべきか、オーストリアのレース終盤、ライコネンが他でもない親友のセバスチャン・ベッテルと絡んでクラッシュしたことが、このところソーシャルメディア上でF1ファンの冷笑と嘲りの的になっている。ファンは残酷だ。近所のメガネ屋へ行ってはどうかという揶揄などは、まだ穏やかな方で、キミはもう歳を取りすぎていて、F1は無理だと言い切る者も少なくない。

 歳を取りすぎだって? いや、ちょっと待ってほしい。シルバーストンで初めて実施されたスプリント予選で、最も大きく順位を上げた二人のドライバーが誰だったか、ご存知だろうか。ひとりは、スプリントの1周目だけでポジションを6つも稼いだ39歳のフェルナンド・アロンソ。そして、もうひとりは予選17位からスタートしてスプリントを13位で終えた、41歳のキミ・マティアス・ライコネンだ。

 それでも、ひとつの問いは依然として残る。今季はキミにとって最後のグランプリシーズンになるのだろうか?

 イギリスGPの週末に先立ち、アルファロメオはザウバーとの契約を延長すると発表した。だが、グランプリ通算21勝のベテラン、ライコネンはこう語っている。「チームにとって、そしてこの業界にとっても、アルファロメオがF1にとどまるのは素晴らしいことだ。ただ、それによって僕の将来が左右されるわけではない」

 自身の今後についての質問に、彼はいつも同じ答えを返してきた。「エンジョイできている間は、レースを続けるつもりだ。モチベーションに関して、誰かに心配してもらう必要はない。モチベーションを維持できなくなったら、もうサーキットには来なくなるだけのことだから」

 アルファロメオのチームメイト、アントニオ・ジョビナッツィとの予選の勝敗を見ると、キミは3対7で負け越している。だが、両者ともに完走したレースでの順位の勝敗は、5対4でライコネンが上回る。また、ドライバーズ世界選手権では、同じ1ポイントで同点ながら、キミが僚友よりひとつ上の15位にランクされている。彼の方が11位に入った回数が多いからだ。

 シルバーストンの決勝でも、ライコネンはセルジオ・ペレスを相手に善戦したが、結局はレッドブル・ドライバーとの接触でスピンを喫し、大きく順位を落としてしまった。「セルジオの背後にとどまって、また11位でフィニッシュするよりは、10位を争って戦いたかった。とてもいいバトルをしていたのに、あそこで行き場を失ってしまった」。レーススチュワードは、純粋なレーシングアクシデントだったとの判定を下し、どちらにもペナルティは科さなかった。

 今回も失意のうちにレースを終えたキミは言う。「より一層の努力を続けるしかない。いつの日か、運が僕らの方に向いてくると信じている」。次の機会はハンガロリンクだ。

(Mathias Brunner/Translation:Kenji Mizugaki)

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