2015.10.26

F速分析:ロズベルグ、逆風だった2度のSC


 交換のタイミングは絶妙だったとはいえ、ハミルトンはこの戦略を活かし切ることができませんでした。それまで直前を走っていたロズベルグやダニール・クビアト(レッドブル)をアンダーカットすることができなかったのです。実は、ハミルトンと同じ周にタイヤ交換を行ったマシンが1台ありました。それが、フェラーリのセバスチャン・ベッテルです。ベッテルは17周目にピットインを行ったことで、それまで17秒以上あったトップとの差を、20周目には10秒まで縮めることに成功しています。タイヤ交換作業に若干のミスがあったにも関わらず……、ピットイン/ピットアウトの周回で攻めに攻めたのです。これでベッテルは、エンジン交換によるグリッド降格ペナルティで後方からのスタートだったのを帳消しにし、先頭争いに加わるチャンスを得たのです。

 各車がドライタイヤへの交換を終えた後、上位はダニエル・リカルド(レッドブル)、ロズベルグ、クビアト、ハミルトン、ベッテルの順でした。しかし22周目、ロズベルグがリカルドを交わして首位に、ハミルトンはクビアトを交わして3番手に浮上します。この時のコンディションは完全にドライで、レッドブルがメルセデスAMGに太刀打ちできる状況ではありませんでした。先頭に立ったロズベルグは快調に飛ばし、22周目には1.1秒だった2番手との差を、26周目までに一気10.6秒まで広げていました。この26周目にはハミルトンもリカルドを交わすのですが、ロズベルグとのペース差は1秒以上。ふたりの差はさらに開きつつあり、これはロズベルグの勝利確定か……と思われた27周目、コース上にストップしてしまったエリクソンのマシンを撤去するため、SCが出動。ロズベルグにしてみれば、せっかく築いたリードが、水の泡になってしまいました。このSCが無ければ、ロズベルグが逃げ切り勝ちを収め、ハミルトンのアメリカでの王座決定を阻止していた可能性が高いと思います。

 とはいえ、それもレース。逆にこのSCをうまく利用したのがベッテルです。それまで5番手を走っていたベッテルは、SCが入るのを見るや、すぐさまピットに入ってミディアムタイヤに交換。レースの最後まで走り切ることを選択します。ベッテルにとってさらに幸運だったのは、彼の後方を走っていたマシンも各車ピットインを行ったこと。ベッテルはポジションを失うことなくタイヤを交換することに成功します。一方、前を行く4台はピットインしないことを選択したため、古いタイヤを履いたままレース再開を迎えることになります。

 この時点で、レースはまだ残り20周以上。タイヤを交換しなかった面々が、そのタイヤのままレースを走り切るのはまず不可能です。事実、レッドブルの2台はセーフティカー解除後はペースが全く上がらず、ベッテルのみならず、フォース・インディアやトロロッソにもオーバーテイクされてしまいます。

 労せずして3番手のポジションを手にしたベッテルは、勝機すら見えるか……とも思われましたが、ここからのメルセデスAMG勢のペースは圧倒的で、37周目の時点でロズベルグとベッテルの差は9.6秒。クラッシュしたニコ・ヒュルケンベルグ(フォース・インディア)のマシンを撤去するためにバーチャルSC(VSC)が発動されると、ロズベルグがピットへ。ロズベルグはこのピットインで一時4番手に落ちますが、マックス・フェルスタッペン(トロロッソ)とベッテルを難なく交わして、タイヤを交換できなかったハミルトンに迫っていきます。

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